2019年天皇賞(秋) 回顧。注目すべきはスワ―ヴリチャード。


走破タイム 1:56.2  1000m通過 59.0  上り3F 34.3

馬場状態は超高速馬場まで回復していましたね、10Rの紅葉S3勝クラス1600mで1:32.0、勝ったレッドヴェイロンの上り3Fが33.3でした。かなり軽い馬場になっていたのでアエロリットも粘れましたね。ちなみにレッドヴェイロンは先週の富士で3着に入ったレッドオルガの弟ですね、やはりこのコースは走りますね、しかも今回は約1年ぶりのレースでプラス20㎏でした、僅差の勝利とは言え今後の上積みに期待したくなる馬です。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回のレースラップ、赤は2018年天皇賞(秋)、緑が2018年毎日王冠、黒が2019年皐月賞のレースラップです。

まずアエロリットが作った今回のラップですが、2018年天皇賞(秋)と2018年毎日王冠とよく似たラップ推移で持続力が問われたラップですね。この持続力勝負に持ち込めたことがアエロリット好走の要因の一つだと思います、アエロリットはトップスピードの質と瞬発力で勝負するタイプではないので、戸崎騎手は非常に良いレースをしてきましたね。

アーモンドアイは2018年ジャパンCの時にL5から11.4-11.4-11.0-11.4-12.0というラップで圧勝しているので、今回は比較的楽なレースだったはずです。今回はL2部分で内から抜け出しているので、自身のL2ラップは11.0くらいのはず、絶好調時ならもっと早いラップを踏める馬なので、事前情報で言われた通り今回は100%の状態ではなかったのでしょう。もちろんこれでレコードタイムの0.1差の走破時計ですから、能力はずば抜けていますね。

ダノンプレミアムはこのようなラップは初めてですね、L4から11秒台前半を連発するラップで高い持続力を見せてきましたね。もちろんこのラップでは自慢の瞬発力は引き出せませんから、持続力と瞬発力がトレードオフの関係なんでしょうね、まぁ瞬発力を発揮しても持続力は発揮できるのですが、今回のような高い持続力は見せられない、そんな特徴がみられました。

逃げたのはアエロリット、スティッフェリオが2番手、ややスタート出遅れたサートゥルナーリアがリカバリーして3番手、外からドレッドノータスが上がり、中段の前からになったのが内からアーモンドアイ、ダノンプレミアムでした。アルアインが外から中段に、ウィンブライト、スワ―ヴリチャード、ランフォザローゼス、ゴーフォザサミット、ワグネリアンまでが中段。後方からユーキャンスマイル、ケイアイノーテック、マカヒキ、カデナという隊列でした。

サートゥルナーリアはスタートイマイチでしたが、枠の並びが良かったですね。内のマカヒキ、ユーキャンスマイルがスタート遅れて、スティッフェリオがスタート良く前に行ったのでここにスペースが出来ました、このスペースを利用して前に行けましたね。更に向正面入り口でアーモンドアイの前をややカットする形で、アーモンドアイが一瞬ブレーキしています、これでアーモンドアイの前にやや強引に入りました。特に掛かっている様子もなかったので、操縦性の良さは相変わらずですね。

スティッフェリオのスタートから二の足が早かったのでダノンプレミアムは控えて中段の前からになりました、ここで競り合ってしまうと掛かる可能性もありますし、内に居たアーモンドアイにわざわざスペースを差し上げる必要もないですからね。スワ―ヴリチャードは良いスタートでジャパンCのような位置取りでした、スタートさえ決めてしまえばこの位置が取れるんですよね。

ワグネリアンはスタートイマイチ、外枠だったので出して行くわけにもいかず、中途半端な中段の後ろからという一番厳しいレースになってしまいました。ユーキャンスマイルは無欲のレースでしたね、直線勝負に徹するための位置取りでした。

4コーナーから直線入り口です、ここでドレッドノータスが一杯になります、これで外にスペースが出来たのがダノンプレミアムで、スティッフェリオの外に進路を取りました、4コーナー出口から自然に外に出せたのでコースロスもなく、スピードも落ちない理想的なコース取でしたね。アーモンドアイはまだまだ前の3頭(アエロリット、サートゥルナーリア、ダノンプレミアム)を見ていましたね。ルメール騎手はL4から速くなっていることを感じていたはずですから、何度も一緒に走っているアエロリットと乗っていたサートゥルナーリアについては完全い射程圏と考えていたはず、あとはダノンプレミアムをケアしておけばよいという、余裕のある騎乗でした。

ドレッドノータスが下がってきた影響を受けたのがアルアインですね、元々外に居ましたが、更に1頭分外を回されてしまいました。スワ―ヴリチャードは最内からコースロスなく直線に入っていけましたね、好騎乗ですね。ワグネリアンは下がってきたドレッドノータスの内から、ユーキャンスマイルは内目を回って馬群に取り付き、ワグネリアンに進路を作ってもらう形で直線勝負に持って行きます。

直線L2標識付近です、アエロリットがまだまだ頑張っていて、サートゥルナーリアとダノンプレミアムが並びかけます、アーモンドアイは内に進路を取ってここから加速していきます、アーモンドアイのL2ラップが11.3ですから、アーモンドアイのL2ラップは11.0くらいでしょうね、瞬発力という程の加速ではないがスピードを落とさない、上り坂なのでパワーも問われているはずで、このラップ推移でL2で勝負を決めてしまう能力の高さは現役№1と言っていいと思います。

スワ―ヴリチャードはジャパンCと全く同じレース内容でしたね、L2付近でアーモンドアイに引き離されてしまい、ここからジリジリと流れ込みました。4コーナーでドレッドノータスの内を回したワグネリアンの伸びがイマイチでしたね、今回は2カ月強の間隔を空けてマイナス10㎏と体調もギリギリだったのかもしれません。ユーキャンスマイルがこの辺りでワグネリアンに並びかけました。

直線L1標識付近です、この地点ではアーモンドアイはもう抜けていて、アエロリットに並んだサートゥルナーリアがここから垂れてしまいます。ダノンプレミアムは持続力発揮してなんとかアエロリットを首差交わしました、ここまで完璧にアエロリットに乗られたことと、持続力勝負はダノンプレミアムの得意パターンではないですからね。逆に得意の展開に持ち込んでダノンプレミアムにクビ差負けたアエロリットは、1F長いという部分が最後の最後に出た感じですね。ユーキャンスマイルとワグネリアンに迫られているので、超高速馬場とは言え2000mはギリギリでした。

今回のレースで注目すべきは着順とタイム差です。スワ―ヴリチャードを見てください、アーモンドアイから0.9秒離されています、この0.9秒差はジャパンCの時と全く一緒です。アーモンドアイとスワ―ヴリチャードの0.9秒差が所謂”越えられない壁”ですね。この0.9差に何頭か入るかもと予想で書いたのですが、キセキがここに出走していれば恐らく2,3着に入ったでしょうね。サートゥルナーリアは体調万全ではなかったはずなので、ここでは割り引いてあげた方が良いと思います。

では1頭ずつ見て行きます。

1着はアーモンドアイ、完璧なレースでしたね、もう言う事無しなんですが。スタートも決めてしまい内の中段やや前から、有力馬を見る形でしたね、唯一不安になったのは直線でコースが空くかどうかでしたが、アエロリットが締まったペースで逃げたこともあり、前に居た実力不足の馬が直線入り口で早々にふるいに掛けられましたから、直線は込み合うことが無かったですね。それでも最内を選択してきたコース取は、ルメール騎手の上手さですね。心肺機能、パワー、瞬発力、トップスピードの質、持続力、すべてを最高レベルで持っている馬で隙が無い。唯一の弱点はロードカナロア産駒らしく疲労に弱い点ですが、これは相手云々ではなく自分との戦いですから、レース間隔を間違えなければいいだけですからね。今後も逆らうことはできない馬ですね。

2着はダノンプレミアム、得意の瞬発力を発揮できない展開でしたが、前半がゆったり入ったこともあり後半の4F戦にしっかり対応してきましたね。持続力自体は弥生賞でも金鯱賞でも見せていましたが、いずれもL3からのものでしたし前半はかなりのスローでしたから、このレベルで対応できるか未知数でした。今回しっかりとした競馬をしてきたので、今後のレースでは作戦の幅が広がりましたね。アエロリットが1F長い可能性があったとはいえ、アエロリットの土俵で撃破したのは高評価です。

3着はアエロリット、超高速馬場でしたが1F長かったかな~、いや、50m長かったという感じでしたね。ラップグラフでも見た通り得意パターンに持ち込む完璧な騎乗でした。やはり輸送の無い競馬では力を発揮してきますね。間違ってもマイルCSには出ないで欲しいですね。

4着はユーキャンスマイル、このメンバー相手ですから挑戦者の立場で、それにふさわしいレースをしてきましたね。一かバチか、無欲の3着狙い。惜しくも4着でしたが馬場がもう少し重ければ3着に入れたはずです。このメンバー相手(アーモンドアイ除く)にも末脚勝負に徹すればチャンスがあることが分かったので、今後も楽しみですね。

5着はワグネリアン、調教がやや物足りなかったし、当日もマイナス10㎏と中間順調ではなかった可能性がありますね。前走も大きく馬体を増やしていたわけではないので、大事に使われてきたことで体質が強化されていないのかもしれません、過保護に育ってしまったのかな~。外枠で先行出来なかった時点で苦しいレースになるのは分かっていましたから、5着でも高評価でしょうね。スワ―ヴリチャードに先着しているので、古馬中距離路線のトップクラスに入ると思います、アーモンドアイは別格です。

6着がサートゥルナーリア、ロードカナロア産駒の休み明け2走目、しかも前走激走とダービーと同じ内容でしたね。これでダノンプレミアムから0.4秒差ですから、体調万全なら逆転可能でしょうね。体調がイマイチではこのレースで問われた4F戦に対応する持続力は、評価のしようがないので未知数ですね。パワー、トップスピードの質と瞬発力に関してはアーモンドアイと互角だと思うので、弱点の疲労を考えるとこの馬もアーモンドアイ同様、相手云々ではなく自身との戦いですね。

馬券の方は押さえで入れておいたアエロリットちゃんが3着に粘ってくれてトリガミ回避。ワグネリアンに期待した3連単は外れましたが、堅いレースの割にトリガミにならなかっただけ良しとします。