2019年オークス 回顧。心肺機能を試されたレース。


走破時計2:22.8RR 前半1000m通過59.1 平均バランス 上り3F35.3

馬場状態は超高速馬場継続レースレコードが出ているどころか、ジェンティルドンナの持っていた従来のレコードを0.8秒も更新する、とんでもないタイムです。昨年東京2400mのコースレコードが大幅に更新されましたが、それまでのコースレコードは2:22.2、1989年のホーリックスのもでこれに0.6差ですから3歳牝馬にとっては破格の時計です。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今年、赤は2016年シンハライトが勝った時のラップです。

2016年もほぼ平均バランスで1000m通過は59.8も今年に近いのですが、後半に入って緩んだので3F戦になったレースでした。今年は緩まないばかりか、L4から11秒台に入る消耗戦になり、トップスピードに関しては全く問われていません。

注目は赤矢印のL2部分です、今年はL2で減速ラップに入っています、L2ではすでにカレンブーケドールが先頭に並んでいるので、離れた逃げ馬のものではないんですよね。ここで減速しているということは道中いかに苦しいペースだったかを物語っています、平均バランスで心肺機能をモロに問われたレースでした。2016年もL2でわずかに減速していますが、減速幅が小さいので今年の苦しさがよく分かると思います。

逃げたのはスタート不安の有ったジョディ―、ここ一番で最高のスタートを切り逃げ体勢に、いつ通りのスタートで楽に2番手に入ったのがコントラチェックでしたね。2馬身程離れてエールヴォア、内にクロノジェネシス、外にカレンブーケドールがこの位置からで、この後ろにダノンファンタジー、内からシャドウディーヴァ、外からフェアリーポルカ。中段は内からウィンゼノビアが上がり、シゲルピンクダイヤ、ラブズオンリーユー、ビーチサンバが居てこの後ろからノーワン、メイショウショウブ。後方からウィクトーリア、フィリアプーラ、シェーングランツ、最後方からアクアミラビリスという並びでした。

ジョディ―は楽に逃げ体勢を築いたにもかかわらず2F目に10.7というラップを踏んでしまいます、スタート直後に逃げ争いは決着していたので、ここまで速いラップを踏む必要はないんですが…。予想でも書いた通り武藤騎手に2400mのレースメイクは難しかったですね。問題はコントラチェックのレーン騎手で、人気を背負っているためにオーバーペースのジョディ―を追いかけてしまいました。あんなペースですから行かせてしまってもいいんですが、日本での騎乗経験の少なさが出てしまったのかもしれませんね。ミルコやルメール騎手なら武藤騎手の能力を知っているので、単騎で行かせてスローバランスにしてきたかも。

序盤から良いポジションを取ったのがカレンブーケドールで、折り合いもばっちりついて中段の前から虎視眈々という感じ。ダノンファンタジーも周りに馬を置いて折り合っていましたので、川田君にしても理想的な位置取りだったのはないでしょうか。ウィクトーリアはゲートが空いた瞬間に立ち上がり気味に出て、隣のシゲルピンクダイヤに寄られてしまい後方からになりましたね、シゲルピンクダイヤはゲート入りから煩かったので、影響を受けてしまったのかも。コントラチェックもゲート入りがスムースではなく、怖がっている感じでしたね、この辺りは3歳牝馬の若さ、初の東京コース、初めてのスタンド前発走と余計なプレッシャーを掛けてしまい可哀想でした。

直線入り口です、ここで注目すべきはカレンブーケドールです、L3標識から津村騎手が追い出してしっかりとエンジンをかけていました、「やればできるじゃん!」これには正直驚きましたがこれでカレンはL2標識付近で先頭に立ちます。クロノジェネシスはコントラチェックの後ろから、ダノンファンタジーはスムースに外に出せる上手いコース取、シェーングランツも上手く外に出していました。

勝ったラブズオンリーユーはフェアリーポルカとビーチサンバに挟まれて狭くなってしまいましたが、この後両馬の間が空いて伸びてきます、スローからの3F戦だったらここで挟まれた時点で万事休すだったでしょうね。ミルコはアドマイヤマーズの時もそうでしたけど、勝つ時は全てが上手く行くんですよね~。

直線L2標識付近です、勝ったラブズオンリーユーは進路が空いていますが、ここでの反応はイマイチでしたね。シャドウディーヴァが2度3度寄れてダノンファンタジーとニアミス連発、コントラチェックの内にクロノジェネシスがスムースに入って抜け出しますが、これもジリジリまでと言うか、すでにこの地点から減速が始まっています。

シェーングランツが大外から伸びますがこちらもジリジリ、ビーチサンバはL2の前で一杯になってしまい後退していきました。ここからしぶとさを見せたのがウィクトーリアで、持続力の高さを見せただけにスタートが悔やまれますね、カレンの位置に居たら勝ち負けだったでしょう。

このレースは再三書いた通りトップスピードの質は問われていません、心肺機能をモロに問われたレースで今後に向けては参考になりにくいレースだと思います。2016年の好走馬も古馬になって全く活躍していません、というか軒並み故障やら体調不良やらでまともに走ってさえいません。唯一古馬になって活躍しているのが6着のフロンティアクイーンだけですからね~。牝馬限定戦で問われやすい能力を問われなかったレースだと思います。もちろん今回好走した馬が弱いというつもりは全くありませんよ、強いんです、こういう展開ならね。問題は牝馬限定戦ではこういう展開が少ないんですよね、先日のヴィクトリアMみたいなレースですが、距離が違い過ぎて参考になりませんからね。今回の好走馬はこういう展開で強いと分かったとはいえ、自分からこういう展開を作れる馬ではないというところが、今回の好走馬の泣き所だと思います。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はラブズオンリーユー、道中中段の外目を追走しての直線バテ差し、白菊賞で平均バランスを好タイムで圧勝しているように心肺機能は高いです、L2の反応がイマイチだったのはこのペースでは当然で、苦しくなってもしっかり走る根性娘ですね。スタートは今一歩なのでスローバランスからの3F戦で切れ負けしないようなら、今後も楽しみになると思います。それにしてもサンプル数が少な過ぎる・・。

2着はカレンブーケドール、津村騎手は最高の騎乗でしたね、前走勝ってもしっかり反省したのか、偶々なのかは分かりませんが追い出しのタイミングは最高です。L4からジョディ―が引き上げて11秒台に入れているので、偶々かも…。この馬の良さは新馬戦でダノンキングリーに迫った時点で見せていたので、この2着は驚くほどのことはなかったのですが、心肺機能がここまでとは思いませんでした。瞬発力の無さを騎手が補ってあげれば隙が無い馬になりそうで、ラブズオンリーユーを逆転することは難しくないと思います。

3着はクロノジェネシス、内枠から道中も最内を先行して直線も詰まることなく加速しているので、上位2頭とは心肺機能の差でしょうね、着差も僅差なので心肺機能の差と言ってもほんの僅かでしょう。この馬には合わない展開で、溜めてからの強烈な瞬発力がこの馬の持ち味なので、今後の牝馬限定戦ではこの馬の方が期待は持てますね。

4着はウィクトーリア、スタートがね~勿体なかったです。今回1番強い競馬をしたのはこの馬でしょう、2走続けて出遅れてしまったので力は認めつつも、重い印を打ちにくい馬になってしまいました。

5着はダノンファンタジー、心肺機能の差がこの着順になったはずで、平均バランスでは阪神JFで勝ち切っていますがあの時は最後方からのレースでした。自身はスローバランスになっているので前半から流れてしまうと、後半が苦しくなってしまうのでしょうね、今回は中段のやや前からになってしまいましたからね。馬群に入れることで折り合えることは分かりましたし、今後の牝馬限定戦ではこのような厳しいペースは少ないはずなので、ウィクトーリアと同じで今後は期待できると思います。

7着はシェーングランツ、スタートはいつも通りで後方から、向正面で外目に出して直線のコース取りも理想的でしたが、3,4コーナーで11秒台に入る流れでは外から取り付くだけで精一杯でしたね、調教が良かっただけに展開が向かなかったのは残念でした。お姉ちゃんのソウルスターリングよりもリスグラシューのような感じなので、スローからの3F戦で好走しそうです。

馬券の方は縦目でした、そろそろ当てたい。