2019年有馬記念 回顧。リスグラシューも化け物ならレーン騎手も大胆不敵。

まずお詫びと訂正です、予想記事で三連複の買い目と点数が間違っていました、 11番のキセキを間違えて書いていますが、これは14番のヴェロックスの間違いです。印ではヴェロックスを書いているので分かっていただけたとは思いますが、 今後はこのようなことがないよう気をつけます。


走破時計 2:30.5   前半1000m 58.5   上り3F 37.6

まずは馬場状態ですが良馬場で行われましたがかなり重い馬場でした。 8RのグッドラックHCで 2:34.0、9Rのノエル賞が1:50.0なのでかなり力のいる馬場だったと思います。この馬場でアエロリットが記録した1000mは58.5というとんでもないペースでした。

今回はアエロリットが1頭で飛ばしているのでグラフは省略しますが、良馬場とはいえ力の入要るかなり重い馬場を勝ちきったリスグラシューの上がり3Fは34.7でした。目視手動計測ですがL3から11.7-11.3-12.0 、L4からアエロリットを捕まえに行くために流れてはいたのでL3の11.7も驚くほどのラップではないのですが、L2の11.3は馬場を考えるとかなりのトップスピードの質を見せてきました。しかもL2部分でリスグラシューは内目から大外に一気に進路変更しています、ハーツクライ産駒は直線での進路変更を嫌う馬が多いのですが、ブレーキせずにスムースに外に出してしまったことで勢いを殺さずにL1に入って行けたのだと思います。このコース取りはかなり危険で、ヘタをすれば他馬に大きな迷惑をかけてしまう進路取りです。今回リスグラシューが幸運だったのはこの進路取りをするにあたって、スワーヴリチャードやヴェロックスが明らかに伸びあぐんでいたこと、4コーナー出口から直線入り口にかけてアーモンドアイやフィエールマンと、スワーヴリチャードとヴェロックスには勢いに差があり間隔が空いていましたことですね。この間隔をうまく利用して斜めに勢いを殺さずに外に出せたことで、とんでもないL2のラップタイムを踏めたのだと思います。

逃げたのはアエロリット、離れた追走集団の先頭がスティッフェリオとその外にクロコスミア、エタリオウとアルアインが内を空けて中段の前から。中段のやや前最内からスカーレットカラー、その外にスワーヴリチャード。中断からヴェロックス、アーモンドアイが一周目の4コーナーからホームストレッチにかけて掛かり気味にヴェロックスの外まで上がります。リスグラシューは中段の最内から、フィエールマンがいてサートゥルナーリアはアーモンドアイを見る位置。 キセキが中段の後ろから。 やや離れて後方からシュヴァルグラン、レイデオロ、最後方の最内からワールドプレミア。

前半1000mが58.5という馬場を考えればとんでもないペースで逃げたアエロリットですが、 当然スティッフェリオやクロコスミアは追いかけませんでした。離れた追走集団で動きがあったのは最初の4コーナーからホームストレッチで、アーモンドアイが外から掛かり気味に中段まで上がって行きました。 ルメール騎手も手綱を引いて押さえるという程ではありませんでしたが、かなり行きたがっていた感じでした、枠の並びから前に馬を置けなかったことで折り合いが上手く付けられなかったのだと思います。

1着のリスグラシューは終始中段の最内から全くロスのない競馬をしていました。スタートでレイデオロが立ち上がってしまった影響なのかワールドプレミアも後方からになりましたが、結果的にこの位置取りはアエロリットのペースを考えると良かったことになります。同じくスタートが良くなかったのがキセキですが、こちらはムーア騎手が押して押して中段の後ろまでリカバリーしました、結果論ですがこのリカバリーの時に使ってしまった足のせいで、最後の直線の伸びがイマイチになってしまったような気がします。

スカーレットカラーが中段やや前から進めたのは意外でした、この馬は貯めれば貯めるだけ末脚を爆発させられる馬なので、前走のエリザベス女王杯を見ても中段から進めて前半で力を使ってしまうと直線での末脚が並の馬になってしまいます。このことを踏まえれば今回のレースでは当然後方から一発を狙うと思いましたが、岩田騎手はスカーレットカラーが府中牝馬Sを圧勝した理由が分かっていないのではないでしょうか。スワーヴリチャードは中段の前をすんなりと取れました、ヴェロックスも外からうまく中段に潜り込みました。

4コーナー付近です、ここでアエロリットが一杯になりスティッフェリオがアエロリットを交わしに行きました、これに続いたのがエタリオウでリスグラシューはこの辺りからジワっと中目に出してきました。 スティッフェリオの外からアルアインそしてさらに外からアーモンドアイとフィエールマンが上がってきます、サートゥルナーリアは更に1頭分外からででした。この辺りでスワーヴリチャードの手応えが怪しくなりエタリオウとの間隔が開いてしまいました、このスペースをリスグラシューが取ってきます。 

後方からシュヴァルグラン、レイデオロ、ワールドプレミアが馬群に取りつきました。ワールドプレミアは馬群に取り付く勢いのまま外を回して直線に入ってきます。キセキも最内から中目に出して追い込み体勢を築きました、このあたりのコース取りはさすがムーア騎手といった感じ。

最終回の4コーナーから直線入り口にかけての部分です、スティッフェリオが先頭で頑張っている横にアルアインが粘っています、これを中目からアーモンドアイとフィエールマンが並んで捕まえに行くところ、さらに外からサートゥルナーリアがこの2頭よりも良い勢いで上がってきます。

ここで驚くべきコース取りをしたのがリスグラシューで、スワーヴリチャードが4コーナーで手応えが怪しくなりエタリオーとの間に間隔が空きました、このスペースを利用する形で斜めに加速しながら大外までサイドチェンジします。スワーヴリチャードだけでなくヴェロックスも勢いがつかなかった感じでスペースを空けてしまったために、リスグラシューには願ってもない空間が広がりました。通常であればこのようなコース取りはまず出来ません、このようなコース取りをすれば当然他馬に迷惑をかけ制裁の対象になるだけでなく場合によっては降着になる可能性すらあります。リスグラシューの能力が非常に高いことはサートゥルナーリアを5馬身ちぎった着差でも明らかですが、 それ以上に幸運が勝因だと思います。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はリスグラシュー、外からスムースだったサートゥルナーリアを5馬身突き放す圧勝なので、能力の高さを嫌と言うほど見せつけるレースでした。今回のレースについて言えば能力だけでなく幸運も味方につけて全てが上手くいったレースだったと思います。まずスタート後に中段の最内を取れたことでコースロスなく進めることができたこと、4コーナー出口から直線入り口にかけて先行勢と中段勢が分断されたことでスペースができ、斜めに勢いをつけたまま大外までサイドチェンジできたことなど奇跡のような幸運がありました。もちろんこのスペースを瞬時に突いたレーン騎手の判断は素晴らしく、そのレーン騎手の進路取りに応えたリスグラシューの能力も素晴らしいの一言です。ハーツクライ産駒なので直線でブレーキを踏まされたり進路変更したりすることは苦手なはずですが、L2のラップタイムが示すように、ブレーキすることなく斜めに加速しながら進路変更していることで、ハーツクライ産駒の弱点である再加速を問われなかったことがこれだけの着差に繋がったのだと思います。このパフォーマンスを見せられると今日のレースで引退してしまうのが非常に惜しまれますが、無事に引退できて本当に良かったと思います。

2着はサートルナーリア、リスグラシューと同じような位置で進めましたがこちらは外からでした、3、4コーナーでも外を回しているのでコースロスはかなりあったと思います。3着のワールドプレミアにクビ差まで迫られたのも、6回のコーナーを全て外を回した分の距離ロスが大きく響いたのだと思います。 もちろんこの馬は持続力に関しては若干不安のある馬なので、L1でリスグラシューに一気に交わされてしまったこと、ワールドプレミアに迫られた事は持続力の差だと思います。L2では11秒台後半の足は使っているのでトップスピードの質が高い事は見せました。使える足が短い感じがあるのでインコースでじっとしていてL1でチョイ差しに行くのが、一番この馬の力を出せる展開ではないかと思います、なので今回は外目の枠に入ってしまいましたし、道中も馬群の外を回されていたので運がないレースだったと思います。

3着がワールドプレミア、スタートが良くなく最後方からのレースになってしまいましたが逆にこれが良かったのだと思います、 逃げたアエロリットの1000m通過は58.5でしたが、離れた追走集団の先頭を走っていたスティッフェリオの位置でも60秒弱と決して遅いペースではなかった。これを菊花賞のように中段から追走していたら息切れしていた可能性もあるので、出遅れて後方から足を貯めるレースになったことは結果論ですが良かったのだと思います。同じように出遅れたキセキが中段の後ろに取り付くために足を使ったのとは対照的な結果でしたね。今日のレースでは馬場が重く後方からトップスピードの質よりも持続力を問われる展開になったことで、この馬の良さが存分に発揮された感じです。当然軽い超高速馬場になればトップスピードの質を問われるので、神戸新聞杯でサートルナーリアに大差をつけられてししまったように良くないと思います。

4着がフィエールマン、リスグラシューのすぐ外から進めて向う正面ではアーモンドアイのすぐ後ろに位置していました。3、4コーナーでアーモンドアイと一緒に上がり4コーナーではアーモンドアイの外から直線に入って行きました、当然コースロスが大きくなって直線で垂れてしまいましたが、コースロスにより垂れてしまったというよりは、やはり上り坂で失速してしまった感じでした。予想の段階でも言いましたがこの馬は坂上ゴールではどうしても失速してしまうので、中山コースとの相性はあまり良くないようです。それでも4着に踏ん張ったあたりはさすがのG Ⅰ馬としての貫禄だと思います。

5着がキセキ、スタート出遅れてしまいリカバリーして追走集団の中段の後ろにとりつきました、このリカバリーで足を使ってしまったことが最後の直線の伸びが鈍ってしまった原因ではないかと思います。4コーナーのL2部分ですぐ前にいたサートゥルナーリアに引き離されているので、ここで瞬発力で見劣っています。直線に入ってからは坂をものともせずジリジリと伸びているので、持続力とパワーに関しては高いものを見せてきました。やはりこの馬は逃げか先行した時の方が力を発揮できるのだと思います。

アーモンドアイは9着でした、予想の段階で述べた不安材料のうち熱発の影響と天皇賞(秋)で激走したストレス、この二つが大きく影響したのではないかと思っています。同じロードカナロア産駒のサートゥルナーリアも激走後のダービーや天皇賞(秋)で似たような感じで負けています、なのでストレスが抜けるまでもう少し間隔を空けた方がいいのだと思います。 

馬券の方は三連複が的中しました、アーモンドアイが9着だったことでまあまあの配当が取れてよかったです。