走破時計 1:33.0 前半800m 45.4 上がり3F 35.8
まずは馬場状態ですが良馬場でレコードタイムが出る高速馬場でした、 10Rの元町特別が3勝クラスのマイル戦で1:33.0が出ていました。 前日は標準的なタイムでしたがGⅠ開催日ということでいつも通り速くなっていました。 ただ先週よりは力のいる馬場だったはずでラップグラフで詳しく見ますが、今回のレースでは後半全く加速ラップを踏めていません。なのでレシステンシアに対してサリオスが見劣るということはないと思います。
上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回のレースラップ、赤は2019年阪神JF、緑は2019年NHKマイルCのレースラップです。
前半800mを45.4で入っています、これは先週のレシステンシアよりも0.1秒早い入りで当然ハイペースバランスになっています。このペースで先行したサリオスが押し切ってしまったのでサリオスの心肺機能の高さは間違いないものです。スタート抜群だったタイセイビジョンの豊騎手はハイペースを見越して中断の後ろまで下げました、結果的にこのポジション取りが一着二着の命運を分けたようで、今まで朝日杯をどうしても勝てない豊騎手の心理が、大事に行き過ぎた前半のポジション取りに現れてしまったのかなと思います。
先週の阪神JFに比べて後半全くペースが上がらず消耗戦のようなレースになっています、阪神JFではL3で下り坂を利用し0.8の加速をしていますが、今回は全く加速できずにただただ耐える持続力勝負になっています。このラップ推移から見ると先週よりもやや力のいる馬場だったのではないかと思います、L2でビアンフェとの差を詰めたサリオスとタイセイビジョン、外からタイセイビジョンに食らいついたタガノビューティーのL2は11.3ぐらいは出ていると思います。この地点は下り坂なので0.5の加速をしていますが、瞬発力が高いというよりはL3からの勢いを殺さずにスピードにつなげた感じでした。
馬場状態を加味して考えるとレシステンシアに対しサリオス、タイセイビジョンは見劣ることはないと思います。 ビアンフェもL1標識付近までは踏ん張っていたので1400mまでならばこの世代でもトップクラスの心肺機能と持続力を持っていると思います、このペースで逃げられるわけですから道中のスピードもとても高いものがあります、ビアンフェに関してはレシステンシアに対してマイル戦では見劣るが1400m以下ならば互角という評価です。
逃げたのはビアンフェ、外からメイショウチタン、トリプルエース、サリオスが先行体勢、スタートが良かったペールエールがやや下がり中段の前、その外にウイングレイテストとエグレム二、中断からジュンライトボルト、マイネルグリット、プリンスリターン、ラウダシオンが外からジワっと上がりました。スタートが良かったタイセイビジョンはハイペースを見越して中段の後ろまで下げその内にレッドベルジュールが居ました。やや離れてタガノビューティーが後方から、さらに離れてグランレイ、カリニートが最後方からでした。
ビアンフェは前走の京王杯2歳ステークスでややスローバランスに落としてタイセイビジョンにトップスピードの質で見劣ったので、その反省を生かしここではハイペースバランスで逃げの手に出ました、非常に良い判断だったと思います。先週レシステンシアのレースを見ていれば前が止まらない可能性に賭けるのはありですし、この馬の特性を考えればスローバランスに落として良いことは何もありませんから陣営がよく判断したと好評価です。
ペールエールはスタートがよく2番手あたりを取れる勢いでしたが前半のうちにズルズルと下げてしまい中段の前からになりました、おそらく過去に経験したことがないハイペースに戸惑い追走で一杯になってしまったのではないでしょうか。スタートを決めたのはサリオスとタイセイビジョンも一緒でしたが、サリオスが積極的に前のポジションを取ったのに対し、タイセイビジョンはハイペースバランスを見て中段の後ろまでポジションを下げました。 この辺りは豊騎手の心理状態がよく出ているのではないでしょうか、JRAのGⅠの内新設のホープフルステークスを除いてなかなか勝てないのがこの朝日杯ですから、最高のパートナーを得て今度こそという意気込みと、どうしても勝ちたいと言う思いがやや消極的なポジションを取らせた感じがします。もちろんペース認識の正確さに関しては右に出る者がいない豊騎手ですから、 ここまでのハイペースならば前が潰れると予想しても当然です、実際サリオス以外の先行勢は大敗しているのでこの判断は正しいのですが、なまじペース認識が良過ぎるために ポジションが後ろになってしまった感があります。
タガノビューティーが中段の後ろから3頭分ぐらい離れて追走していました、向こう正面で馬群に取り付いて3、4コーナー外からというのは、過去2戦と同じ展開でしたが、動き出しがやや早かったのかもしれません。
4コーナーから直線入り口です、ビアンフェが1馬身ほどリードを保って直線に入ってきます、トリプルエースとメイショウチタンがこの辺りで追走一杯になって、外からサリオスが2列目に上がりました。これにウイングレイテストが続きその外からラウダシオンもポジションをあげました。大外を回したタイセイビジョンの後ろから4コーナーまでに馬群に取り付いたタガノビューティーがスムースに上がってきます。
グランレイはこの時点でまだ後方にいて馬群の後ろ辺りで外に出す前の段階でした。ペールエールはこの辺りで追走一杯になり同じくレッドベルジュールも全く反応できずに流れ込むように直線に入ってきます。
直線L2標識付近です、内回りとの合流点にできるスペースをついたのがジュンライトボルトで、一杯になって下がってきたペールエールの内へ進路を取りました。ビアンフェがこの辺りまで先頭で踏ん張っていたので、この馬の距離適性は1400mがベストなのでしょう。タイセイビジョン、タガノビューティーが外からスムース、レッドベルジュールは前が壁になっているわけではありませんが全く伸びませんでした。
外から満を持して追い出したグランレイがタガノビューティーを捕らえてクビ差の3着に入りました。タガノビューティーとは追い出したタイミングが全く違うので、トップスピードの質と持続力に関してはタガノビューティーの方が上だと思いますが、グランレイの池添騎手が3着になるために最高のタイミングで追い出したことで今回はタガノビューティーを捕らえられたのだと思います。勝に行った和田騎手とと3着を狙いに行った池添騎手の違いがこの着順に出たのではないでしょうか。
では一頭ずつ見ていきます。
1着はサリオス、スタートよく出てハイペースバランスであることが分かっていながら3列目で先行したムーア騎手の強気な騎乗が光っていました。これまでの2戦では全てスローバランスで勝ち切っていたので心肺機能の高さは見せていませんでしたが、今回のレースでハイペースバランスを先行して押し切ったことで心肺機能の高さも証明しました。トップスピードの質と持続力の高さはサウジアラビアRCで見せているので、それに加えて心肺機能の高さも持っている上に先行できるので大敗する可能性がますます少なくなると思います。こういう馬は軸には最適です。 今回は4コーナーから直線入り口にかけて非常にスムースなコース取りができ、直線で進路変更をすることもなかったので瞬発力を問われる場面がありませんでした、直線で有利なコース取りをできるのは先行できるからで、中段よりも後ろからの競馬になれば当然馬群を捌くために進路変更を余儀なくされたり、前が壁になってからの再加速を問われたりするので、先行させてしまうことがこの馬の好走パターンであることは間違いないでしょう。
2着はタイセイビジョン、 上がり3Fはサリオスとほぼ同じタイムなので前半のポジション取りがそのまま着差になってしまいました。この辺りは豊騎手も人間なのだなと思える部分で、これだけの実績を上げている騎手でも今日だけは特別だったんだと思います。上にも書きましたがなまじペース認識が良すぎるためにハイペースバランスを瞬時に見極め中段まで下げる好判断は、今回に限っては裏目に出てしまいました。
タイセイビジョンについては予想の段階でも書きましたが、ビアンフェがハイペースバランスで行ってくれたことはこの馬にとってありがたい展開になったはずです、心肺機能と持続力の高さは過去3戦で十分見せていましたので、今日の2着に好走という結果は当然だと思います。 京王杯2歳ステークスでややスローバランスの中でもトップスピードの質と持続力の高さを見せているので、今日の騎乗で豊騎手がこの馬の特徴を完全に手の内に入れたはずですから、もしも継続騎乗になるのならば今後はペースに関係なく強気なポジション取りをしてくるのではないでしょうか。スローバランスでのトップスピードの質に関してはサリオスに劣る可能性があるので、スローバランスでサリオスと同じ位置からのスパートでは分が悪いかもしれません。
3着はグランレイ、終始後方からレースを進めて4コーナーでもまだ最後方付近を追走していました、4コーナー出口から直線入り口にかけてスムースに外に出し、先に仕掛けていたタガノビューティーを目標に差し込んできました。タガノビューティーを交わすということに関しては、最高のタイミングで追い出しましたが当然このタイミングでは一着を狙うことはできません。あえて3着狙いに行ったような騎乗でしたが、決して悪い騎乗ではないと思います。この馬の今の実力を考え勝ちに行って大敗するよりも、どうすれば好走できるかを考え着順は後からついてくると腹を括った良い騎乗だったのではないでしょうか。この馬は未勝利戦を勝ち上がったばかりの馬で、今日人気上位に押された馬達とは未対戦でした、2歳のこの時期なのでまだまだ底を見せていなかったり、武器を隠し持っていたりと未知数な馬が多いのですが、その中の1頭がこの馬でした。
4着がタガノビューティー、いつものようにスタートがあまり良くなく後方からになりましたが芝スタートが合っているのか、最後方ではなく中段の後ろから2、3馬身離れた位置を追走していました、向こう正面800m付近から徐々に進出を始め3、4コーナーでは馬群に取りつき4コーナーでは明確に勝ちに行く意思を示してタイセイビジョンに喰らい付くどころか、やや外から煽るような追い込みを見せました。結果的にこの勝ちに行く競馬がL1での垂に繋がりますが、一着を狙いにいく姿勢は悪くないと思います。お兄ちゃんのタガノブルグが芝でも好走しているし、今回の4着で芝適正を見せてきたので今後はダート芝とレースの選択肢が広がるのは良い事だと思います。 NHKマイルCで今回のようなハイペースバランスをバテ差す追い込みを期待したくなる、そんな4着でした。
5着がプリンスリターン、 中段あたりから進めて4コーナーでも中目を通し、直線でもタガノビューティーを目標にじりじりとバテ差してきました、持続力は高いものを見せましたがトップスピードの質ではグランレイにも見劣っているので、高い評価は禁物だと思います。 道中は中団やや後ろあたりを追走していましたが自身平均バランスぐらいでは入っているはずで、まあまあの心肺機能は見せたと思います。ハイペースバランスの函館二歳ステークスで3着に入っているので元々心肺機能は見せていましたが、ここで外からスムースだったとはいえ5着になったのは驚きでした。
ビアンフェは果敢にハイペースバランスで先行しましたが7着でした、L1標識付近まで踏ん張っていたので距離適正の問題だと思います。 人気のレッドベルジュール、ペールエールの2頭は初めて経験するハイペースバランスに戸惑ったようで、追走しただけでレースを諦めてしまったような負け方でした。まだまだ経験の浅い馬たちなので今後復活する可能性は十分ありますし、スローバランスからのトップスピードの質と持続力の高さは見せているので、展開さえ合えばこれからも好走できると思います。
馬券の方はグランレイを無印にしてしまい撃沈しました、2歳のレースなので未対戦の怖さを見せ付けられました。池添騎手の追い出しのタイミングが抜群でしたからね~、 直線L1標識付近では的中したと思いましたが、最後にクビ差だけ差されて唖然としてしまいました。来週は阪神Cもしっかりと当てて有馬記念に挑みたいと思います。