2020年根岸S 回顧。好調矢作厩舎恐るべし。


走破時計 1:22.7  前半3F 35.0  上り3F 35.4

まずは馬場状態ですが良馬場まで回復していました、含水率はゴール前で4.7%、4コーナーで5.7%でだいたい想定の範囲内です。昨年よりは水分を含んでいたため脚抜きの良いダートになっていて、かなり速い時計が出ました。特にモズアスコットの上がり3Fは34.7と芝並の時計が出ています。根岸ステークスといえばブロードアピールですが、あの時は1200mでしたが上がり3Fが34.3でしたから、モズアスコットとスマートアヴァロンはブロードアピールに匹敵する末脚を発揮したことになります。ただモズアスコットとスマートアヴァロンの末脚は全く同じ性質のものではなく、モズアスコットがL2から瞬発力を生かして一気にスピードを上げたのに対して、スマートアヴァロンはL3から長くいい脚を使ってL1もさほど落としていないというラップを踏んでいます。このあたりはラップのグラフで詳しく書きます。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回のレースラップ、赤は2019年欅Sのレースラップです。

前半3F35.0で後半の3Fが35.4なのでほぼ平均バランスでした、ただグラフを見ていただければわかるとおり強烈な中緩みが発生しています。4F目に12.3のラップを踏んでいて、これはドリームキラリが59㎏を背負って2着に好走した2019年欅Sの時よりも遅いラップになっています。つまり坂井騎手が落とし過ぎたというのが今回のレースのラップ推移だと思います。ドリームキラリは平均バランスや中緩みを作って後半もほどほどのペースを維持するというのが得意パターンです、今回は休み明けだったために下位に沈んでしまいましたが、このラップ推移はドリームキラリが好走するときのパターンに合致しています。たださすがに4F目で12.3まで落とすのはやり過ぎで、ここまで落としてしまうとトップスピードの質を持っている馬たちに完全に見劣ってしまいます。

今回勝ち切ったモズアスコットはとても高いトップスピードの質を持っていることを改めて証明しました、このグラフのL2のラップはコパノキッキングのものなので、モズアスコットはL2で4馬身ほどあったコパノキッキングとの差をL1標識までに1馬身ほどにしていますから、モズアスコット自身のL2のラップは11.2くらいは叩きだしているはずです。L1でさらに0.2秒の差をつけているのでL1でも11.6くらいは出していると思います。

後方から差し込んできたのがスマートアヴァロンで、こちらの上がり3Fはモズアスコットよりもさらに速く34.6でした。内容的にはモズアスコットよりもL3から早めにトップスピードに乗せて、それを持続したことで速い上がりを使ってきたというラップでした。スマートアヴァロンの上がり3Fの内訳ですが、目視手動計測で11.5-11.4-11.5とトップスピードの質ではモズアスコットに見劣っていますが、持続力を生かしてまあまあのトップスピードの質を長く維持することで好走してきました。 

モズアスコットのトップスピードの質がいかに高いか、スマートアヴァロンが高い持続力でまぁまぁのトップスピードの質を長く維持したかは、ダノンフェイスとの関係を見ればよく分かると思います。ダノンフェイスと比較すればモズアスコットは当然ですが、スマートアヴァロンもトップスピードの質ではまさっています、決してダノンフェイスのトップスピードの質が低いわけではありませんが、この2頭と比べてしまうと見劣ってしまいます。なのでダノンフェイスは長期休養前のようにある程度の位置で先行したほうが成績は良くなるのではないでしょうか。

逃げたのはドリームキラリでした、コパノキッキングが抜群のスタートを決めて2番手、ヨシオが外から3番手で先行します。スタートの良かったワイドファラオは一歩引いて中段の前から、いやや間隔をあけて中段のやや前からテーオーヘリオス、ミッキーワイルド、テーオージーニアスとダノンフェイス、ノボバカラが中段から。中段の後ろからブルベアイリーデ、スタートが良くなかったモズアスコットがリカバリーしてその外から。後方からになったのがワンダーリーデル、スマートアヴァロン、アードラー、カフジテイク、サングラスという並びでした。

抜群のスタートだったコパノキッキングが先頭に立ちますが、押して押してドリームキラリが外からコパノキッキングを叩いて逃げ体制を築きます。コパノキッキングはマーフィー騎手なので当然逃げ争いはしません、かなり楽な手応えで先行しているのでコパノキッキングのスピードは高いものがあると思います。ワイドファラオはスタート良かったのですが、一歩引いて先頭を行く3頭を見る位置、その後ろ中団やや前からテーオーヘリオス、テーオージーニアスが最内、その外にミッキーワイルドが居ました。 流れを考えても悪い位置ではなかったのでミッキーワイルドは体調がイマイチだったのだと思います。スタートで出して行かなかったノボバカラが中段からでした。

勝ったモズアスコットがスタートの悪さをリカバリーして中段に取り付いていました、 中段までリカバリーしたのは好判断だと思いますが、多少なりともここで足を使っているはずで中緩みがなかったら、果たしてモズアスコットが勝てたかどうかは分かりません。 

4コーナーから直線入り口です、ドリームキラリが中緩みを作ってL3が11.9だったこともあり、コパノキッキングがここでドリームキラリに並びかけます。ヨシオの外からワイドファラオも並びかけてダノンフェイスがこれに続きます。この外からモズアスコットがスムースに直線に入ってきて、スマートアヴァロンがモズアスコットから2馬身ほど離れて追走します。ミッキーワイルドはコパノキッキングに追走して直線に入ります。

ワンダーリーデルは最内を回って直線外に出すためにここから大きく進路変更をします、ブルベアイリーデがやや前が狭くなってコースがありませんでした、前走でも同じようにコース選択に手間取っているので、この馬は直線スムースな方が良いと思います。カフジテイクは外からスムーズに直線に入ってきますが、この時点でスマートアヴァロンからやや離されています。

直線L2標識付近です、ドリームキラリが頑張っていますがコパノキッキングは楽な手応えで並びかけここから追い出しをかけます。2列目にテーオーヘリオス、ミッキーワイル、ヨシオ、ワイドファラオが並んで前を追います。ワイドファラオの後ろからダノンフェイス、モズアスコットが楽な手応えで並びかけています。スマートアヴァロンはモズアスコットの1馬身ほど後方から迫ってきます。

内から外へ大きく進路変更したワンダーリーデルはスマートアヴァロンの後ろでさらに外、カフジテイクがこれに続く格好です。アドラーは内を選択していました。

直線 L1標識付近です、 ドリームキラリが一杯になり後退。コパノキッキングが抜け出したところをミッキーワイルドとワイドファラオがなんとか追いすがります、 モズアスコットがダノンフェイスとスマートアヴァロンを一気に引き離して、ワイドファラオに並びかけたのがこの地点でした。L2で強烈なトップスピードの質と瞬発力の高さを見せています、これにはダノンフェイスとスマートアヴァロンも対応できるわけがありません。

ここからモズアスコットがコパノキッキングを捉えて一着、2着はコパノキッキングが粘り切りました、3着に入ったのがスマートアヴァロンでL1もさほど落さなかったことで ダノンフェイスを振り切って、初めての重賞挑戦で3着を確保しました。L1で垂れてしまったのがワイドファラオで、58㎏が最後の最後に効いてきたという感じでした、予想の段階でも言いましたが今年の根岸ステークスが1月に開催されていれば57kgで出走できたことを考えると、なんとも運のない負け方だと思います。 

11着と期待を裏切ってしまったミッキーワイルドですがプラス8㎏と本調子ではなかったようです、ノボバカラも中段から流れ込むだけでしたが上り3F35.1を使っているので決してこのクラスで力が足りないというわけではないと思います、もう少し前で競馬できていればもっと良い成績だったのではないかと考えています。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はモズアスコット、前走から間隔があいたことで仕上がりに不安がありましたが、好調の矢作厩舎がしっかりと仕上げてあっさりと勝ち切ってしまいました。初めてのダート戦になりますが高いトップスピードの質を見せて、 格の違いを証明した格好でした。スタート出遅れましたがすかさずリカバリーして中段を確保、そこから中緩みに助けられて息を入れられて、直線では異次元のトップスピードの質を見せ差し切ってしまいました。安田記念などを見れば心肺機能の高さは証明しているので、中緩みのない消耗戦になったとしても対応できるのではないかと思います。ただ芝でも近走は1600mが長くなっているので、今回1400mだったことは距離適性を考えるとかなり嵌ったなという印象もあります。次走への期待が膨らむ勝利ですが、1F延長を考えるとやや不安が増してきます。ルメール騎手のダート複勝率が5割を超えているので、印は回しましたがここまで強いとは、ここまでダート適性が高いとは、また間隔をあけてしまうと良くない馬をここまで仕上げてくるとは全く予想できませんでした。

2着はコパノキッキング、マーフィー騎手がかなり積極的なレースをしていて驚いたのですが、スタートが抜群によく持ったまま楽に先手を取れました、外からドリームキラリが押して押して上がってきたので先頭は譲りましたが、2番手でしっかりと折り合い直線でも楽に抜け出し勝ち切るかというところで、モズアスコットに刺されています。1200mがベストで1400mはギリギリ、マイルははっきりと長いと思います。トップスピードの質に関してはこの馬も高いものを持っていますが、今回は2番手で先行したこともありL2でモズアスコットに大きく見劣ってしまいました。 自在の脚質でスタートも良い上に、58㎏を背負っても重賞で好走出来る安定感はとても高く評価できます。

3着がスマートアヴァロン、後方からレースを進めましたが直線入り口では中段の後ろに取り付いて居ました、これはドリームキラリが中緩みを作ってくれたからで、中緩みのない平均バランスやスローバランスでは届かなかったと思います。初めての重賞挑戦でしたが展開も嵌りしっかりと3着を確保したのは高評価です。血統的にも1200~1400mまでだと思うので、この距離で展開がハマれば今後も好走できると思います。

4着がダノンフェイス、直線ではモズアスコットとスマートアヴァロンにはっきりとトップスピードの質で見劣っているので、このクラスではもう少し前で競馬をしたほうがいいと思います。長期休養を挟んでからいまいちピリッとしませんでしたが、徐々に良くなってきた感触があります。今回は中段からレースができたのでもう少し前でレースができれば、まぁまぁのトップスピードの質と高い持続力を活かせると思います。

5着はワイドファラオ、先行勢を見る位置でレースを進めましたが、直線L1で苦しくなってしまいました、これが58kgの影響だと思います。再三書きましたが1月開催であれば57kgで出走できたことを考えると、運がない負け方だと思います。 初めての58㎏でモズアスコットから0.5差ならまあまあの評価はして良いと思いますし、ダートスタートでしたがしっかりとスタートを決めて先行できたので、今後には繋がったと思います。

逃げなかったノボバカラは7着と中途半端な着順でしたが、逃げていればなと思わせるような、なんとももったいないレースでした。本命にしたミッキーワイルドはプラス8 kg だったこともあり本調子ではなかったのだと思います、休み明けから好走するロードカナロア産駒ですが、厩舎によってはひと叩きしてからと考えているのかもしれません。肉体的な疲労よりも精神的な疲労が大きく影響するので、今回凡走したことで次走は好走する可能性が残りました。

馬券の方はミッキーワイルドの1頭軸で買ってしまい、縦目を喰らいました。ミルコを信用したのですが、どうも今は1頭軸にする程は信用できそうにありませんね。二頭軸にしていれば万馬券だったので非常に悔しい、また何度も同じミスを繰り返してしまい情けないやらで落ち込んでいます。来週からは三連複二頭軸流しを徹底して、しっかりと的中を目指したいと思います。