2020年ヴィクトリアM 回顧。怪物に不安などない。


走破時計 1:30.6  前半800m 45.6  上り3F 33.9

含水率 ゴール前 16.9%  4コーナー 17.5%

まずは馬場状態ですが日曜は良馬場で、超高速馬場になっていました。走破時計1:30.6は昨年の1:30.5と遜色ないタイムでした。しかもアーモンドアイは全く追うことなく馬なりでこのタイム。昨日の京王杯SCでもかなり速いタイムが出ていたように、現在の府中は水はけが非常に良く、ちょっとやそっとの雨では全く悪化しません。いわゆるコンクリートのような硬い馬場という話がありますが、馬場の硬度は昔と変わっていないというデータもあるので、むしろ反発するような馬場になっている感じです。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回、赤が2019年ターコイズSのグラフです。

今更アーモンドアイの強さをラップタイムで研究してもあまり意味がないので、本命に推したコントラチェックの凡走を考えてみたいと思います。ラップタイムを比べれば一目瞭然で、今回は中緩みがありませんでした。トロワゼトワルが終始11秒台前半のラップを刻み続け、それを2、3馬身空けて追走したことで、L4,L3で 息が入らずに直線L2過ぎに心肺機能が一杯になりズルズルと後退してしまいました。トロワゼトワルとは非常に相性の悪いことがはっきりしました。この感じからマイルよりも1200mへ短縮した時に、高いパフォーマンスを発揮するのではないかと思います。今回のレースは1200m通過地点で1:07.9、コントラチェックも1分8秒台前半で通過しているはずです、スタートは相変わらず速いので1200mならば、前半から行くだけ行って押し切ってしまうだけのスピードを持っていると思います。

アーモンドアイのラップタイムについて少し触れておけば、L3から目視手動計測ですが11.0-10.3-11.6で32.9と、これを持ったままノーステッキで軽く促しただけで叩きだしてきました。後方で脚を溜めていたわけではなく、中段の前でこの足を使われては、アーモンドアイよりも後ろにいた馬には全くチャンスがありませんでした。昨年の天皇賞(秋)のような展開になっているので、アーモンドアイにとっては非常にやりやすいラップ推移だったと思います。アーモンドアイ自身の前半800mは46.0くらい、後半は44.6で纏めています、それも楽に。 つまりスローバランスなんですね。圧勝した昨年のも天皇賞(秋)59.0-57.2とスローバランスでL4からペースが上がっています。実は2018年のジャパンCの時もL4からペースが上がり、 キセキを追走して楽に差し切っています。心肺機能だけでなくあらゆる能力がトップクラスで同居しているアーモンドアイなので、超高速馬場とはいえ前半800m46.0を楽に追走して、L2ででちょっと促しただけで一気に加速する瞬発力の高さを存分に見せつけましで。

逃げたのはトロワゼトワル、2番手にコントラチェック、中段の前からサウンドキアラ、メジェールスー、中段のやや前からアーモンドアイ、ダノンファンタジー。 中段を形成したのがシゲルピンクダイヤ、ノームコア、ラヴズオンリーユー、中段やや後ろからシャドウディーヴァ、プリモシーン、スカーレットカラー。 後方からになったのがビーチサンバ、トーセンブレス、アルーシャ、サトノガーネットといいう並びでした。

スタートが良かったコントラチェックですがトロワゼトワルが行く気を見せたことで控えて2番手でした、3番手に外からサウンドキアラが上がり、内からメジェールスーが中段の前。コントラチェックにとってトロワゼトワルがスタートを決めてしまったことは大きな誤算だったかもしれません、一本調子のペースでぐんぐん先行したトロワゼトワルに対し、コントラチェックはサウンドキアラにマークされる形になりかなり苦しかったはずです。

抜群のスタートを切ったのはアーモンドアイで、行きたい馬を行かせて中段やや前から折り合いも付いていました。その内に居たのがダノンファンタジーでシゲルピンクダイヤがこれに追走する形でした。スタートがあまり良くなかったノームコアはリカバリーしてアーモンドアイのすぐ後ろまで上がりました、結果的にこの判断が非常に良く、3着に入れたのはこの位置取りがあったからだと思います。 

スタートは良かったラヴズオンリーユーですが、さすがに二の足でやや見劣り、ダノンファンタジーに前に入られてしまった時点で、少しポジションを下げてしまいました。スタートが良くなかったのがビーチサンバとプリモシーンで、ビーチサンバは後方から、プリモシーンはなんとかリカバリーをしてノームコアの後ろあたりまで上がりました。

4コーナーから直線入り口です、トロワゼトワルがペースを緩めることなく直線に入っていくところ、コントラチェックが2馬身ほど間を空けて追走します。サウンドキアラとアーモンドアイは馬なりで追走、他の馬も隊列に大きな変化なく直線に入っていきます。4コーナーから直線入り口では馬群が縦に伸びています、これはトロワゼトワルがペースを落とさなかったために馬群が凝縮しなかったからです。

直線L2標識付近です、トロワゼトワルが先頭で粘っています、コントラチェックは豊騎手がしきりに促し鞭も入れていましたが、全く反応できずに追走するのが精一杯でした。サウンドキアラとアーモンドアイはまだ仕掛けずに馬なりで追走、その後ろからノームコアとダノンファンタジーはやや手が動いていました。メジェールスーが一杯になり下がってしまい、プリモシーンはスカーレットカラーの外に出してきますが、反応が悪くなかなかエンジンがかからない感じでした。中段から後ろの馬はこの時点でも手は動いていましたが、アーモンドアイのラップタイムで11.0くらいですから、追い出しても差が詰まるどころか開いてしまった感じです。

 直線L1標識付近です、L2区間でアーモンドアイは10.3くらいを叩き出して、楽にトロワゼトワルの前に出ます。サウンドキアラは並ぶ間もなくアーモンドアイに交わされてしまいました、アーモンドアイのすぐ後ろにいたノームコアもL2区間で一気に引き離され追走することができません。アーモンドアイはノーステッキでルメール騎手が軽く促しただけで、これだけの加速を見せてきます。分かっていましたが改めてあらゆる能力が桁違いに高いということを見せつけられました。

L2区間でコントラチェックが一杯になってしまい、ダノンファンタジーとノームコアが交わして行きます、ダノンファンタジーはL1標識を過ぎてからノームコアにジワっと離されてしまったので、距離適性が短くなっている可能性もあります。粘りに粘ったトロワゼトワルを最後の最後のノームコアが交わして3着を確保しました、このあたりは京成杯AHを好タイムで逃げ切ったトロワゼトワルと、昨年の優勝馬ノームコアの適性がぶつかった部分で非常に見応えのある3着争いでした。 

では1頭ずつ見ていきます。

1着はアーモンドアイ、スタートを決めてしまった時点で勝負あったと思えるようなレースでした、おそらくこの馬場状態では前半800m45.6で前が飛ばしましたが、自身は46.0でスローバランス、絶対的なラップタイムでもまだ心肺機能には余裕があるので、仮に1200mのGⅠに出走したとしてもあっさりと勝ってしまうのではないでしょうか。心肺機能、パワー、瞬発力、トップスピードの質、持続力と全ての能力を最高レベルでもっている信じられない競走馬です。唯一の弱点が疲労に弱いと言う体質ですが、ローテーションを工夫することでいくらでも克服できるので、レースにおいては全く弱点がありません。今回はドバイ遠征開け、しかもレースを走らずにただ輸送しただけという変則的なローテーションでしたが、昨年ドバイに入っているので海外輸送は経験しています、この経験が今回非常に良い状態で走れた要因の一つではないでしょうか。

2着はサウンドキアラ、大外枠に入ってしまいましたが怖がらずに先行したことで2着を確保しました、今季絶好調の松山騎手らしい非常に良い騎乗だったと思います。同時に川田騎手の気持ちがよくわかったのではないでしょうか。今年になって重賞3連勝していますが、母系にアグネスデジタルが入っていることもあり、全く使い減りするようなことはありませんでした。昨年は後方からになり届きませんでしたが、先行したことでまあまあのトップスピードの質と持続力を十分に生かすことができました、これも前が止まらない馬場を読んだ松山騎手の好判断だと思います。さすがに安田記念に登録してきたら疲労の不安が出てきますが、秋にマイルチャンピオンシップに出てくるようだったら楽しみになり。

3着がノームコア、昨年の優勝馬ですからレース適性は非常に高く、スタートがあまり良くありませんでしたが、そこは今季好調の横山典騎手がうまくリカバリーしてアーモンドアイの直後につけました。この序盤の位置取りが3着の大きな要因だと思います。上り3Fは昨年と全く同じ33.2でした、この馬の全力は出しましたが、スタートでやや遅れてしまったことで序盤の位置取りが1頭分後ろになってしまったこと、強い馬が自身よりも前にいたことで何とか3着を確保したというレースでした。

4着がトロワゼトワル、 京成杯AHで1:30.3というとんでもないタイムをたたき出した馬ですが、近2走は休み明けで凡走していました。今回は休み明け2走目で馬体重もベストの状態まで絞ってきました。スタートを決めてすんなりと逃げられたことで、京成杯AHと同じ展開に持ち込んで惜しくも4着でした。ゴール前に上り坂があれば3着を死守できたかもしれません。今後も休み明けでは不安ですが、休み明け2走目の時に買いたい馬です。

5着がダノンファンタジー、ノームコアと並んでL1標識を通過しましたが、 そこからノームコアに見劣りトロワゼトワルも差せずに5着でした、L1でノームコアにはっきりと見劣っているので、距離適性は1400mベストになったかもしれません。スタート良くすんなりと先行できるので、いずれは1200mでも活躍できそうな気がします。

6着がシゲルピンクダイヤでした、前走は全くレースになりませんでしたが今回は中段あたりを追走してなんとか6着まで持ってきました、ただしサウンドキアラやノームコアにはかなり離されていますし、ダノンファンタジーもレースぶりからマイルはやや長いはずで、後塵を拝してしまったのは印象が良くありません。7着がラヴズオンリーユーで道中追走に苦労しているようなレースぶりだったため、距離が短かったのだと思います。この馬は宝塚記念で見直しが必要でしょう。プリモシーンは8着でした、スタートが良くなく中段よりも後ろからになってしまった段階で勝負権がありませんでした、序盤にリカバリーして足を使ってしまったらその時点で終了なので、スタートが良くなかった時点でどうにもならないレースでした。シャドウディーヴァは上り3F33.4では届かず、東京新聞杯の時も同じような上がりタイムだったので、体調に問題はなく単に展開が合わなかったのだと思います。スカーレットカラーは直線入り口ではノームコアのすぐ後ろにいましたが、そこから全く反応できずに凡走してしまいました、今回は馬体重がマイナス8㎏、これが影響したのかもしれません。

馬券の方はアーモンドアイを疑ってしまい箸にも棒にもかかりませんでした。