2020年京王杯SC 回顧。馬場読みで騎手の差が出たレース。


走破時計 1:19.8  前半600m 35.2  上り3F 33.1

含水率 ゴール前 11.7%  4コーナー 11.2%

まずは馬場状態ですが午前中から雨が降り続いていましたが、重馬場や不良馬場までは悪化せず稍重表記でした。 走破タイムから分かるように一昔前ならば超高速馬場と言えるほどの走破時計が出ています、稍重表記でしたが馬場状態は限りなく良馬場に近いと言って良いと思います。この馬場状態をしっかりと読み切ったのが上位3頭のジョッキーで、特にレーン騎手は怖がらずに逃げて圧勝でした。


上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回、赤が2019年京王杯SCのグラフです。

2019年の京王杯SCの走破時計は1:19.4、上り3F33.8なので、あの程度の雨では馬場状態に全く影響がありませんでした。このことは10Rの湘南Sのタイムが 1:33.2、上り3F34.0、勝ち馬の上り3Fが33.5であることからも、事前に分かったていたはずです。このことをきちんと認識できていたのはおそらく上位3頭のジョッキー、中段より前にいたタワーオブロンドンのルメール騎手など数人だけ。

逃げが予想されたショウナンライズの和田騎手、今年になってスタートが良くなり近2走で先行していたストーミーシーの田辺騎手、そして先行脚質のセイウンコウセイに乗っていた内田騎手は、馬場読みが全くできていませんでした。この馬場状態を全く認識できなかったことで、1400mのGⅡとしては異例なほど遅い前半のペースでした。トップスピードの質に自信のあるダノンスマッシュ、ステルヴィオ、タワーオブロンドンがこのペースで折り合うのは分かります。 しかしショウナンライズやセイウンコウセイは、トップスピードの質がはっきりと低いにも関わらず、このペースを容認してしまうというのは非常にまずい騎乗だったと思います。

東京競馬場の芝コースは数年前から非常に水はけが良く、ちょっとやそっとの雨では全く悪化しません、これは何度も見てきた光景で、特に美浦所属の騎手は分かっていることだと思ったのですが、思慮が浅いのか全く考えなしに乗っているようです。これでは外国人ジョッキーとの差が開くばかりで、日本人ジョッキーの地盤沈下が止まりそうにありません。

逃げたのはダノンスマッシュでした、内からグルーヴィットが続きその外にセイウンコウセイ、中段の前からレッドアンシェル、タワーオブロンドン、ステルヴィオ、中段からライラックカラー、ショウナンライズ、エントシャイデン、中段の後ろからストーミーシー、ライラックカラー。後方からになったのがラヴィングアンサー、ドーヴァー、ケイアイノーテックという並びでした。

スタートが良かったのはダノンスマッシュ、グルーヴィット、セイウンコウセイ、レッドアンシェル、ショウナンライズも五分のスタートでした。ダノンスマッシュはそのまま押し出されるように逃げ態勢に入り、それにグルーヴィットが続きました。セイウンコウセイはダノンスマッシュのスローペースを容認して追走、レッドアンシェルがグルーヴィットの後ろから進めます。スタートがあまり良くなかったタワーオブロンドンがリカバリーして中段の前まで上がり、その外にステルヴィオも続きました。スタート5分に出たショウナンライズはなぜか全く逃げる気を見せず、好位を取りに行くでもなく中段まで下げてしまいました。ストーミーシーもスタートでやや遅れましたが、この時点で田辺騎手は先行することを早々に諦めたような騎乗でした。

このレースは結果的に序盤の位置取りが全てで、騎手の馬場認識がモロに出てしまったレースです、8着に凡走してたタワーオブロンドンのルメール騎手も含めて、上位の騎手はさすがの馬場読みを見せたということだと思います。特に再三名前を挙げている和田騎手、田辺騎手、内田騎手については全く擁護することができず、現在の成績の悪さを考えても今後も高い評価は絶対にしないほうがいいと思います。

4コーナーから直線入り口です、ダノンスマッシュがスローペースで進めているためこの時点では馬群が凝縮しています、ここからL3区間に入りますが0.6の加速で、10.9のラップを踏んでいます。隊列に大きな変化はなくスローバランスを容認して各馬が、スムースに直線に入っていきます。

直線L2標識付近です、ダノンスマッシュがL3で10.9のラップを踏んだわりに、後続がばらけずに隊列が大きく崩れていません、10.9のラップにほとんどの馬が反応できるほど前半が遅かったということです、トップスピードの質が低いはずのセイウンコウセイまでがしっかりと追走していることを見ても、レーン騎手が作ったペースがいいかに遅かったかがわかります。前半があまりにも遅かったためにこの時点では脱落する馬はいませんでした。

直線L1標識付近です、L2でもダノンスマッシュは10.9のラップを踏んでいますが、ここでも大きく遅れる馬はいませんでした。L1標識を過ぎたあたりでレッドアンシェルが一杯になり、セイウンコウセイはトップスピードの質で見劣りタワーオブロンドンからやや遅れました、しかしここから粘りを発揮して最終的にはタワーオブロンドンを逆転しています。距離適性に不安のあるセイウンコウセイがタワーオブロンドンを逆転できたのは、前半がかなり遅かったからだと思います。

前に居た3頭の隊列はこのまま崩れることなくダノンスマッシュが1着、ステルヴィオが2着、グルーヴィットが3着でした。外からラヴィングアンサーが上がり最速32.4で伸びてきましたが、アタマ差届かず4着まででした。晩春Sでも自身スローバランスから上り32.7を叩き出して勝ち切っていますが、今回はGⅡで前にいた3頭に33秒台前半の足を使われては届きませんでした。 

では一頭づつ見ていきます。

1着はダノンスマッシュ、スタートをポンと出たことでレーン騎手も下げることなく逃げてしまいました、馬場状態を完璧に読み切った素晴らしい判断だったと思います。ここ2年は1200mばかりを使われてきましたが、NHKマイルCで0.4差7着があるので、距離不安は全くありません。今回はレーン騎手の好判断が全てだったと思います。ロードカナロア産駒なのでキンカメ系、5歳になるので蓄積疲労の不安がありましたが、2着のステルヴィオも含めて不安は杞憂に終わりました。

2着はステルヴィオ、ダノンスマッシュよりはスタートが良くありませんでしたが、それでも悪くはなくすぐに中段の前に取り付けました、これも川田騎手の好判断だと思います。昨年の大阪杯以降リズムが悪かったのですが、今回2着に好走することができもう一花咲かせることができるかもしれません。この馬もロードカナロア産駒でキンカメ系、5歳で蓄積疲労を不安視しましたが杞憂に終わりました。

3着がグルーヴィット、トップスピードの質はダノンスマッシュやステルヴィオにはかないません、なのでスローバランスになってしまった時点でこの馬の展開ではありませんでした。相変わらず反応が悪く非常にズブイ面を見せています、こういう馬は継続騎乗で結果を出すと思うので、コロコロ乗り替わらない方がいいと思います。

4着はラヴィングアンサー、晩春Sで自身スローバランスから上がり3F32.7を叩き出した時と同じような展開でした、しかし今回はGⅡで相手が悪かったようです。この馬はトップスピードの質は持っていますが前半が早くなってしまうとそこまで速いラップは踏めません、前走は1200mでバテ差しを決めているように、どちらかといえば前が止まるような展開で台頭してくると思います。

5着がセイウンコウセイ、この馬についてはハッキリと距離不安がありました、前半600m35.2とこの馬にとっては歩いているようなラップなので、最後まで粘りを見せることができたのだと思います。距離不安を懸念してスローバランスを容認したのか、 それとも前走の幸騎手同様に馬場を読めなかったのか、おそらく後者だと思います。シルクロードステークスの内容からも7歳でもまだまだ元気なので、今後も1200mでは十分活躍できると思います。

6着はケイアイノーテックでした、前半があまりにも遅く1400mらしいレースにならなかったため、今回は度外視して良いと思います。良馬場でバテ差しが利く展開になった時に台頭してくると思います。7着のストーミーシーは田辺騎手なので判断ミスでの凡走、8着のタワーオブロンドンは昨年の蓄積疲労による凡走ではないでしょうか、簡単に復活しそうもないのでこのまま引退してしまいそうです。

馬券の方は軸にしたグルービットが3着だったので惜しくもハズレてしまいました。ダノンスマッシュとステルヴィオについて蓄積疲労を不安視しましたが、この結果を見る限りまだ大丈夫なのだと思います。この2頭はロードカナロア産駒の第1世代なので、今後どこで蓄積疲労が表面化するのか、それともキングカメハメハからロードカナロアを挟んだことで蓄積疲労は起こらないのか、そのあたりを今後見極めていきたいと思います。