2021年オークス 回顧。厳しいペースで無理をしなかった馬に向いた。


走破時計2:24.5    前半1000m59.9     上り3F34.9

  

まずは馬場状態ですが良馬場でした、9Rの調布特別が2勝クラスの1800mで1:46.2なので、結構時計は速かったですね。土曜日に1㎜日曜日の0時頃に1㎜降ったことで、含水率は悪化していましたが、朝から晴れていたのでレース時間にはかなり乾いたはず、走破時計の2:24.5は標準的なタイムだと思います。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。青は今回、赤は2020年オークス、緑は2019年オークス、黒は2018年オークスのグラフです。

逃げたのは豊騎手で中緩みが大きくなかったですね、1200mで区切った前後半では72.5-72.0で平均バランスでした。中緩みが大きくなかったことで中段よりも前に居た組には心肺機能が問われました、もちろんこの流れでは距離適性も誤魔化せなかったはずです。標準的な良馬場だったことで平均バランスだと前半で消耗したはず、だからこそL2から減速戦になったのでしょうね。

厳しいラップ推移になったのは2018年、2019年でした。2018年はアーモンドアイが勝ちその後も絶対女王として君臨、3着はラッキーライラックで古馬になってGⅠを3勝しています。リリーノーブルは残念ながら早期に引退。2019年は1着がラヴズオンリユーで先日クイーンエリザベス2世Cを勝ちました、2着カレンブーケドールでGⅠ勝ちこそないものの(先頭に立ちたくない病なので)牡馬相手に好走多数、3着はクロノジェネシスで秋華賞、宝塚記念、有馬記念を勝っています。

逆に中緩みが大きかったのが2020年で、1着デアリングタクトは3冠を達成しましたが、ジャパンC3着はまだいいとして、金鯱賞を取りこぼしたのは印象が悪いです、更にクイーンエリザベス2世Cも3着とピリッとしません。2着ウインマリリンは日経賞こそ勝ちましたが53㎏で斤量に恵まれました、その証拠に次走の天皇賞(春)では同斤量になったカレンブーケドールに逆転されています。3着のウインマイティ―に至っては愛知杯14着ですからね。

今回は馬場状態を加味しても厳しいラップだったはずで、先行勢は総崩れ、中段よりも前に居て好走したのはアカイトリノムスメだけです。距離適性が合わなかったソダシは別ですが、秋以降中距離で結果を出しそうなのは、アカイトリノムスメではないでしょうか。

ユーバーレーベンは上り3Fが34.4でキレッキレのトップスピードの質は見せていません、と言うか持っていないと思います。この馬はパワーと持続力でバテ差しての1着でしたね、この展開になったのは豊騎手が厳しい展開に持ち込んだことが一点、もう一つは前半ゆったり入って中段の後ろまで下げたうえで、向正面で外に出したミルコの手腕ですね。

逃げたのはクールキャット、2番手にステラリア、内にククナが続きここまでが先行勢。中段の前からソダシ、ウインアグライア、ストライプ、中段やや前にアカイトリノムスメ、エンスージアズム、ニーナドレス。中段からスルーセブンシーズ、ファインルージュ、スライリー、中段やや後ろからアールドヴィーヴル、ユーバーレーベン。中段の後ろからパープルレディー、後方からタガノパッション、ミヤビハイディ、ハギノピリナという並びでした。

豊騎手は迷いがなかったですね、トップスピードの質が高くないことは分かっていたのでしょう、逃げの手に出て緩めませんでした。外からステラリアが掛かり気味に上がって2番手でした、内枠を引けていれば前に馬を置くことも考えたでしょうが、大外枠で控えると外を回されて距離ロスを受け入れないといけませんからね。前に行く作戦は悪くなかったが掛かってしまったことで、この作戦が狂ってしまいましたね、この辺りはテン乗りだったので川田騎手も意外だったのかもしれません。

ソダシが中段の前からで、これをマークしたのがアカイトリノムスメでした。ルメール騎手はソダシだけを見てレースをした感じでした。そしてアカイトリノムスメをマークしたのが福永騎手ですね、この辺りはトップジョッキーの心理が良く表れていました。ククナはスタート出たことで前へ、この騎乗には横山家の血統を感じましたね。

ユーバーレーベンはスタート五分に出て、内のハギノピリナとタガノパッションが下げ、ウインアグライア、クールキャット、アカイトリノムスメは前行ったことで、内が空いたんですね。1,2コーナーは内目を回して距離ロスなし、向正面では外に居たアールドヴィーヴルがポジションを上げたことで、外がポッカリ空きスムースに外に出せました。ハギノピリナは後方から、こちらも1,2コーナーでは内目を回して、向正面では外目に出していました。

4コーナーです、クールキャットが先頭で、その外のステラリアはこの時点で手応えが怪しくなっていました。L4で上がったのがストライプ、ニーナドレス、スライリーの3頭で、ここで動いたのはやや早かったのではないでしょうか。L4のレースラップは12.1ですから、この3頭は11秒台だったはずで、距離ロスも含めてかなり苦しいレースをしてしまいました。ユーバーレーベンはストライプ、ニーナドレス、スライリーから2,3馬身後ろからで、前の3頭が風除けになってくれました。ハギノピリナはユーバーレーベンから2馬身程後ろ、動き出しもユーバーレーベンよりも一呼吸おいてからでした。

内ではククナがスムース、ウインアグライアが続きました。ソダシ、アカイトリノムスメ、ファインルージュはスムースに追走、特に動きはなかったです。タガノパッションはユーバーレーベンとハギノパッションが動いても、ここではステイで直線までじっとしていました。

直線L2標識付近です、クールキャットが1馬身程のリードで先頭、ククナが抜け出して1馬身遅れてソダシ、アカイトリノムスメはここで待たされました、ソダシが思ったほど伸びなかった上に、内のステラリアが下がってきたので狭くなりましたね。ルメール騎手は直線入り口では外に出しかけましたが、前に居たのがストライプだったことで、内へ切り替えています。ストライプの方も下がってしまったので、結局ステラリアが下がるまで待たされてしまいました。ユーバーレーベン、ハギノピリナは外からスムースでした。タガノパッションはスムースでしたが、まっすぐ走れていない分だけロスがあった気がします。

直線Ⅼ1標識付近です、抜け出したククナをユーバーレーベンが捉え、外からハギノピリナが続きます。タガノパッションはフラフラしながら伸びてきて、その内に居たのがアカイトリノムスメでした。アカイトリノムスメはここからタガノパッションを引き離して2着なので、持続力で上回った感じですね。ソダシとククナはL1ではっきり見劣り、これが距離適性なのでしょう。アールドヴィーヴルはL1でハギノピリナに引き離され、タガノパッションに差されているので、持続力で見劣った感じでした。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はユーバーレーベン、勝つ時は全てが上手く行きますね。逃げ馬不在でスローバランスが予想されましたが、スタート後に速いと見るやすかさず下げてインコースへ、内の各馬が前と後ろに分かれたことでスペースが出来ました。加えて向正面でも外のスペースが空きスムースに馬群の外へ、直線もスムースにバテ差しの展開になりましたね。展開的には豊騎手に感謝、スペースが空いた分は天国の岡田総帥の力でしょうか。

この馬は札幌2歳Sでハイペースバランスをバテ差し2着、この時の1着がソダシで、L1は13.0迄落とす中で差を詰めてきたので、パワーと持続力を見せていました。前走はスローバランスでトップスピードの質が足りずに届きませんでしたから、バテ差しの展開なら相当強いですね。

2着はアカイトリノムスメ、直線入り口で一旦外に行きかけて、再度内へ行って待たされてしまいました。スムースならと思うと勿体なかったですね。ルメール騎手は初手からソダシをマークする気満々で、ソダシに道を作ってもらってチョイ差しというのがプランだったのでしょう。中段よりも前に居て2着は高評価で、秋以降はこの世代を引っ張る存在になりそうです。

3着はハギノピリナ、初手は最後方で無理をしなかったこと、前走、2走前と捲りを打っていましたが、今回はギリギリまで待っての追い込み。どういう意図で乗ったのか分かりませんが、展開がドンピシャでしたね。とにかく長くいい脚を使うタイプで、トップスピードの質が高くないのは再三見せています、藤懸騎手が動かなかったことが3着好走の要因ですね。重馬場なら重い印を打とうと思ったのですが、良馬場では手が出ませんでした。1線級との対戦歴がなかったので、クラス負けの危険がありましたが、逆に言えば未知の魅力があったということですね。

4着はタガノパッション、初手の位置取りが後ろ過ぎましたね、4コーナーも中目を回していたので最短距離で直線に入ったわけではなく、ちょっと雑なレースメイクに見せました。直線でもまっすぐ走れていなかったので、この辺りはまだまだ若い部分でしょうか。

5着はアールドヴィーヴル、一番そつなく乗った感じでしたが、これでL1で見劣ったところを見ると、能力的にこのクラスではちょっと足りない感じでした。

ククナとソダシは7、8着でした、この2頭は距離適性だと思うので2000m以下で見直しですね。ステラリアは掛かっていたので内枠で見直し、ファインルージュも距離適性で負けたような感じでした。

馬券の方は馬連だけ、逃げ馬不在でスローバランスを想定していましたが、ここが大外れでしたね。来週はダービー、本命予定はエフフォーリアです。