2019年スワンS 全頭評価。その4。前走殿負けのトゥザクラウンは休み明けでフレッシュ。

<トゥザクラウン>・心肺機能とパワーの両立型で瞬発力は低い。

・トップスピードの質は低く持続力は高い。

”2018年京都1000万条件”ではスローバランスを2番手追走、直線ではトップスピードの質で見劣り5着、この時の1着がエントシャイデン。”2019年祇園特別”では平均バランスをやや離れた2,3番手追走、直線はトップスピードの質で見劣り3着。”2019年東京1000万条件”では離れた2番手からで実質平均バランス、坂で突き放して圧勝、L1は12.0に落としているがコースレコードに0.1差の好タイム。”2019年大阪ハンブルクC”では逃げ争いに巻き込まれて前半33.1のハイペースバランス、後半は消耗戦になりL1では12.7まで落として、後続に0.1差まで詰め寄られる辛勝。2019年京王杯SCでは0.3のややスローバランスを先行、直線粘ったが4着、2F目で手綱を引いて下げたことは良くなかった感じ、調教も悪く見えたのでこの結果は上出来。”2019年安土城S”ではほぼ平均バランスを2番手から、直線L1で一杯になり殿負け、休み明け4走目の疲労。

「スワンSへ向けて」好材料:距離適正、休み明けでフレッシュ。悪材料:コース適正。

この血統で1400が本当に良いのかどうかは未知数、お母さんのトゥザヴィクトリーや上のお兄ちゃん2頭トゥザグローリー、トゥザワールドは有馬記念2,3着の実績馬で、お姉ちゃんのトーセンヴィクトリーも中山牝馬S1着と中山中距離巧者が揃っている。この馬は掛かる気性も合って、1400ではスピードに任せたレースで結果を出してきたのは興味深い。特に注目すべきは東京1000万条件で走破時計の1:19.6は、コースレーコードに0.1差の好タイムを記録している。当日は高速馬場ではあったが、1レース前の東京新聞杯でも1:31.9だったことを考えると、1000万条件では破格のタイム。もちろん展開が味方した面もあって、オルレアンローズが離し気味に逃げたのを、実質平均バランスで追いかける形から一気に突き抜けてしまった。もう1レース注目すべきは2019年大阪ハンブルクCで、逃げ争いになり前半33.1と1200のペースで逃げて押し切った、消耗戦になりL1では12.7まで落とし、後続に0.1差まで迫られる辛勝だった。以上の結果を踏まえると、トゥザクラウンは1400なら重賞でも十分通用する可能性が高い、ただし騎手が凄く不安。まず福永騎手が逃げて上手い騎乗をしたところを見たことが無い、逃げに限った話ではなく離れた2,3番手から実質的にレースを作れる騎手かと言われれば、はっきりNoだと思う。2019年天皇賞(春)でもメイショウテッコンでL2最速戦にしてしまう謎騎乗を見せてくれた。

2019年京王杯SCでは0.3のややスローバランスを先行、トップスピードの質では見劣ってしまった。L2まで追い出さなかったことで瞬発力の低さも見せたし、L3で出し抜けなかった。これでもスムースだったタワーオブロンドンと0.1差なので、早目に追い出していれば3着以内はあったはず。キンカメ産駒らしく疲労には弱く、安土城Sは休み明け3走目で凡走してしまった、京王杯SCの僅差4着を考えれば想定できない着順で、疲労により馬が投げ出したと考えるのが妥当だと思う。ノーザンF生産馬なので休み明けでも走る、むしろ間隔空けてフレッシュな方が好成績。

好材料は距離適正で、1400mでは2-0-1-2とまぁまぁの実績、ただこの中には僅差4着だった京王杯SCも入っている。前走は休み明け3走目の疲労で凡走したが、ノーザンF生産馬で休み明けから走るはず。この点も大きな好材料。悪材料はコース適正で、前走の安土城Sは疲労の影響なので度外視するとして、宝ヶ池特別1600m、1000万条件1600m、祇園特別1400mと大きく負けてはいないがピリッとしないんだよね。恐らく平坦コースでトップスピードの質で見劣っているんだろう、トップスピードの質で見劣らないために早目に仕掛けられるかどうかは未知数。福永騎手は京王杯SCでも仕掛が遅かったからね~。

<ノーワン>・心肺機能とパワーの両立型で瞬発力はまぁまぁ。

・トップスピードの質は低く持続力はある。

”未勝利戦”ではスローバランスを中段から、直線は外から差し切り。”フィリーズレビュー”ではややハイペースバランスを中段の内から、直線で馬群を割って伸びて1着同着。”桜花賞”ではスローバランスを中段から、直線外からスムースだったが伸びずに凡走、休み明け4走目で疲労の可能性大。”オークス”では平均バランスを中段やや後ろから、直線中目からスムースだったが伸びずに凡走、ここでも疲労の可能性大。”2019年スプリンターズS”ではハイペースバランスを中段の後ろから、4コーナー外を回して直線はタワーオブロンドンのすぐ後ろから、トップスピードの質で見劣り8着、この時が休み明け。

「スワンSへ向けて」好材料:休み明け2走目、距離適正。悪材料:後方から届かない可能性。

フィリーズレビューの勝ち方はあまり評価できない勝ち方だった、ややハイペースバランスを中段の最内で相当楽をしている、直線も内から他馬に迷惑をかけるコース取で嵌った感が強い、それでも心肺機能と持続力、パワーは評価すべきだと思う。過去のレース内容からもトップスピードの質が低いことははっきりしていて、桜花賞では直線隣りに居たクロノジェネシスに一気に引き離された。もちろんこの時は疲労の影響が大きいと思うが、トップスピードの質は見せていない。ハーツクライの産駒なので疲労には弱く、桜花賞が休み明け4走目、オークスが休み明け5走目で全くレースにならなかった。血統的に短距離の方が合いそう。この馬は非ノーザンF生産馬なので休み明けは良くないと思う、2019年スプリンターズSがオークス以来で8着だった。

好材料は休み明け2走目、非ノーザンF生産馬なので使ってよくなるタイプ、上積みは期待できる。距離適正もフィリーズレビューを勝っているのでいいと思う。悪材料は後方からになると届かない可能性があること、トップスピードの質は低いので道悪や、余程のハイペースバランスでもない限り届かないかもしれない。京都コースは未勝利戦を勝っているが、このクラスになると平坦コースもあって前が止まらないので、コース適正も良いとは言えないと思う。

<マイスタイル>・心肺機能は高く、パワーもある、瞬発力はまぁまぁ。

・トップスピードの質は低く、持続力はまぁまぁ。

“弥生賞”ではスローバランスを逃げて2着、L2で0.5秒加速する瞬発力と、L1でのパワーと持続力を見せた。”ダービー”ではスローバランスを逃げて4着、L2で0.6の加速ラップを踏んでいて、これはレイデオロと互角の瞬発力、L1では持続力の差で落としたが4着は立派。”2018年福島民報杯”ではハイペースバランスを後続を離して2番手先行、L2最速だが消耗戦気味になり持続力を生かして2着。”2018年新潟大賞典”ではスローバランスを中段から、直線外からスムースだったがトップスピードの質で見劣り6着。”2018年洞爺湖特別”ではややスローバランスを逃げて圧勝、L2で0.5の加速をして出し抜き後続に差を付けた。”2018年五稜郭S”ではややスローバランスを逃げて圧勝、L2で0.6の加速ラップを踏み出し抜き、2着スティッフェリオ、3着ドレッドノータスには決定的な差を付けた。”2018年札幌記念”ではハイペースバランスを4番手で先行、L4でペースが上がったところを外から捲って凡走。”2018年福島記念”ではハイペースバランスを2頭で離して逃げ体勢から、L3で一旦息を入れてL2で出し抜きに掛かるも思ったほど伸びずに2着。”2018年中日新聞杯”ではハイペースバランスを後続を離して逃げて凡走、ペースが速過ぎて自滅。”2019年京都金杯”では平均バランスを3,4番手先行、L2で自身0.7位の瞬発力を見せて内から抜けてきたグァンチャーレを振り切って2着、1着パクスアメリカーナにはトップスピードの質と持続力で見劣り。”2019年小倉大賞典”ではほぼ平均バランスを離れた追走集団の中段から、追走集団もL5から11秒台に入ったことで、息が持たずに凡走。”2019年ダービー卿CT”ではハイペースバランスを中段やや前から、消耗戦になり馬場の良い外から粘って3着、トップスピードの質を問われなかった。”2019年巴賞”ではハイペースバランスを3,4番手先行、4コーナーで前が下がってきて大きく不利を受け凡走。”2019年函館記念”では平均バランスを逃げ切り、L2最速戦で得意の展開に持ち込めた。

「スワンSへ向けて」好材料:無し。悪材料:休み明け、初の1400m

改めてこの馬のレースを見直してみて驚いたのが、スローバランスからのL2で見せる瞬発力。これを見せたのが弥生賞、ダービー、洞爺湖特別、五稜郭S、京都金杯でいずれも好走している。この馬は意外に脚質と言うか能力の幅が広い馬で、トップスピードが低い以外は結構まとまったポテンシャルを持っている。心肺機能の高さはダービー卿CTや京都金杯で見せているし、持続力の高さは上記のレースで見せている。キタサンブラックを弱くしたような馬と言う印象で、特にスローペースからのL2で出し抜く様はよく似ているし、キタサンブラックが不良馬場の天皇賞秋で見せた心肺機能と持続力の高さも、レベルの差こそあれ持っている、豊騎手が乗ったら重賞の1つや2つ勝ちそうな気がする。中日新聞杯では完全にオーバーペースで自滅している、その前の福島記念が高速馬場のなかハイペースバランスで2着なので、同じイメージで乗ったんだと思う。つまり馬場読みが出来ていないんだよね、小倉大賞典でもサイモンラムセスが3着に残っているので、あのペースで正解なんだけど、何を考えているのか中段に控えてL5から11秒台に入るロンスパで凡走したからね。そうそうロンスパで凡走する辺りもキタサンブラックと似ていますね、宝塚記念でミルコに追い出しを掛けられて、ロンスパになって凡走したのを思い出した。

2019年函館記念を快勝したが、平均バランスを離した逃げに持ち込んでL2最速戦という、勝ってくださいのレース展開だった。もちろんこんな展開はめったにない。

好材料はコース適正で、京都金杯で2着がある、ただかなり重たい馬場でトップスピードの質を問われなかったし、ここでも平均バランスからのL2最速戦だった。悪材料は休み明けでこの馬は非ノーザンF生産馬なので、どうしても休み明けはピリッとしない。初めて走る1400mではあるがダービー卿CTで好走しているので、体調万全ならスピード負けはしないと思う。

<マルターズアポジー>・心肺機能とパワーの両立型で瞬発力はない。

・トップスピードの質は低い。

・逃げて後続に脚を使わせて粘り込むタイプ。

”2017年小倉大賞典”ではハイペースバランスを逃げ切り。”2017年関屋記念”ではややスローバランスを逃げて、後半も纏めて1着、マイルだと後半も速いラップで踏ん張れる。”2018年中山記念”ではハイペースバランスを逃げて粘り込み、L3でやや緩められたことも大きい。”2018年鳴尾記念”ではややハイペースバランスを逃げて4着、馬場を考えるとこれでも遅かった。”2019年スプリンターズS”ではハイペースバランスを2番手先行、L2で一杯になり凡走、ハイペースの先行で一杯になってしまった。

「スワンSへ向けて」好材料:無し。悪材料:実績のない1400m、近走の成績の悪さ。

2018年中山記念の3着は驚いた、ややハイペースバランスで上手く逃げ粘ったなという印象、この馬は心肺機能とパワーの両立型で、瞬発力とトップスピードの質は持っていない。だからこその逃げの一手なんだと思うが、2018年後半から顕著に成績が悪くなってしまった。平均バランスで逃げても後半全く勝負になっていないので、恐らくは心肺機能が落ちてきたんだと思う。

好材料はなし、悪材料は前走1200mに短縮したが、L2で一杯になっているようにこのクラスの短距離戦では心肺機能が通用しない。近走はいろいろな距離、そしてダートも試しているが全く良いところがないので、ここで好走することは考えられない。