2020年安田記念 回顧。反動が出ても2着のアーモンドアイは強い。


走破時計 1:31.6  前半800m 45.7  上り3F 34.3

含水率 ゴール前 20.3%  4コーナー 20.1%

まずは馬場状態ですが稍重で行われました、8R3歳以上1勝クラス1400mが1:21.5、9RホンコンJCTが2勝クラスの2000mで2:00.2と標準的な馬場状態だったと思います。お天気も良く風も弱く吹いていたので、当然ここからさらに馬場は乾いて行ったはずです、東京競馬場は内側から乾いていく傾向があるので、直線のインコースの方が伸びるかと思いましたが、意外にも外の方が伸びていました。 

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回、赤が2019年の安田記念のグラフです。

予想の段階で想定したとおり中緩みが発生しました、L4で11.6迄ラップが落ちています、これで中段よりも後ろにいたグランアレグリアやケイアイノーテック、インディチャンプ、アーモンドアイなどが前段に取り付いてきました。 4コーナーでは馬群がかなり凝縮していて、外をスムースに回したグランアレグリアが突き抜けたのはこのためでしょう。 

逃げた三浦騎手がレースを作りましたが、馬場状態を考えどうしても中緩みを作ってしまうという展開になっています、ダノンスマッシュの距離適性にも不安を感じていたためだと思いますが、東京競馬場の稍重表記というのは、よほどのことがない限り重くならないことは過去に何度も見ています。これは三浦騎手だけに限った話ではありません、ほとんどの騎手が馬場状態の認識が上手くできないことを何度も見せています。

ダノンスマッシュは今回3頭出しのダノックスの関係馬の1頭です、中緩みができて良いのはダノンプレミアムですから、レーン騎手を配してきたようにダノン3頭の中の本命はプレミアムだったのかもしれません。中緩みができてしまい11.6から11.0へのの加速が問われてしまうと、当然このようにボロが出てしまうのがダノンキングリーでした、皐月賞でも直線入り口で前が壁になり一瞬待たされたことで3着、ダービーでは瞬発力の問われない消耗戦のようなラップ推移になったことで2着に突っ込んできました。今回はトップクラスのマイラーが揃ったレースで、苦手な瞬発力が問われてしまったために凡走したという事でしょう。 

逃げたのはダノンスマッシュ2番手にミスターメロディ、前から3列目中段の前を取ったのがダノンプレミアム、スタートを決めたアドマイヤマーズ、控えてしまったセイウンコウセイでした。中段のやや前からダノンキングリーが続き、外からスタートを決めたヴァンドギャルドが良いポジションを取りました。ここで中段にスペースが生まれ、グランアレグリアが中段を一頭だけゆったりしたスペースで追走していきます。その後ろからスタートを決めたインディチャンプがじわじわとポジションを下げて行きました、スタートがイマイチだったアーモンドアイ、ペルシアンナイトが続き、後方からになったのがノームコア、ケイアイノーテック、クルーガーという並びでした。 

なぜか逃げなかったセイウンコウセイですが、おそらく距離不安を感じて控えたのではないでしょうか。控えて良さが出ないのは高松宮記念でわかっているはずなのですが、馬の特性を理解しているのかしていないのか疑問に思う騎乗でした。スタートが良かったのはアドマイヤマーズとヴァンドギャルド、この2頭はスタートに大きな不安を抱えていたので、本番で良いスタートが切れたのは驚きでした。スタートが良かったことでプラスになったのはアドマイヤマーズ、逆にスタートが良くてマイナスになってしまったのがヴァンドギャルドでした。

 1着のグランアレグリアは五分のスタートからポッカリと空いた中段のスペースを取れました、2着のアーモンドアイはゲートの中でそわそわと動いていて、タイミングが合わず出遅れています、3着のインディチャンプはスタート五分に出ましたが徐々にに下げて中段の後ろからです。グランアレグリアが位置した中段ですが、周りに馬がいないポッカリと空いたスペースを取ることができました。これはアーモンドアイがスタートで出遅れたことで、内のインディチャンプがアーモンドアイを牽制するように中段の後ろまで下げて行ったこと、8枠のダノンスマッシュが逃げ、ヴァンドギャルドもスタートを決めて中段の前に位置したことで、大きなスペースができました。朝日杯FSやNHKマイルCで馬群の中での気難しさを見せたグランアレグリアにとって、道中ストレスフリーの状態で進められたことがとても大きな勝因だったと思います。

アーモンドアイがゲートの中でそわそわとしていたのは、ロードカナロア産駒特有の前走の反動ではないかと思います、加えて奇数馬番で先入れだったためにゲートの中で長く待たされたことも、アーモンドアイの精神状態を悪化させたのではないでしょうか。五分のスタートを切りながらアーモンドアイをけん制するためなのか、下げて行ってしまったインディチャンプの位置取りには大きな疑念があります、 下げずにダノンプレミアムの直後の位置を取っていれば、2着はあったのではないかと思っています。この辺りは福永騎手がアーモンドアイを意識し過ぎたき騎乗をした感じです。

スタートで気になったのはノームコアです、高松宮記念でも遅れていましたし、前走のヴィクトリアMでもスタートがイマイチでした、2019年富士Sでもスタートが良くなかったので、今後は中団よりも後ろからのレースが増えるかもしれません。ヴァンドギャルドとアドマイヤマーズについてはタイミング次第ということなのかなと。

4コーナーから直線入り口です、ダノンスマッシュがまだ頑張っています、そこにミスターメロディが並びかけ、アドマイヤマーズがさらにミスターメロディーを交わす進路を取ってきます。 この地点で11.6迄ラップが落ちているので馬群が凝縮しています、外からグランアレグリア、ケイアイノーテックがスムースに上がってきているので、グランアレグリアのL4は11秒台の前半だったはずです、この勢いを殺さないまま直線に入ってきました。 アーモンドアイはグランアレグリアのすぐ後ろまでポジションをあげます、内を回したインディチャンプも、コーナーワークを利用してダノンプレミアムの直後まで押上てきました。後方からになっていたノームコアもこの中緩みを利用して中段に取りつき、アーモンドアイの直後を取りました。

直線L2標識付近です、グランアレグリアが先頭のダノンスマッシュに並びかけて、L2部分でやややインコースへ入って行きます。後ろとは差があったので、この動きで他馬に迷惑をかけることはありませんでした。レースラップはL3から11.0なので、グランアレグリアのL3は目視手動計測ですが10.8くらいのはずです、L4で外からスムーズに中段に取り付いているので、グランアレグリアはこれでも瞬発力は問われていません。

コースがなくなり待たされてしまったのがインディチャンプでした、前のミスターメロディの伸びがイマイチで、外にアドマイヤマーズがいたためこの部分でゴーサインが出せませんでした、アドマイヤマーズが右に寄れて進路が空いてから、インディチャンプはアドマイヤマーズの前に出てここからやや右へ寄れて行きます。

ここで反応がイマイチだったのがアーモンドアイとダノンキングリーです、アーモンドアイはもともとパワーに関してはそれほど高い評価をしている馬ではありませんが、絶好調ならばこの時点でグランアレグリアに見劣るということはないはずです。 直線入り口でグランアレグリアに出し抜かれるように差が開いてしまったことで、このスペースにケイアイノーテックが入ってしまい、ケイアイノーテックの後ろで待たされることになりました。 ダノンキングリーも瞬発力で見劣り、ダノンスマッシュやミスターメロディとの差を詰めていくことができないばかりか、外からスムーズだったグランアレグリアには、並ぶ間もなく交わされてしまいました。

外からノームコアもスムースでしたがエンジンのかかりが遅く、ここでグランアレグリア、アーモンドアイにも引き離されてしまいます。中緩みができてしまうとどうしても瞬発力が問われ、この馬向きの展開にはならないのだと思います。逆に中緩みから瞬発力で勝負を決めたいダノンプレミアムが全く伸びませんでした、昨年の天皇賞(秋)2着の内容を考えると、 海外帰りの体調不安が出たとしか考えられません。

直線L1標識付近です、L2でも目視手動計測ですが10.9は出ているグランアレグリアが、勝負を決めてしまうほどのトップスピードを見せつけました。コースが空いてから伸びてきたインディチャンプがダノンスマッシュを交わして2着に上がりますが、外からアーモンドアイが自力の違いで襲いかかってきます。最後に半馬身ほどインディチャンプを交わして2着を確保、外からノームコアがバテ差しの形で追い込んできて4着に入りました。

ダノンスマッシュがインディチャンプから0.3秒差なので、この結果からもダノンスマッシュの距離適性はマイルまで対応可能だということがわかります。ダノンキングリーについてはL2以降も伸びがイマイチなので、マイルは短いかもしれません。

では1頭ずつ見ていきます。

1着はグランアレグリアでした、いつも通りのスタートからポッカリと開いた中段を確保して、中緩みを利用して外から勢いを殺さないまま、直線弾けるように突き抜けました。 桜花賞で見せたようなレース振りで、瞬発力を問われない展開になったことが大きな要因だと思います。元々マイルは得意にしていましたし、稍重でしたが府中であることもマイルまで対応できた要因かなと思います。マイルCSで好走するようならば、ディープインパクトとタピットの組み合わせの、距離適性を考え直す必要はあると思います。前走の高松宮記念を見ても外からスムーズならばどこまでも伸びるというのがこの馬の特徴なので、内枠よりも外枠の方がこの馬にとっては好材料になりそうです。今回は3コーナー過ぎに外からケイアイノーテックが上がってきました、これに合わせる形でゴーサインが出たので、池添騎手単独でL3前からの仕掛けができたかどうか、ここはあまり信用しない方が良いと思います。

2着はアーモンドアイ、絶対女王が2着と、それも2馬身1/2の差をつけられてしまいました、予想の段階で危惧した通りロードカナロア産駒特有の反動が出たと考えています。まずゲート内でそわそわしていてスタートのタイミングが合いませんでした、出遅れてしまい中段の後ろからになり、4コーナーでグランアレグリアのすぐ後ろまで取り付きます、これでアーモンドアイの差し切りかと思いましたが、直線入り口でグランアレグリアのトップスピードの質に見劣り、引き離され前にケイアイノーテックに入られてしまいました。絶好調ならばこのような見劣りはないはずなので、今回の敗因は反動に尽きると思います。それでも最後に2着まで持ってきた地力の高さはこの馬のすごさです、同じロードカナロア産駒で反動が敗因だった、サートゥルナーリアのダービーや天皇賞(秋)を考えると、現役では最強の馬だということを改めて見せたと思います。

3着がインディチャンプでした、アーモンドアイを意識し過ぎたのかスタート後に中段のやや後ろまで下げてしまったのはいただけません、アーモンドアイと同じような位置からでは勝負にならないというレースプランを考えていなかったのか、福永騎手に聞いてみたくなるような大きな疑問のあるレース展開を作ってしまいました。ミスターメロディに前を塞がれてしまったので追い出しを待たされ、 アーモンドアイと同じような位置からの追い出しになっているので、差されてしまうのも頷けます。 スムースなレースができていれば2着は確保できていたと思うので残念な3着です。

4着がノームコア、近走はスタートが良くなくポジションがとれませんでした、今回もスタートがイマイチで後方からになってしまいました。加えてエンジンのかかりが遅くトップスピードに入るまで時間がかかり前を捉えきれませんでした。前半からもっと早いペースで前が消耗するような流れの方が、 この馬の持続力が発揮できると思うので、今回は展開が合わなかったと思います。調教ではダノンキングリーに大きく遅れ、舌を出して集中力も感じられなかったので無印にしましたが、当日のパドックの気配は良かったし4着まで突っ込んできたことを考えれば、改めて力のあるところを見せたと思います。

5着がケイアイノーテック、4コーナーで外を回しているのでこの5着は立派だと思います、距離適性は1400mベストにシフトしていると思うので、今回もL1で減速が大きく最後に垂れてしまったという印象です。稍重馬場でしたが府中なので、1Fごまかしが効いたという5着だと思います。

6着がアドマイヤマーズ、 NHKマイルCのレースぶりを見るまでもなく、前半から流れて中緩みを作らない展開でこその馬です、今回はトップスピードの質ではっきりと見劣っているので、展開が合わなかったということだと思います。スタートをうまく決められたので、今後もスタート不安がなくなれば安定した成績を上げられるのではないかと思います。

ダノンキングリーは7着でした、インコースに居てL3で11.6から11.0へ加速を強いられた時点でやや遅れてしまい、最後まで伸びがイマイチでした。内枠に入ってしまったことが大きな原因だと思うので、グランアレグリアのようなレースができていれば、勝っていたのはこちらだったかもしれません。 ミスターメロディ、ダノンプレミアムは、海外帰りの休み明けが堪えたような負け方でした。

馬券の方は三連複だけ的中しましたがトリガミでした、 グランアレグリアを本命にできたので良しとします。