みやや競馬

2020年フェブラリーS 回顧。モズアスコット完全復活。

走破時計 1:35.2  前半800m 46.4  上り3F 36.5

含水率 ゴール前 2.6%  4コーナー 2.6%

まずは馬場状態ですが土曜の夕方に多少雨が降ったのですが、含水率は土曜日からさらに下がってパサパサの良馬場になりました。それでも走破時計1:35.2とかなり速いタイムが出たのは、前半からかなりのハイペースになったためです。 レースの上り3Fが36.5で1着モズアスコットの上り3Fが35.4ななので、かなり力の入る馬場になったことが伺えます。


上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青が今回、赤が2019年フェブラリーS、緑は2017年フェブラリーSのグラフです。

2020年  走破時計 1:35.2  前半800m 46.4  上り3F 36.5

2019年  走破時計 1:35.6  前半800m 48.0  上り3F 35.4

2017年     走破時計 1:35.1  前半800m 46.2  上り3F 36.1

今年のラップは超ハイペースバランスになっていて、これはワイドファラオとアルクトスが競り合うように叩き出したラップです、昨年のラップと大きく違っていることからもインティにはとても苦しいラップ推移になってしまいました。2017年のラップ推移が今年のラップ推移ととてもよく似ているように、2017年0.5秒差6着に入ったケイティブレイブが最低人気で2着に突っ込んできました。ケイティブレイブはトップスピードの質では勝負になりませんが、心肺機能と持続力の高さは見せていたので、展開がドハマリしたと言っていいでしょう。

後方から追い込んできたサンライズノヴァにも絶好の展開になったのですが、この展開で上り3F35.3までしか出ていないので、トップスピードの質がやや落ちてきたのかもしれません。4着のワンダーリーデルにもとても良い展開でしたが、初手の位置取りが中段の後ろになってしまい届きませんでした。

問題はこのハイペースバランスを演出したワイドファラオの福永騎手と、アルクトスの田辺騎手が12着と9着に沈んでいることです。単にインティを潰すためだけにレースをしたとは思いたくないので、他の要因を考えるとすると体内時計が不正確であるとしか思えません。この二人は逃げて素晴らしいレースをしたという記憶がないので、この二人が逃げ馬に乗っていてレースを作る時には今後も要注意だと思います。ワイドファラオについては福永騎手でユニコーンステークスを逃げ切っています、 この時は重馬場でハイペースバランス、前半800m45.8でした。今回はパサパサの良馬場にもかかわらずなぜかこれに近いペースで逃げたことになります、非常に不可解なペース配分でなぜ福永騎手にこれほど人気馬が集まるのか不思議で仕方ありません。

逃げたのはワイドファラオとアルクトスでした、タイムフライヤーが最内から、インティを挟んでミッキーワイルドが中段の前からになります。ブルドッグボス、ヴェンジェンスの後ろからモズアスコットが中段から進めました。中段のやや後ろからケイティブレイブ、デルマルーヴル、中段の後ろからワンダーリーデル、ノンコノユメ、サンライズノヴァ。後方からになったのがキングズガード、モジアナフレイバー、ミューチャリーという展開でした。

ワイドファラオとアルクトスが競り合うようにハイペースバランスで逃げていきました、当然インティの豊騎手はこれに付き合うわけにはいきません、一歩引いた中段の前からで内にタイムフライヤー、外にミッキーワイルドと言う揉まれる位置になってしまいました。ブルドッグボスとヴェンジェンスが中段のやや前から進め、 その後ろからモズアスコットが非常にスムースな位置、ケイティブレイブが中段やや後ろの最内でコースロスなく運び、そこからやや離れてワンダーリーデルが追走していました。サンライズノヴァはワンダーリーデルを見る中段の後ろかに位置しました。

昨年と比較して明らかに速いペースで序盤が進んでいったことで、インティの豊騎手は一歩下げて中段の前から進めるしかありませんでした、当然ワイドファラオとアルクトスのペースに付き合ってしまえば凡走してしまうのは分かりきっているので、この位置取りは仕方のないことだと思います。なぜここまで明確にハイペースバランスにするのか、おそらく豊騎手も疑問に思っているのではないでしょうか。特に今日の馬場はパサパサの良馬場で、9RのヒヤシンスSでも平均バランスで前がバテていましたから、それを見ていればこのようなハイペースにする理由は全くないはずです。これが騎手の能力差なのかなと改めて痛感しました。 

4コーナーから直線入り口です、アルクトスとワイドファラオが競り合うように直線に入ってきます、タイムフライヤーが2頭分外からスムースに直線に入り、インティはさらに外から入ってきます。最内を回したのがブルドッグボスでその直後にモズアスコットがいます、モズアスコットの前がぽっかりとスペースが出来ていることに注目してください。ヴェンジェンスはインティを追走して、ミッキーワイルドはこの辺りで足色が怪しくなります。

中段の後ろに居たケイティブレイブはワンダーリーデルと共にここから外に持ち出します、この時ワンダーリーデルの外にはほとんど馬がいなかったので、外へのスペースがぽっかりと空いていました。ケイティブレイブが2着に好走できた大きな理由がこの4コーナーから直線入り口の進路取りだと思います、ここまでスペースができることは稀なのですが、これもハイペースバランスで馬群をふるいにかけたアルクトスとワイドファラオのおかげです。

3着に入ったサンライズノヴァは外を回して直線に入ってきます、デルマルーヴル、ノンコノユメもスムースに4コーナーを回って直線に入れました。キングズガードは予想通り最内を回して直線に入ってきました。

直線L2標識付近です、アルクトスからワイドファラオがやや遅れました、このあたりが距離適性の差でアルクトスは1400mがベストなので、このハイペースでも1400mまでならば持ってしまう、ワイドファラオは1400mのペースでは心肺機能が持たずにこの辺りで苦しくなってしまったのだと思います。タイムフライヤーが意外な粘りを見せてワイドファラオに食らいつきます、このタイムフライヤーの粘りがモズアスコットに味方します。図のようにインティが下がっていったスペースがポッカリと空き、そこをモズアスコットがスムーズに抜けてきます。もしもタイムフライヤーがインティと共に下がってしまったら 、モズアスコットの進路は狭くなっていた可能性もあります。

直線入り口でスムースに外に出せたケイティブレイブとワンダーリーデルが外からじわじわと伸びてきます、この2頭はL2のトップスピードの質でモズアスコットには大きく見劣っています。もちろんサンライズノヴァもモズアスコットのトップスピードには見劣りましたが、ここから持続力を生かして伸びてきます。

 

直線L1標識付近です、すでにモズアスコットが先頭に立っています、 モズアスコットのL2のラップは目視手動計測ですが11.5くらいは出ています。根岸ステークスの時もトップスピードの質に驚かされましたが、ハイペースバランスでパサパサの良馬場にもかかわらず、L2で11.5のラップを踏めるモズアスコットのダート適性の高さには脱帽としか言いようがありません。

このL2部分でモズアスコットは勝負を決めてしまいました、ケイティブレイブとワンダーリーデルはこれを追いかけますがなかなか差が詰まりません、外からサンライズノヴァがスムーズに伸びてきてこの2頭を捕らえにかかります。 サンライズノヴァは展開が向いたはずですが、ここで2着に入れなかったところを見るとトップスピードの質がやや落ちてきたのかもしれません。ヴェンジェンスの凡走については左回りやハイペースバランスが原因とは思えないので、久々の輸送が原因なのではないかと思います。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はモズアスコットでした、序盤から中段を楽に追走する形になり揉まれなかったこと、直線入り口からL2標識までの間にスムースなコース取りができたことなど、レース内容はとても恵まれた勝ち方だったと思います。ただ直線L2部分で約11.5のラップを叩き出して勝負を決めてしまう、とてつもないトップスピードの質を見せたことは高く評価しなくてはいけないと思います。2018年の安田記念を勝って以降 イマイチなレースが続いていましたが、前走の根岸ステークスでダートに挑み圧勝して、GⅠフェブラリーSを連勝したのは単にダート適性が高かったからではなく、完全に復調したと考えた方が良いのではないかと思います。マイルへの延長を不安視しましたが、完全復調した現在ならば芝のマイル戦でも十分に勝負できるのではないかと思います。

2着はケイティブレイブ、最低人気で2着に激走しましたが、2017年のフェブラリーSで0.5差6着でしたから、その時と非常によく似たラップ推移で好走できました。 ハイペースバランスで心肺機能と持続力が問われたこと、4コーナーから直線入り口にかけて外に大きくスペースが空いたことが激走の要因ではないかと思います。

3着がサンライズノヴァ、今回は中段の後ろから進めました、ハイペースバランスになったのでこの判断は非常に良かったと思います。ただこの展開で2着に入れなかったことは印象が良くありません、トップスピードの質がやや落ちてきたのか、持続力がやや落ちてしまったのか、後方に居ながら前半のペースが速過ぎてしまったのかわかりませんが、 展開さえハマればこのクラスでも十分勝負になることを再度見せつけました。

4着がワンダーリーデル、大外枠から中段の後ろを追走し4コーナーから直線入り口でスムースに外に出せたことでバテ差してきました、元々キレッキレのトップスピードの質を持っているタイプではないので、展開は非常に向きましたし休み明け2走目で仕上がっていました。大外枠ではなく真ん中辺の枠だったらもう少し前のポジションを取って、さらに着順が良かったかもしれません。このクラスでも通用することが分かったのは今後に向けて大きな収穫です。

5着がタイムフライヤー、昨年の武蔵野ステークスのような展開になり、今度は先行して5着に粘り込みました。平均バランスではおそらくトップスピードの質で見劣ったはずなので、ハイペースバランスになったことはこの馬にとっては良かったと思います、しかし先行してしまったことで最後は力尽きてしまいました。武蔵野ステークスの時のように中段からのバテ差しに回っていたら、3着以内もあったのではないでしょうか。今回は休み明けだったことで完調ではなかった可能性もあり、今後もこのクラスで活躍できそうな兆しは見せました。 

2番人気のインチは14着でした、ワイドファラオとアルクトスのハイペースに潰された格好で、この2頭も暴走しているので納得のいかない負け方だったと思います。ヴェンジェンスは10着でした、東京競馬場には1度しか来たことがなく中山競馬場でもレースをしていないので、関東への輸送はこれで2度目です。このことが影響したのか中段から全く伸びませんでしたので、この馬に関しては輸送が不安要素として出てきます。

 

馬券の方は予想した展開が全く違うものになってしまい、さらに軽視したケイティブレイブに2着に入られてしまってはどうにもなりませんでした。