2020年NHKマイルC 回顧。馬場を読み切ったミルコ!


走破時計 1:32.5  前半800m 46.0  上り3F 34.5

含水率 ゴール前 14.4%  4コーナー 15.0%

まずは馬場状態ですが雨が降らなかったので良馬場で、やや高速馬場まで入っていました。含水率は土曜日よりも若干上がっていますが、これは湿度の関係もあるのかもしれません。 9Rの緑風Sが古馬3勝クラスの2400mで2:23.8、8Rが古馬2勝クラスの2000mで1:59.7なので、やや高速馬場という見立てで良いと思います。完全な高速馬場までは入っていない感じで、L1も12.0迄落ちていました。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回、赤が2018年、緑が2016年NHKマイルCのグラフです。

近年のNHKマイルCはこのように中緩みが発生する平均バランスのラップ推移になりやすいレースです、2016年にメジャーエンブレムでルメール騎手がペースを作った時も、緑のグラフのように中緩みを作った上で粘り込むというレースになっていました。この傾向は今後も変わらない可能性があるので覚えておいた方が良いと思います。

2016年2018年と今回で大きく異なる点が一つあります、それは今回は追い込み馬が全く届かなかったということ、2016年はロードクエストがクビ差2着まで迫り、2018年はケイアイノーテックが後方から差し切っています。今年のレースではウイングレイテストがこの役を担えるはずでした、 上り3F最速で追い込んできましたが7着までで届きませんでした。今回はこのことについて詳しく見ていきたいと思います。

2016年2018年とほぼ同じようなラップ推移でしたが、ウイングレイテストが届かなかった理由は、4コーナーから直線入り口にかけての位置取り、コース取りの悪さに尽きると思います。ロードクエストとケイアイノーテックが3,4コーナーで外目を回していたのに対して、ウイングレイテストは3,4コーナー内目を回していました、直線入り口で大きく外にサイドチェンジをして追い込み始めましたが、直線入り口でここまで大きくサイドチェンジしてしまえば勢いが削がれてしまい、結果的にL2付近でも前を射程圏に入れられない絶望的な位置になってしまいました。それでも上り3F33.7で最速ですから、4コーナーからスムーズに外に出していれば差し切っていた可能性も十分にあります。

2016年2着まで迫ったロードクエストの上り3Fは33.8、2018年差し切ったケイアイノーテックの上り3Fは33.7、 馬場状態は2016年も2018年も走破時計が1:32.8、今回は1:32.5ですから大きな違いはなかったはずです。3着ギルデッドミラーが1:32.8なので、スムースならば少なくとも3着には来ていたのではないでしょうか。

これらを踏まえると展開がドハマリしたとしても、騎手の能力も相当な影響をを与えてしまうことが改めて思い知らされました。昨年のアドマイヤマーズも出遅れながら中緩みで取り付き、スムースに4コーナーを外から直線に入ってきました。来年以降も同じようなラップ推移があると思いますし、後方から追い込めないレースではないということ、追い込むためには4コーナーから直線入り口にかけて外からスムーズだということが絶対条件です。

逃げたのはレシステンシアで2番手にラウダシオンが押して上がって行きました、3番手にスタートを決めたタイセイビジョンが続き外からストーンリッジ、 スタートが良くなかったプリンスリターンを間に挟んでギルデッドミラーが最内で先団を追走、中段の前からになったのがシャインガーネット、ボンオウムトゥック。中段からメイショウチタン、ラインベック、スタート出遅れたシャチがリカバリーをして最内の中段。ハーモニーマゼランが中団やや後ろからでサクセッションがそその外、中段の後ろからソウルトレイン。後方からになったのがルフトシュトローム、ニシノストーム、サトノインプレッサ、ウイングレイテストという隊列でした。

1着から3着までの馬が先団に居るように、前に居なければ勝負にならないレースでした。この馬場状態と展開を読み切っていたように、ラウダシオンのミルコはスタートから押して2番手に上がりました。まさに騎手の能力が如実に出た序盤で、スタートがイマイチだったのですが控えてしまったプリンスリターン、ハーモニーマゼラン、直前で乗り替わってしまったラインベックなどは、序盤の段階で既に勝負権を失っていました。

ペースは前半800m46.0後半46.5とギリギリ平均バランスですが、馬場状態を考えるとこれでもやや遅かった可能性があります。 レシステンシアについては輸送で大きく体重を減らしていましたし前走の反動も不安だったことで、ルメール騎手も意図的にペースをコントロールした可能性が高いと思います。木曜日の最終追い切り後に計った馬体重は500㎏丁度でしたから、そこから三日間で24kgも体重を落としてしまったことになります。前半800m46.0というのはメジャーエンブレムが逃げた時と全く同じタイムです。

馬場状態を考えるとペースがやや遅いと感じた騎手が居ました、それが横山典騎手です。サクセッションは向こう正面の段階で中段の前まで上がって行きました、前にいたラインベックも一緒に上がっていったので、横山典騎手が何か声を掛けたのか、それともサクセッションが上がってきたのを見て武士沢騎手がペースを上げたのかはわかりません。この2頭がポジションを上げた場所こそ中緩みが起こっていた部分です。

4コーナーから直線入り口です、レシステンシアが銭先頭で直線に入ってきます、図のように馬群が凝縮しているのは、3,4コーナーで中緩みが起こったためです。かなりペースが遅かったためにここまで馬群が凝縮してしまいました。これで割を食ったのがボンオウムトゥック、ラインベック、サクセッションで4コーナーはかなり外を回されてしまいました。 

向こう正面ではギルデッドミラーからやや離れた後方にいたシャインガーネットがプリンスリターンの横まで上がってきています、このことからも中緩みの部分で12.0迄落としたラップタイムがいかに遅かったのか、馬場状態を考えるとかなり遅かったのだと思います。ルメール騎手は逃げても上手な騎手ですが、メジャーエンブレムの時もそうですが、やや大事に行き過ぎる感じを受けます。 

ここでウイングレイテストの位置取りが悪くなります、外にニシノストームやサトノインプレッサが居たことでスムースなコース取りができませんでした。直線入り口にかけて一気にペースが上がる部分で、ここから大きく外にサイドチェンジをしなければならなくなります。

直線L2標識付近です、レシステンシアがまだ先頭で頑張っていますが、ラウダシオンは楽な手応えでこれをマークしています。レシステンシアはL4からL3にかけて0.7の加速をして出し抜きを図りました、しかし12.0から11.3なので後続の馬達も楽にこれに対応してしまいました。 L4でもう少し速いラップを踏んでいればここで出し抜けた可能性はあると思います。 

ウイングレイテストはこの加速中に内目から外に大きくサイドチェンジをしています。 当然サトノインプレッサの後ろを回すことになりかなり大きなロスをしています。この地点で前を射程圏に入れられなかったことがウイングレイテストの大きな敗因ではないでしょうか。

直線Ⅼ1標識付近です、レシステンシアをラウダシオンが楽にかわして行きます。このL1標識付近でタイセイビジョンやギルデッドミラー、シャインガーネットあたりと、レシステンシア、ラウダシオンとの間にやや間隔が空きました。L2のの上り坂に対応できなかったタイセイビジョンとシャインガーネットに、ギルデッドミラーは付き合わされる格好になっています。タイセイビジョンはおそらく距離適正が出てしまいL2の坂で苦しくなったのではないでしょうか。

坂上ではタイセイビジョンとギルデッドミラーが馬体を並べてゴールしました、直線で馬群の中に入ってしまったルフトシュトロームは、右へ左へ進路を変えながらジリジリとしか伸びませんでした。外からスムースだったウイングレイテストは7着までが精一杯、サトノインプレッサはトップスピードの質で見劣り全く伸びませんでした。

では1頭ずつ見ていきます。

一着はラウダシオン、ズバリ勝因はミルコの馬場読みの正確さ、怖がらずに2番手先行した度胸でしょう。前に居なければ勝負にならないレースであることを読み切り、それを実行してしまうミルコの勝負度胸の高さには感服です。朝日杯FSで凡走したために評価を下げてしまいましたが、クロッカスS,ファルコンSと左回りで良さを見せてきました。距離適性としては1400mまでと思いましたが、3歳のこの時期ならば1Fぐらいは誤魔化せたし、高速馬場であったこともこの馬にとっては良い材料でした。リアルインパクトの産駒ということで今後もマイルで高い適性を見せそうです。

2着はレシステンシア、予想通り逃げてどこまで粘れるかというレースでしたが、戦前の不安に反してしっかりと2着に残りました。木曜日に計測したば体重から24kgも減っていたこと、最終追い切りがかなり軽かったこと、桜花賞が重馬場での激走と不安要素が山ほどありましたが見事に克服してみせました。もう少し前半から飛ばしていればラウダシオンも苦しくなったはずで、勝ち切っていた可能性も十分に考えられるレースでした。改めてマイル適性の高さを見せてきたので今後も・・・。

3着はギルデッドミラー、スタート決めて4番手あたりの最内でじっと足を貯めていました、結果的に前に付けられたことで流れ込むだけで3着という望外な結果を得られた感じで、強さや今後への期待というものが感じられないレースでした。おそらく今回のレースで最も楽をしたのがこの馬で、非常にロスの少ない福永騎手らしい騎乗でした。3歳1勝クラスでの勝ち方が良かったので、もう少し評価をして上げても良かったなと思っています。

4着がタイセイビジョン、懸念材料だったスタートを決めて先行したことが、4着という結果につながったと思います。L2の上り坂区間で前の2頭とやや間が空いているので、ここはパワー不足ではなく距離適正がモロに出てしまったと見ています。前走は最後方からのレースをしていて稍重のハイペースバランスをバテ差しましたが、根本的には1400mがベストなのだと思います。この辺りがラウダシオンとの差で、ラウダシオンはマイルまで適性範囲に入るのに対し、タイセイビジョンの方はマイルははっきりと長いのだと思います。今回の一戦だけではスタートの不安は消えないので、あと1、2戦は様子を見たいと思います。

5着はルフトシュトローム、前半ポジションを取れずに後方からになってしまったことで勝負権を失ってしまいました、枠が大きく影響していて前半から無理なく中段あたりのポジションが取れれば、また結果は違ってきそうです。直線も馬群の中に入ってしまい、右に左に進路変更を繰り返していてまともに追えたのは最後の1Fだけでした。ちぐはぐな競馬になってしまいましたが、この展開でも5着まで持ってきたように能力は十分にあると思います。今後もマイル前後での好走が期待できる馬です。

期待したラインベックは直前に武士沢騎手に乗り替わりということで、この時点で勝負権はありませんでした。もちろん津村騎手が乗っていたとしても先団に取り付いてレースができたかは分かりませんが、 武士沢騎手と津村騎手では成績が違いすぎます。今回は8着に凡走しましたがまだマイルで見限る必要はないと思います。3番人気だったサトノインプレッサは後方から全く伸びませんでした、母系にサドラーズウェルズが入っている影響が、トップスピードの質に出ているという見立ては間違っていないのではないでしょうか。今後はどういったレース選択をしてくるか分かりませんが、道悪になったらノーマークは禁物だと思います。

馬券の方は期待したラインベックが直前で乗り替わり、ルフトシュトロームは後方からになり箸にも棒にもかかりませんでした。不安視したレシステンシアに2着に好走されていますし、ラウダシオンとギルデッドミラーに至っては無印と言う体たらくで、しっかりと反省してで直さなければいけません。