2019年宝塚記念 全頭評価 その2。

過去10年3着以内に入った馬は、GⅡで2着以上の成績を持っていました。今年これに当てはまらないのは、ショウナンバッハ(最高GⅢ3着)、スティッフェリオ(最高GⅡ4着)、タツゴウゲキ(最高GⅢ1着)。前走については不問です、着順、レースの格、距離ともにバラバラでGⅢでもマイル戦からでも好走しています。カレンミロティックはGⅢで4着に負けていながら、2着に好走しています、ゴールドシップは天皇賞(春)5着、7着から巻き返して1着、オルフェーヴルに至っては天皇賞(春)11着から1着です。

では1頭ずつ見ていきます。

<クリンチャー>・心肺機能の内、無酸素性作業閾値が低く、前半のハイペースが苦手。

・パワーと持続威力が高く、トップスピードの質、瞬発力は低い。

・休み明けは良くないが重なら走る。

”2018年有馬記念”では稍重で平均バランスを先行して凡走、この時は海外帰りの休み明け。”2018年天皇賞春”では離れた追走集団の中段から実質スローバランス、L2最速戦を3着。”2019年日経賞”ではスローバランスを中段から、L5から11秒台に入る流れで凡走。”2019年天皇賞(春)では中段から、L4からの11秒台に反応できずに、L2最速戦を凡走。

「宝塚記念へ向けて」この馬はAT値(無酸素運動領域)が低い馬で、11秒台を連発してしまうと息切れしてしまう。菊花賞は1度も11秒台に入っていない、京都記念でも1度だけ、2018年阪神大賞典では2度、2018年天皇賞(春)でも1度しか11秒台に入っていないので好走できた。有馬記念ではL5から11秒台を3回続けている、日経賞でもL5から11秒台を連発されて息切れした。このAT値の低さをカバーするのが重馬場で、新馬戦こそ大敗しているが菊花賞、京都記念と好走している。

ということで展開やポジションは不問で天気次第、何しろ休み明けでも重馬場なら問答無用で好走するのだから。重馬場以上に悪化することが必要条件で、良馬場はもちろん稍重でも苦戦するはず。コース適正は阪神大賞典で好走しているので問題ないし、58㎏での好走歴もあるなど優位な面もある。結局馬場次第ですね。

<ショウナンバッハ>・心肺機能はやや低い、パワーはある、瞬発力は低い。

・トップスピードの質は高かったが年齢とともにやや下がった。

・持続力も年齢とともにやや下がった。

”2018年中日新聞杯”では離れた追走集団のやや後ろから、直線外から追い込んで一旦ギベオンの前に出るも差し返される、持続力低下の影響。”2018年新潟記念”ではスローバランスを後方から、直線追い込んで3着、この時は53㎏でトップスピードの質が高い馬が少なかった。”2019年金鯱賞”ではスローバランスを後方から、稍重でトップスピードの質を問われなかったが、全く伸びずに凡そう。”2019年メイS”ではスローバランスを後方から、直線は中目から伸びて3着まで、この時が54㎏で適正距離が短くなってきた可能性がある。”2019年エプソムC”ではスローバランスを後方から、4コーナーで内を回してポジションを上げて、直線外目に出して伸びた、トップスピードと持続力が生きたが後方からになり届かず。

「宝塚記念へ向けて」前走のエプソムCは上がり最速32.7で4着まで追い込んできた、もちろんドスローでトップスピード戦になり、これを後方からだから褒められたものではないが、トップスピードの質と持続力を見せたのはたしかだし、56㎏で4着は意外だった。これも稍重での適性が生きたのは確かだと思うし、ステゴ産駒らしい部分ではある。

今回は相手も相手だし58㎏を背負ってのレースになる、前走みたいな展開は間違っても期待できないし、良馬場では追走で一杯になる可能性が高い。もう一点気になるのが使い詰めで、2018年7月以来コンスタントに使われて12戦目、つまり1か月に1回のペースで使われているし、エプソムCから中1週ではさすがに苦しいと思う。これは重馬場になっても同じで、GⅠで相手も揃うのでここでは無事に完走してくれれば。

<スティッフェリオ>・心肺機能とパワーの両立型で瞬発力は低い。

・トップスピードの質は低く、持続力はまぁまぁ。

”2018年札幌記念”ではハイペースバランスを中段やや前からトップスピードの質で見劣り5着。”2018年オクトーバーS”ではスローバランスを中段から、トップスピードの質で見劣り4着。”2018年福島記念”ではハイペースバランスを先行してバテ差し1着。”2019年小倉大賞典”では平均バランスを中段やや前からバテ差し1着。”2019年大阪杯”ではスローバランスを3番手先行、4コーナーで外目を回らされて直線も伸びない外目からになり7着まで、外枠で内のポジションを取れなかったのはハンデになった。

「宝塚記念へ向けて」前走の大阪杯では外枠から先行したが、終始外目を回らされてしまい7着、ハッキリ内優位の馬場で外目を回ったので、これで評価を下げる必要はないと思う。福島記念、小倉記念とGⅢを連勝した時は、ハイペースバランスと平均バランスで心肺機能と持続力が生きたレースだった、トップスピードの質が低いのははっきりしているので、高速馬場では苦しくなると思う。

GⅢを連勝と言っても福島記念の2着がマイスタイル、3着が57㎏のエアアンセム相手にこちらは55㎏だったし、小倉大賞典でも2着はタニノフランケルで、タニノフランケルが鳴尾記念でボロ負けしている、3着はサイモンラムセスだったからレースレベルは低い。正直言うと大阪杯の7着はかなり驚いた、内外で1頭分の違いはあるけどキセキに0.5秒離されたのは事実だし、GⅠレベルになると持続力もまぁまぁのレベルで武器にはならなかった。社台Fの生産馬の割に休み明けでも走るのはプラス要素だが、このレベルでとなると全体的にやや足りない感じ。重馬場になっても内枠を引いて余程上手く立ち回らないと苦しいと思う。

<スワーヴリチャード>・心肺機能とパワーの両立型で瞬発力は高くない。

・直線で進路変更すると再加速に手間取る。

・休み明けでも走る、出遅れることがある。

・右回りは直線で右に刺さる。

”2018年天皇賞秋”では出遅れ全くレースにならず、この時が休み明け。”2018年安田記念”では平均バランスのハイペースを先行して、直線でレーヌミノルに寄られて進路変更を強いられ3着。”2018年大阪杯”ではスローバランスを直線までにに捲り切って、直線は内ラチ沿いにトップスピードを持続して1着。”2017年有馬記念”ではスローバランスを中段やや後ろから、4コーナーで押し上げたが捲り切れずに直線右に寄れて4着、ミルコに制裁。”2019年中山記念”ではやや離れた中段からで実質平均バランス、最内に入れてラチ沿いを進め直線も最内からジリジリ伸びたが4着まで、右回りの影響。

「宝塚記念へ向けて」まず右回りの不安は消えていない、昨年の大阪杯こそスローペースを早目に捲り切って、直線最内を進めたことで影響は最少だったが、それでも直線はバランスが悪かった。中山記念でもミルコが恐る恐る乗っている感じで、早目に最内に入れてラチ沿いを進めて流れ込むだけだった。この右回りの不安に関して一点だけ気になることがあって、エタリオウの所でも書いた通り、何でミルコはスワ―ヴリチャードを選んだのだろうか?この馬の右回り不安ははっきりしているにもかかわらず、エタリオウではなくこの馬を選ぶにはそれなりの理由があるのではないか?と勘ぐってしまいたくなる。まぁこれはいくら勘ぐっても真実は表に出てこないはずなので、あまり深く考えない方が良いかな~。

コース適正以外の部分の能力についてですが、昨年のジャパンCでキセキに完敗している、天皇賞(秋)ではスタートのアクシデントが影響したので、評価を下げる必要はないと思う。現状では能力評価でキセキより上の評価はできないし、コース適正を加味した総合評価ではさらに下がってしまう。もう一つ気になるのは海外帰りであること、休み明け自体は右回りとスタートでアクシデントがあった天皇賞(秋)を除けばすべて1着だし問題はないが、海外帰りとなると話は別。ノーザンF生産馬なので質の高いケアは出来ていると思うが、初の海外遠征の影響がどの程度出るかは未知数。