2020年阪神大賞典 回顧。負けて強しどころではない、キセキは化け物だ!


走破時計 3:03.0  前中後1000m 62.6-60.3-60.1  上り3F 36.3 

含水率 ゴール前 7.6%  4コーナー 9.5%

まずは馬場状態ですが良馬場でかなりの高速馬場でした。9R須磨特別が2勝クラスの1800mで1:46.1、逃げ切ったメイショウモウコの上がり3Fが35.3、4着のラストヌードルの上り3Fが32.9でした。かなり軽い高速馬場だったと思います。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青が今回、赤が2020年ダイヤモンドSのグラフです。

 グラフを見ていただければわかるとおり今回は最初の1000mは非常にゆったりと入り、次の1000mはペースが一気に上がりました。そして最後の1000mもペースがなかなか落ちないというラップになっています。当然こういうラップになった原因はキセキの出遅れとその後の動きです、このグラフからは見ることができませんがきキセキ自身はとてつもないラップを踏んでいて、改めてキセキの化け物っぷりを存分に見せたレースになっています。

キセキはスタートで大きく遅れて約1.5秒ほどゲートの中に留まっていました、そこから最初の直線入り口で馬群に取り付き、スタンド前で先団まで上がってきました。キセキ自身の1000~2000mのタイムは目視手動計測ですが約58.2です、 阪神大賞典は通常が中緩みが起こることが多いのですが、今回のレースでは中緩みではなくむしろこの地点で加速しています。さらに2000m過ぎから福永騎手のタイセイトレイルが、早めに先頭に並びかけたことでペースが全く緩みませんでした。キセキ自身最後の1000mは先頭付近にいたのでほぼレースラップ通りのペースを刻んでいます、 1000~3000mの2000mを約1:58.9で走ってることになり、これは昨日行われた若葉Sの走破タイム1:58.6に匹敵する驚異的なタイムです。もちろん若葉Sはスタンディングスタートからのタイムで、 阪神大賞典の1000~2000mはフライングスタートのタイムなので単純な比較はできませんが、それでも3000mのレースの後半2000mを1:58.9で走ってしまうのは驚異的です。

さらにキセキの化け物っぷりを感じるのは、キセキ自身の走破タイムで3:03.6なのですが、キセキはゲートの中に1.5秒ほど留まっていたので、実際に走っている時間は約3:02.1ということになります。阪神大賞典のレコードタイムはナリタトップロードが記録した3:02.5なので、約0.4秒速い計算になります。ナリタトップロードが勝った時は最初の1000mがやや速く、真ん中の1000mがかなり緩い展開でした、ここで息が入っているので心肺機能や持続力は問われていませんが、今回のキセキのレースでは1000m過ぎから息のの入らないレースになっていて、強烈な心肺機能と持続力の高さを見せつけていることになります。2018年のジャパンカップでも驚異的な心肺機能と持続力の高さを見せましたが、改めてこれだけの能力を見せつけられると、6歳になっても全く力が落ちていないということを確認できました。 

メイショウテンゲンの好走について、キセキが作り出した1000m過ぎから全く息の入らない展開が向いたのがメイショウテンゲンです、ダイヤモンドSの時のラップと今回のラップは、非常によく似ていて究極の消耗戦になっています、昨年の弥生賞も消耗戦になっていてバテ差しで勝ち切っているように、トップスピードの質は低いのですが、とにかくバテずに伸びてくるというのがメイショウテンゲンの特徴です。スローからのトップスピード戦になってしまうと当然切れ負けしてしまいますが、今回のようにトップスピードの問われない消耗戦になれば、何時でも台頭してくるステイヤーらしいステイヤーです。

逃げたのはドレッドノータス、2番手の内からムイトオブリガード外にタイセイトレイル、ボスジラが続いてやや間隔を空けてメイショウテンゲンが中段から、ユーキャンスマイルは最内、トーセンカンビーナ、レノヴァールに続いて大きく出遅れたキセキが馬群に取り付いてきたところです。 

1周目の直線入り口でスタートで大きく遅れたキセキが馬群にとり付きました、ここで折り合って足を貯めるかと思いましたが、ストレート区間で先頭まで上昇して行きタイセイトレイル、ドレッドノータスとスリーワイドの形で2コーナーへ入って行きました。例年の阪神大賞典ではこの区間でペースがガクッと落ちるのですが、キセキが上がっていったことでペースが落ちませんでした。単勝1.6倍の1番人気だったことで、川田騎手も相当焦ってしまった感じが見て取れます、前走の有馬記念を見れば中段やや後ろ辺りで脚を溜め、直線勝負に持ち込んでも良いと思いますが、圧倒的な一番人気だったために差し切れない危険を感じて、ポジションを上げていったのだと思います。

ドレッドノータスは最初の1000mこそゆったり入れましたが、1000m過ぎからキセキが上昇してきたために息を入れることができず、かなりのペースで逃げることになりました。不可解な動きをしたのがタイセイトレイルの福永騎手で、キセキに合わせて2コーナーではドレッドノータスに並びかけています、キセキを1頭分外に回したかったのだと思いますが、まだ勝負どころではありませんしキセキが大きく遅れたことは分かっていたはずなので、ここでキセキを行かせても特に問題はなかったと思うのですが。

メイショウテンゲンが中段を確保できて、その後方内側にユーキャンスマイルが入りました、終始最内を進めることになりユーキャンスマイルは最短距離を回していました。結果的に1000mで息の入らないレースになったことで、中段より後ろでロスなく回した3頭が上位に来ています。

最終向こう正面です、ドレッドノータスに並びかけたタイセイトレイルは一歩引いて2番手の位置、キセキは前の2頭を見る位置までポジションを下げました。ムイトオブリガード、ボスジラが続きやや、間隔が空いてメロディーレーンが中段から、メイショウテンゲンが続きユーキャンスマイルは最内をスムースに追走していました。

もう一度ラップタイムのグラフを見てください、向正面の中ほどで早くも11.6秒のラップタイムを刻んでいます、下り区間に入るL4では11.9までラップが落ちているので、先頭を走っていたドレッドノータスにはかなり厳しいラップになっていたはずです。L3で再度11.8までペースが上がりますが、これは先頭に並びかけたタイセイトレイルのものです。このラップ推移とタイセイトレイルの動きを見ても、タイセイトレイルの持続力の高さもかなり評価しないといけないと思います。

4コーナーから直線入り口です、タイセイトレイル、キセキ、ムイトオブリガード、ボスジラがフォーワイドで直線に入ってきます、この地点でタイセイトレイルとキセキはかなり消耗していたようです、キセキの後ろからユーキャンスマイルが非常にスムースに直線に入ってきます、前が壁になりそうですがすぐ前にいるのがキセキなので、追走する相手としては正しい選択をしたと思います。メロディーレーンを挟んで中目からトーセンカンビーナ、さらにその外からメイショウテンゲンがスムースに直線に入ってきます。

直線L1標識付近です、タイセイトレイルとキセキが頑張っていますが、この辺りで一杯になり間を割ってユーキャンスマイルが伸びてきます。伸びてくると言うかキセキとタイセイトレイルが下がってきた間を、スピードを維持しながら抜けてきたと言った方が良いでしょう。 トーセンカンビーナは外にボスジラがいましたが、上手くムイトオブリガードの外に出して、こちらもバテ差しでの伸びてきました。一番外からバテ差しで伸びてきたのがメイショウテンゲンで、消耗戦になりトップスピードの質を問われなかったことで3着を確保しました。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はユーキャンスマイルでした、道中はいつも通り中段の後ろからになり、終始最内でロスなく進めました。レース全体が消耗戦になっているのでコースロスが全くなかったことが好走要因のひとつだとは思いますが、先頭から大きく離れていたわけではないので後半この馬自身も2分を切るタイムで走り切っているはずです。正直ここまで高い長距離適性を持っているとは思いませんでしたが、今回のレースでステイヤーとしての資質を開花させたなという印象があります。今まではスローからの直線勝負でトップスピードの質を生かす競馬が得意でしたが、コースロスなく乗ったとはいえ長距離の消耗戦で、ここまでのパフォーマンスを見せてくるとはかなり驚きました。

2着がトーセンカンビーナ、終始後方からの競馬になりましたが馬群から大きく離されることもなくしっかりと追走できていました、初めての重賞挑戦でかつ長距離戦ということで不安もありましたが、トップスピードの質を問われない展開でも、心肺機能と持続力を生かしてバテ差しができたことは、今後に向けて非常に大きな武器になると思います。格上げ戦を苦にしないディープインパクト産駒ですし、角居厩舎所属なので初めての重賞挑戦でも好走できたのだと思います。

3着がメイショウテンゲン、1000m過ぎからレース全体が流れて長距離戦らしい消耗戦になりました、これはハナ差で2着だったダイヤモンドステークスの時と同じような展開です。なのでこの馬はトップスピードの質が問われない展開というのが絶対条件になっています。 今回のレースでも11秒台のラップを刻んだ時に動かなかったことが好走要因だと思います、その上で周りがバテて足が上がってきた時に、この馬は最後までバテずに差し込んで来られることが大きな武器です。昨年の弥生賞でも重馬場で消耗戦の中最後に差し込んできたように、周りの馬が苦しくなればなるほど台頭してくるタイプだと思いま。

4着がムイトオブリガード、ノーザンF生産馬なので休み明けを苦にしないのはアルゼンチン共和国杯で見せていますが、今回は馬体重がプラス18キロとやや重かった感じはあります。それでも4着に好走しているので改めて持続力と心肺機能の高さを見せてきました、 終始最内を回してロスがなかったこと、軽い高速馬場だったことも好走要因だと思います。 長距離の消耗戦で4着に好走したことでステイヤーとしての資質を見せましたが、天皇賞(春)ではスローからの直線勝負になることが多いので、長距離戦でそういった展開に対応できるかどうかは未知数です。

5着がメロディーレーン、 今回の馬体重は342㎏でした、非常に小柄な馬ですが今回の消耗戦ではこの小柄な体がむしろ武器になったのではないでしょうか、馬体の大きな馬たちは自分の体が重りになってしまいます。こういった長距離の消耗戦では小柄な体が大きな武器になることを証明できました、さすがに相手が強く5着でしたが、とてもよく頑張ったと思います。怪我なく完走した上に5着で賞金まで持ち帰ったのですから、とても立派だったと思います。

6着馬タイセイトレイルで福永騎手の無理な騎乗が仇になった感じです、キセキの川田騎手を1頭分外に追いやりたかったと思うのですが、勝負どころではない2コーナーでしたし、かなり速いペースだったことを考えれば、あそこで無理に動いてしまったことが結果的にはよくなかったのでしょう。キセキについては非常に強い競馬をしていますが出遅れが目立ってきました、ゲートの練習で改善するかどうか未知数なので今後は軸にしにくい馬になってしまいました。まるでゴールドシップのような馬になってしまってたので、ゴールドシップの出走していたレースを買う感覚でキセキを取り扱った方が良いかもしれません。 

馬券の方はキセキを軸にしていたので外れてしまいました、全く展開が噛み合わなかったので手も足も出ず完敗です。

コメント

  1. ションボリルドルフ より:

    いつも楽しく読ませていただいております。
    今回、私もキセキを軸にして外しましたー。
    そしてやっぱりかと思うほど、ネット各所で川田騎手が批判されてますね。
    出遅れの事は懸念されてましたし川田騎手のせいなのかなあ?と思ってはいるのですが、いかんせん無知なのでよく分からんです。

    次回は勝てるといいですね!
    応援してます。

    • みやや より:

      ションボリルドルフさんコメントありがとうございます。
      かなりの出遅れでしたからあれを川田騎手のせいには出来ないですね、単勝1.6倍の1番人気を背負っていたら後方からというわけにもいかなかったと思います。
      次回も懲りずに頑張ります。