みやや競馬

2021年エリザベス女王杯 回顧。ハイペースでバテ差し組の台頭。

走破時計2:12.1    前半1000m59.0   上がり3F 36.5

まずは馬場状態ですが良馬場でした、散水はしていませんが意外に乾いていない感じで、含水率は土曜日とほぼ変わらず、クッション値もやや硬化しただけでした。8Rの2勝クラス2200mが2:14.7、スローからの3F戦でしたがL2が11.3でⅬ1は12.4迄落ちていました。エリザベス女王杯でもⅬ1は12.5迄落ちているので、パンパンの良馬場ではなく、重目の良馬場という感じでしょうね。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。青は今回、赤は2020年エリザベス女王杯のグラフです。

今回は前後半1000mで比べると59.0-60.8で、1.8秒のハイペースバランスでした。3着ステラリアの位置でほぼ平均バランス、1着のアカイイトの位置でギリギリややスローバランスくらいでした。なのでクラヴェルも含めて上位3頭は心肺機能では楽だったはずです。ステラリアはともかくアカイイトとクラヴェルはバテ差し型で展開待ちの馬なので、今回は展開が向いた感じですね。

コース取りとしては外を回してショート捲りを打ったアカイイトとステラリアが1,2着でした、アカイイトはⅬ3で外から上がってきたので、レースラップよりも速いはずですから、自身のL3ラップは11.8くらいです。Ⅼ1の12.5は自身のラップなのでやや落としていますが、既に勝負がついていましたし、今日の馬場状態では持続力の高さを評価できるラップだと思います。クラヴェルは4コーナーでロザムールが下がってきた時に待たされました、一瞬だったので大きな不利にはなりませんでしたが、クビ差の要因はここにありそう。

2020年エリザベス女王杯は平均バランスからのL2最速戦、これで外からスムースだった3頭で決着しました。今年はハイペースバランスでしたがグラフの形は同じような感じ。1,2着は外からスムースだった馬なので似たような展開になりましたね。この要因はもちろんロザムールとシャムロックヒルの逃げ争いがあったことと、ウインマリリンとレイパパレの人気2頭が先行馬だったことが大きかったと思います。2番人気のアカイトリノムスメもレイパパレをマークする形で、中段のやや前からだった上に掛かり気味で自滅してしまいました。

逃げたのはシャムロックヒル、2番手にロザムール、2馬身程離れた中段の前からウインマリリン、中段のやや前からレイパパレ、アカイトリノムスメ、リュヌルージュ。中段からイズジョーノキセキ、ステラリア、ウインキートス、ランブリングアレー、2馬身程離れてデゼル、テルツェット、中段の後ろからアカイイト、クラヴェル、後方からソフトフルート、ムジカ、コトブキテティスという並びでした。

スタートはシャムロックヒルが良かったですね、外からロザムールが押して押して逃げ争いに行きますが、結局ハナを主張したのはシャムロックヒルでした。この逃げ争いの結果2F目が10秒台に入るハイペースバランスになりました。前に行くかと思われたウインキートスはスタート五分、丹内騎手は内をしきりに確認していて、出して行くというよりは馬群の切れ目を探している感じでした。

向正面の1000m標識付近で、ウインマリリンが2,3馬身離れたメイン集団の先頭、その後ろにレイパパレとアカイトリノムスメがやや掛かり気味でした。ハイペースバランスになったので中段はバラけて、ステラリア、ランブリングアレー、ウインキートスが折り合っていました。内が荒れている馬場もあって一団にならず、横の並びでもバラけていました。デゼルが中段のやや後ろで2馬身程の間隔、更に間隔を空けてアカイイトがスムースでした。その内にクラヴェルですね。

4コーナーです、L3でシャムロックヒルとロザムールが怪しくなります、L3区間でロザムールが下がったことで、レイパパレが狭くなりバランスを崩すシーンがありましたね。ロザムールを捌くのに待たされたのはレイパパレだけでなく、クラヴェルも一瞬待たされていますし、クラヴェルが内に切れ込んだことでムジカは騎手が立ち上がっていました。昨年に引き続き内は待たされる状況が発生しましたね。

レイパパレの動きに追走したのがランブリングアレーで、ここから直線入り口でやや外へ動きました。アカイイトが外からで、L3からのショート捲りでⅬ2標識付近ではアカイトリノムスメの外まで上がっていました。アカイイトを追走したのがステラリアで、ステラリアはアカイイトが来てから併せようとしましたが、反応が遅れて前に出られてしまいました、この辺りがステラリアの瞬発力の低さですね。その内にウインキートスが居てこちらもスムースでした。デゼルはスムースでしたがL3区間から直線入り口にかけての反応が悪かったですね、L3では3頭分外からアカイイトにあっさり交わされていました。

直線L1標識付近です、レイパパレが抜け出しますがいつも通り残り100mで減速率が大きくなりました。ランブリングアレーが内からやや外に寄れ、アカイイトが外から内へ切れ込んだことで、間に居たアカイトリノムスメは狭くなり下がってしまいました。そこからアカイイトの後ろに入り外に出しましたが、伸びずに凡走しました。アカイイトがスムースに抜け出し、2馬身差でステラリアがゴール。L3区間で反応が遅れた分が最後まで詰まらなかったので、トップスピードの質は互角と見て良いと思います。

4コーナーで一瞬待たされたクラヴェルでしたが、直線に入ってからはスムースで3着まで届きました。ソフトフルートは競り落としましたが、外からステラリアにクビ差交わされたので、馬場はやはり外の方が良かったと思います。ランブリングアレーはⅬ1標識で失速、距離適性が出てしまった感じでした。デゼルは最後に差を詰めてきているので、この斤量だとトップスピードの質と瞬発力が大幅に下がる感じでした。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はアカイイト、バテ差しの展開が嵌った、その一言に尽きますが、L3から自分で動いた幸騎手の判断も良かったですね。今年好調なのでテン乗りでも陣営としっかりコミュニケーションが取れていたのでしょう。元々持続力は高い馬ですが、前走の府中牝馬Sで見せたようにトップスピードの質は高くない、なのでバテ差しの展開待ちは今後も続くでしょうね。

2着はステラリア、忘れな草賞を勝っているのでコース適性は良いですね、休み明け2走目で上積みもあったし、この馬もキズナ産駒で今日の馬場状態が合っていた感じ。母系にサドラーを持つパワー型のこの馬にはドンピシャでした。L3区間で外からアカイイトに来られてしまい、併せ切れなかったことがこの馬の瞬発力の低さを表していますね。先に自分から動いていれば着順は替わっていたかも。

3着はクラヴェル、枠が内枠だったのでわざわざ外に出すことはしませんよね。その分だけ4コーナーで一瞬待たされてましたが、直線では良く伸びました。馬場はハッキリ内よりも外だったと思うので、3着でも高評価で良いと思います。

4着はソフトフルート、初手は後方からで脚を溜めていたので、この馬も展開が嵌った感じですね。ディープ産駒ですがキレッキレのトップスピードの質を持ってるわけではなく、パワーと持続力で勝負するタイプですね。昨年のこのレースでは中段のやや前からで6着だったので、今回後ろから行ったのは好判断だったと思います。

5着はイズジョーノキセキ、4コーナーから直線入り口で、ウインマリリンが下がってきてブレーキしていました。ここから外に進路変更していたので、スムースなら3着の可能性がありましたね。条件馬でしたが今回は展開と馬場状態がマッチしたと思います。というのもこの馬はクラヴェルと同じ血統構成で、エピファネイアに母父キンカメでした。スムースならステラリアといい勝負をしていたと思うと、運がなかった感じですね。

レイパパレは6着、宝塚記念とオールカマーと全く同じように、残り100mで減速率が大きくなりましたから、距離適性として100m長かったですね。アカイトリノムスメは直線入り口で挟まれたのが痛かったと思いますが、ゲートでもやや煩かったし向正面ではやや掛かり気味、この辺りは短期間に2度の関西輸送の影響があったのでしょう。輸送の影響で凡走した可能性があるのがウインキートスで、こちらは初輸送の懸念が顕在化した感じでした。ウインマリリンは中間の調整失敗でしょう、最終追い切りでまぁまぁのタイムが出たので強行出走した感じですが、輸送もあったし走れる状態ではなかったと思います。

馬券の方はハズレ、”当たんないわ、こんなの!”100回予想してもこの馬券は買えないですね。ルメール騎手はハイペースに対してもう少し控える競馬かと思いましたが、流れに乗ってしまいましたね。遅過ぎるペースに対しては感受性が高いのですが、速い時に付き合ってしまう印象がありますね。これは戸崎騎手も一緒ですが。次回はマイルCSの予定です。