2019年ホープフルS 回顧。矢作厩舎の作戦勝ち。


走破時計 2:01.4  前半1000m 60.9  上り3F 36.4

まずは馬場状態ですが終日良馬場で行われましたが予想通りやや力の要る重めの馬場でした。10Rの立志Sが3勝クラスのマイル戦で1:34.1と、平均バランスのレースでしたが上がりはかなりかかっています。直線は特に痛みが激しく全体を通して標準やや重めの馬場ですが、直線はさらにコンディションが悪かったと思います。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。

逃げたのは予想通りパンサラッサでした、同厩舎のコントレイルのために澱みのないラップを踏んでいるのが分かります、 馬場を考えても平均バランスで逃げているので自分のレースはできていると思います、これでL1標識付近で一杯になってしまったのでパンサラッサの距離適正は1800m以下だと思います。 お姉ちゃんのディメンシオンもマイルで好走しているので、早くも距離適正が顕在化したのだと思います。

この澱みのないラップでコントレイルはやや離れた追走集団の先頭で進めたので、コントレイル自身もほぼ平均バランスぐらいでは走っているはずです、なのでコントレールについては心肺機能の高さも見せてきました、ヴェルトライゼンデはコントレイルのすぐ後ろからなのでこちらもまあまあの心肺機能の高さを見せました。ワーケアに関してはさらに後ろからだったので心肺機能に関しては今のところ不明です、4コーナーでもまだ我慢していましたし使える足が短い可能性も出てきました。

直線入り口では嫌や話されたラインベックが直線に入ってパンサラッサを交わしているので、トップスピードの質は高くはありませんが持続力は非常に高いものを見てています、この感じからはもっと距離が長くなった方が好走の確率が上がりそうです。

逃げたのはパンサラッサ、内からブルーミングスカイが続き外からラインベックが押し上げて2番手で先行しました。やや離れてコントレイルが追走集団の先頭やや掛かり気味、その後ろにブラックホール、ヴェルトライゼンデはコントレイルをマークする位置でその外にガロアクリークがいました。中段の後ろからディアセオリー、ワーケアはヴェルトライゼンデをマークする位置、オーソリティがその外にいました。中段からやや間隔を空けてナリノモンターニュ、ラグビーボーイ、最後方からクリノブレーブという並びでした。

逃げたのは予想通りパンサラッサでした、同じ矢作厩舎のコントレイルの為に淀みないラップを作り馬群をばらけさせることに成功しました。コントレイルは先行集団からやや間隔を空けて掛かり気味でしたが、向こう正面までには折り合って何時でもスパートができるよう外に馬を置かないポジション取りをしてきました。このポジションでレースの結果は決まってしまった感じです。

ヴェルトライゼンデのマーフィー騎手はコントレイルの後ろからマークするような形をとりました、消極的な騎乗でコントレイルの前走を見ればこれでは勝ち目がないと言わざるを得ません。 外国人ジョッキーはどうしてもギリギリまで仕掛けを我慢して差し切りを狙う傾向があるので、 ヴェルトライゼンデのようにトップスピードの質でコントレイルに見劣っていても、目標を作るレース運びをする傾向がハッキリと見えました。 

ワーケアに関してはヴェルトライゼンデを見るポジションでしたが、ヴェルトライゼンデのマーフィー騎手があまり積極的でなかったこともあり中段のやや後ろに位置してしまいました。 ラグビーボーイ、クリノブレーヴはパンサラッサのペースに対応できず離れた後方からになってしまいました。 

4コーナーから直線入り口です、ここでパンサラッサは11.9のラップを踏んでいます。ラインベックがここでやや離されて、コントレイルが2番手に上がってきます。ヴェルトライゼンデはその外から、ワーケアはヴェルトライゼンデの後ろから追走します。オーソリティはヴェルトライゼンデのさらに外から上がっていったので、かなり距離ロスがあったと思います。 オーソリティはワーケアと並んで追走していましたが、3コーナーからワーケアよりも先に仕掛けています、先に仕掛けてさらに1頭分外を回したことが、直線で交わされてしまった要因ではないでしょうか。

直線L1標識付近です、ここでパンサラッサが一杯になりコントレイルが先頭に立ちます、 これをヴェルトライゼンデが中目から、その外にオーソリティ、さらに外にワーケアが追いかけて来ます。 オーソリティに関しては3、4コーナーで先に仕掛けてさらにワーケアよりも1頭分外を回していることが交わされた要因だとは思いますが、坂の途中で交わされているのでパワーに関してやや不安が出てきました、芙蓉ステークスでは上り坂でもL1で11.5を出していますが、あの時はスローバランスでしたから苦しくなった時に坂で投げ出してしまう可能性があります。 血統は違いますがヴィブロスなんかもペースが速くなって苦しくなった時に坂に差し掛かると簡単に投げ出していました、もしかしたら同じタイプなのかもしれません。

ここで持続力を発揮してきたのがラインベックで、直線入り口ではパンサラッサに2、3馬身離されましたが、直線ではジリジリと差を詰めて差し切っています、パワーと持続力を見せてきたので、距離はもう少し長い方が合っていると思います。 

では1頭ずつ見ていきます。

1着はコントレイル、矢作厩舎のチームプレイでパンサラッサが平均バランスで澱みのないラップを刻んでくれたおかげで、馬群もバラけてスムースなレースができました。この馬自身もスタートが良くすんなりと中段の前を取ることができ、前半はやや折り合いを欠く面がありましたがすぐに折り合って、直線入り口からスムーズに加速して圧勝しました。福永騎手にとってはとても楽なレースだったのではないでしょうか。パンサラッサが作ったペースは平均バランスだったので、この馬の位置でも平均バランスの範囲内に入っているはずです、なので心肺機能の高さも見せましたし、トップスピードの質と持続力に関しては前走までで嫌というほど見せつけているので、今後に向けては好材料ばかりになりました。もちろん多頭数の皐月賞で内枠から今回のように楽なレースができるとは限らないので、内枠に入ってしまった時はまだ不安材料が残ります。現時点では距離適正を含めてこの世代のトップクラスに居ることは間違いないと思います。

2着がヴェルトライゼンデ、マーフィー騎手の消極的な騎乗でしたが、逆に言えば非常に安定した騎乗だったとも言えます。だからこそしっかりと2着を確保できたのだと思いますが、勝ちに行っての結果ではなく勝ち馬をマークする形で流れ込んだだけというのは、今後に向けてはあまり良い印象がありません、コントレイルを内に閉じ込めて自ら勝ちに行く展開になった時に、好走できるのかどうか課題が残りました。

マーフィー騎手は春も来日していて今年一年で見ても非常に能力の高い騎手であることは間違いありません、しかし他の外国人ジョッキー同様どうしても中段からの差しに拘っている感じがして、日本の競馬への対応についてまだ十分ではないと思います。ターコイズステークスのディメンシオンでも中段から進めて良くなかったように、外国人ジョッキーだからといって何でもかんでも高評価をするのは危険だなと改めて感じました。

3着がワーケア、パンサラッサが作った平均バランスを感じてルメール騎手はポジションを中段やや後ろに取りました、すぐ前にヴェルトライゼンデがいたのでマーフィー騎手を頼りすぎたきらいはありますが、オーソリティを外においてスムーズな競馬をしてきました。さすがにこのポジションではコントレイルとは勝負にならず3着確保が精一杯でしたが、パンサラッサとコントレールの矢作厩舎2頭の作戦にしてやられた、そんな感じの3着でした。右回りの影響なのか馬場の影響なのか分かりませんがアイビーS程は弾けなかったなと言う印象です。 アイビーSの前半800mが48.8なので今回の48.7は影響しなかったと思います、なのでパンパンの良馬場の方がパフォーマンスを発揮しやすいのかもしれません。

4着がラインベック、直線入り口でやや離されましたが直線に入ってからジリジリと伸びて4着を確保しました、トップスピードの質では見劣っていますがパワーと持続力、そして先行したので心肺機能の高さも見せています、この感じからも距離はもっと伸びた方が良いと思います。2000mでは道悪になった方が良いと思いますし、ダービーの方がさらに向くような気がします。

5着がオーソリティ、終始ワーケアの外を追走して3、4コーナーでは先に仕掛けながら、更に1頭分外を回していました。この距離ロスは大きかったはずで直線坂の途中で失速してしまいました、苦しくなって投げ出すという馬がいるのでこの馬も、もしかしたらそのタイプなのかもしれません。

馬券の方は的中しましたがトリガミでした、人気上位で決まってしまったので仕方のない結果ですが、今年最後のレースを的中できて良かったと思います。

コメント

  1. 素人馬券師 より:

    1年間お疲れ様でした。
    いつも大変参考にさせていただいております。貴重な情報ありがとうございます。

    サイレンススズカやディープインパクトの心肺機能やトップスピードなどお時間ある時にアップしていただけたらなぁ
    なんて思いながら2019年を振り返っています。

    • みやや より:

      素人馬券師さん、コメントありがとうございます。
      サイレンススズカにディープインパクトですか~、この2頭も懐かしい部類に入ってきましたね。
      サイレンススズカについては20年前になりますから馬場が違い過ぎて評価は難しいですね、もちろん勝ち方を考えれば心肺機能の高さは相当なはずですし、阪神や中山でも勝っているのでパワーも十分ですよね。夢の第11Rではないですが歴代の名馬たちと走らせてみたいですね。
      ディープインパクトについては種牡馬の研究でディープインパクト産駒のことを書きました、良かったら見てください。心肺機能特化型だと思います、稍重までしか走っていないのでパワーは少なかったはずですし、産駒にもパワー系のディープ産駒って少ないんですよね、母系からパワー系になった馬も居ますがそうなるとディープらしいトップスピードの質が発揮できていませんからね。気性が気性ですから心肺機能特化型と言っても逃げるわけにはいかないはずで、豊騎手がディープの良さを最大限に引き出していたんでしょうね。