2020年オークス 回顧。横山典騎手の好騎乗とルメール騎手の執念。

走破時計 2:24.4  前半1000m 59.8  上り3F 34.2

含水率 ゴール前 13.5%  4コーナー 13.2%

まずは馬場状態ですが超高速馬場でした。6R3歳1勝クラスのマイル戦が1:31.7、8R調布特別1800mが1:44.8、10RフリーウェイS1400mが1:19.7ですから、超高速馬場でいいと思います。オークスのタイムが平凡なのは、中緩みが大きかったからでしょうね。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回、赤が2020年フェアリーSのグラフです。

スマイルカナを対抗にしているので、スマイルカナ失速の要因を探っていきます。要因はズバリL3で11.2の速いラップを踏まされてしまったことだと思います、4コーナーあたりでクラヴァシュドールが外からスマイルカナに並びかけたことで、スマイルカナは仕方なくペースを上げてしまいました、それがL3で11.2を踏んだ原因。 直接の原因はクラヴァシュドールが早目に上がってきたことですが、クラヴァシュドールが早目に上がる遠因は、スマイルカナが中盤で13.0までラップを落としたことだと思います。ミルコにしてみれば相手はスマイルカナではなくデアリングタクトやデゼルだったはずです、 直線入り口ではこの2頭に対してリードを広げておきたいと考えていたと思います。そのためには中緩みが大きくなり馬群が凝縮してしまってはリードを築くことができませんから、デアリングタクトが馬群の中に居るうちに、ペースを引き上げ縦長の展開で直線に入って来たかったのでしょう。 

未知の距離である2400mにビビって必要以上にペースを落としてしまったことで、逆にタメを作れなかったのがスマイルカナでした。この辺りのレース運びには柴田大知騎手に大きな不安がありました。さすがにミルコが早目に動くとは思わなかったので、対抗の印を打ちましたが騎手の実績能力ということを考えると思慮が足りなかったかなと思います。

後で詳しくやりますがこのミルコが動いた地点で動かなかったのが、ウインマリリンの横山典騎手です。最内でロス無く運び4コーナーで”待った”、素晴らしい騎乗だったと思います。

逃げたのはスマイルカナ、やや離れた2番手にウインマリリン、3番手にクラヴァシュドール、外にアブレイズでここまでが先行勢。中段の前からウィンマイティ、ホウオウピースフル、フィオリキアリ。 中段からミヤマザクラ、ウーマンズハート、マルターズディオサ、 ここでやや馬群が空いてリアアメリアが中段のやや後ろ、中段の後ろからデアリングタクト、デゼル、インターミッション。後方からになったのがリリーピュアハート、サンクテュエール、マジックキャッスル、チェーンオブラブとという並びでした。

スタートよくスマイルカナが先頭に立ちました、前半1000mは59.8で馬場状態を考えれば決して速くはありません、もちろん2400mは未知の距離ですから、誰も来ないならばもっとペースを落としても良かったと思います。スマイルカナは若干掛かっていたので馬にとってもこのペースは遅かったのかもしれません。これに続いたのがウインマリリンで横山典騎手は誰も来ない展開を見てペースをさらに緩めました、スマイルカナに対して2、3馬身間隔を空けているので、ウインマリリンの1000m通過は60.1くらいでしょう。

スタートが良かったのがクラヴァシュドールでウインマリリンを行かせて3番手の最内に収まりました、3着に頑張ったウインマイティがその後ろでロスなく競馬ができました。 ミヤマザクラはデアリングタクトとスタートでやや遅れたリアアメリアが、積極的に前に行かなかったことでできたスペースを突いて中段の最内、スタート五分に出たウーマンズハートとマルターズディオサが中段を確保しました。 

デアリングタクトのスタートは今までになく良く五分にスタートを切ることができました、やや掛かり気味でしたが、じりじりとポジションを下げながら折り合いをつけて行きました。デゼルもスタート五分に出てデアリングタクトをマークするような位置取りでした。いつもはスタートが良いリリーピュアハートが一歩目で大きく躓き、あわや落馬というくらいバランスを崩してしまったので、後方からのレースになってしまいました。

 4コーナーから直線入り口です、スマイルカナが逃げていますがここにクラヴァシュドールが並びかけてきます、アブレイズは更に1頭分外を回し、フフィオリキアリは更にその外でした。ここから一気にペースが速くなりますが、図のようにウインマリリンは前に2,3頭分の間隔を空けるくらい、仕掛けを待っています。当然ウインマリリンの後ろに居たミヤマザクラもここで待ちます。ウィンマイティはクラヴァシュドールに釣られる形でウインマリリンの外に出してしまいました、この動きが2着と3着の着差になったと思います。

クラヴァシュドールの動きに対して釣られているのはマルターズディオサの田辺騎手も一緒です、外から動いている分だけかなり脚を使ってしまったはずです。ここでデゼルが外に出しています、 サンクテュエールの外を回す形になっているので、かなり距離ロスをしているはずです。予想の段階で書いたレーン騎手の焦りが出てしまったのかなと思います。

この部分で注目すべきはサンクチュエールのルメール騎手の動きです、前走の桜花賞でデアリングタクトに手も足も出ませんでしたが、ここでデアリングタクトの外に張り付き、デアリングタクトのコースを殺しに行っています。力が劣る馬であることは重々承知していたはずですが、それでもデアリングタクトに対して勝ちに行く競馬をしている、ルメール騎手のレースに対する執念を感じさせる位置取りでした。

直線L2標識付近です、スマイルカナが先頭ですが、すでに足色が怪しくなっています。クラヴァシュドールが並びかけ外からウインマイティーも伸びてきます。ウインマリリンはスマイルカナの内側に入り、この時点ではまだ追い出していませんでした 、ここで持ったまま楽な手応えだったことは4コーナーで無理をしなかったことが要因だと思います。内からはミヤマザクラとホウオウピースフル、リリーピュアハート、ウーマンズハートあたりがスムースでした。

外からマルターズディオサ、サリアアメリア、デゼル、チェーンオブラブはスムース。デアリングタクトはマルターズディオサの後ろに入り、外にはリアアメリアとサンクチュエールが居て出すことはできません。フィオリキアリが下がってきたところマルターズディオサとの間を狙ってデアリングタクトが動きます、ここでマジックキャッスルも同じようにこの1頭分のスペースを狙ってきて、この2頭はやや交錯しました。一瞬早く動いたデアリングタクトがマジックキャッスルの前を押さえる形でこのスペースを利用して抜けてきます、この一瞬の瞬発力これがデアリングタクトの大きな武器です。

直線L1標識付近です、スマイルカナが一杯になり一緒にクラヴァシュドールも下がってしまいます、ウインマリリンが内から抜け出して先に抜けていたウインマイティーを追いかけます。マルターズディオサがこの辺りで苦しくなりリアアメリアが外から交わします、さらにその外からでデゼルとチェーンオブラブがスムーズでしたが、デゼルの方は伸びを欠いて11着でした。コースが空いてからのデアリングタクトのスピードが素晴らしく、 L2区間だけで5馬身は詰めていますね。

ここからウィンマイティをウインマリリンが交わし、外からデアリングタクトが1頭だけ違うスピードで前の2頭をあっさりと差し切りました。デアリングタクトのL3からのらは目視手動計測ですが、11.3-10.9-10.9くらいで強烈なトップスピードの質を見せつけました。桜花賞でも重馬場でしたがL2から他馬とは次元の違う足を使っているので、現状では持続力についてはまぁまぁという評価で良いのかなと思います。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はデアリングタクト、スタート五分に出てそこから折り合いを重視して中段のやや後ろ辺りに下げてい行きました、3、4コーナーでも最内を回して終始ロスなく進め、直線入り口で中目に出しましたが前が壁になり待たされていました。松山君は慌てる様子もなくコースが開くのを観察してから、フィオリキアリが下がってきたスペースを上手く突いて、後はデアリングタクトの瞬発力とトップスピードの質で差し切ってしまいました。10秒台のラップを連発できる持続力は評価できますが、L4やL5からのロンスパにになった時は未知数です。

一番人気でプレッシャーが掛かっていたはずですが、松山君は終始落ち着いていて、最内で非常にロスの少ない完璧な騎乗をしたと思います。不利がなければ勝てるという自信に満ちた騎乗だったと思います。

2着はウインマリリン、4コーナーでクラヴァシュドールが動いた時に、釣られずに”待てた”ことがこの2着好走に繋がったと思います。前半スマイルカナからやや距離を空けていたこと、直線L2手前まで追い出しを待ったことなど、ベテランの横山典騎手らしい非常に味のある騎乗だったと思います。前走は息子の横山武史騎手が乗っていましたが、フローラステークス一着がフロックでないことを証明しました。外枠から最内の2番手でレースができたことはかなり恵まれたと思うので、横山典騎手の好騎乗も含めてこの2着を額面どおりに評価するのはやや怖い感じがします。

3着はウインマイティー、道中はクラヴァシュドールの後ろで中段から進めました、前にウインマリリンが居てくれたことで前半のペースはかなり楽だったはず。3コーナー過ぎからクラヴァシュドールに釣られてウインマリリンの外に出してしまったこと、これがゴール前のウインマリリンとの差になった気がします。超高速馬場で前半はかなりゆったり流れましたし、前が止まらない馬場状態で恵まれてはいますが距離適性は見せてきました。

4着がリアアメリア、 前半無理をせずに中段のやや後ろあたりで折り合えていました、ようやく馬が大人になってきたのかなという感じがします。それでもすぐ後ろにいたデアリングタクトには並ぶ間もなく交わされてしまったので、能力の差は見せつけられてしまいました。折り合いがつくようになったことで今後は位置取りの自由度も上がるはずで、デアリングタクトよりも前でレースができるようになれば逆転も考えられると思います。

5着がマジックキャッスル、クイーンCでミヤマザクラの2着に入っているので、やはりコース適性は高いものを見せてきました。デアリングタクトとのポジション争いに負けてしまったのは瞬発力の低さが原因だと思うので、外からスムースであればもっと着順は上だったはずです。 トップスピードの質と持続力の高さは見せているので、前半無理なく進めて直線でスムーズな競馬をした時に差し切れるでしょう。

6着がチェーンオブラブでした、赤松賞で上り3F33.3を出して 僅差の4着でした、この馬も東京競馬場とは相性が良さそうです。3、4コーナーで外目を回しているので距離ロスもしていたはずなので、ロスなく乗れてなおかつ直線がスムーズならば掲示板もあったと思います。7着がミヤマザクラで兄弟揃ってジリ脚なところを見せてしまいました、この距離でもバテているわけではないので、道悪で先行した時に好走できそうな気がします。 

クラヴァシュドールは15着でした、負け方から距離適性がモロに出てしまった感じです、スマイルカナも16着でこちらは距離適性だけでなく、L3から速いラップを踏まされて息が入らなかったことも原因だと思います。2番人気だったデゼルですが、3コーナーでは早くも外に出しているので、デアリングタクトとはだいぶ走った距離が違うのではないでしょうか。この辺りにレーン君の焦りと若さが出てしまったのかなという感じです。

馬券の方は絞って買いましたがクラヴァシュドールとスマイルカナが凡走してしまいハズレでした。