2020年日経賞 回顧。とんでもない乱ペースになっている。


走破時計 2:32.9  前後1000m 約60.3-59.7  上り3F 36.6 

含水率 ゴール前 9.0%  4コーナー 9.4%

まずは馬場状態ですが良馬場で行われました、前日には雨の予報が出ていましたが、雨は全く降らず含水率は9%とかなり低い状態でした。ただこれで高速馬場になったかと言うとそうではなく、 2:32.9は標準的な走破時計でした。9Rの両国特別が2勝クラスの1800mで1:50.1だったので、標準的な良馬場だったと思います。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。距離は100m半端な距離でしたので、グラフ横軸の数値をマイナス100m補正してください。

ベースを作ったのはヤマカツライデンでした、逃げ体制を築いた後に極端なスローペースにまで落としています。 1200mを過ぎた辺りでヤマカツライデンをソウルスターリングが交わして先頭に立つと、ここから1700m付近にかけて11.3まで一気にペースが上がりました。 さらにここからL3へ向けて今度はペースが落ちていきます、 12.4迄落ちてからL2でソウルスターリングが一杯になり、ステイフーリッシュが先頭に立ったことで11.7までラップが上がります。L1ではステイフーリッシュもエタリオウも消耗して、外からミッキースワローがバテ差しを決めました。

まずグラフを見ていただければ分かるとおり、上がったり下がったりを繰り返すペースになっています、 これはインターバルトレーニングのような形になって非常に心肺機能に負荷がかかる波形です。前に居てこのラップ推移に付き合った馬が早々に脱落してしまったのは当然の結果ですが、二番手にいたソウルスターリングがなぜこのような厳しいラップを刻む必要があったのか不思議でなりません。丸山騎手のペース認識の悪さは分かっていましたが、ここまで酷いラップを刻んでくるとは正直思いませんでした。実際に自分でランニングをしてみればこのようなラップ推移がいかに厳しいか分かるのですが、その経験がないために馬に余計な負担を強いてしまうのだと思います。 

逃げたのはヤマカツライデン2番手にソウルスターリング、3番手の内にウインイクシード外にガンコ、中段の前からサトノクロニクル、エタリオウ。中段を形成したのがマイネルカレッツァ、レッドレオン、スティッフェリオ、ミッキースワロー、中段の後ろをモズベッロが追走して、後方からアイスバブル、ポンデザール、サンアップルトンという並びでした。

逃げ体制を築いたヤマカツライデンですが向う正面中ほどでソウルスターリングに交わされました、 ソウルスターリングがややかかり気味だったために抑えが効かなかった感じで、折り合いをつけられない騎手の技量が露呈したことと、一気にペースが上がってしまったために、非常に苦しいラップ推移にしてしまうペース認識の悪さも見せてしまいました。問題はソウルスターリングの暴走にウインイクシード以下が付き合ってしまったことで、当然中段よりも前に居た組はすべて凡走しています。

好走した3頭は中段よりも後ろにいて、前のペースにはあまり付き合っていません。向こう正面で馬群が伸びたり縮んだりしているのは、ソウルスターリングがペースを引き上げたり落としたりした部分で、中段以降の馬たちはあまりこれに付き合っていなかったために余力が残っていました。

4コーナーから直線入り口です、ソウルスターリングがすでに苦しくなった部分でウインイクシードが先頭で直線に入ってきます、外からエタリオーとスティッフェリオが押し上げながら先頭のウインイクシードに並び、スティッフェリオの後ろからミッキースワローが直線に入ってきます。そのやや後ろ外からモズベッロが外を回して直線に入ってくるところサンアップルトンが続きます。

レッドレオンは中目を回してエタリオウのすぐ後ろあたりまで取り付きますが、手応えが悪くここから全く伸びませんでした。後方にいたアイスバブルが中目を通してミッキースワローの後ろまで取り付き、中段の前にいたサトノクロニクルはこの辺りで一杯になりました。 

1着のミッキースワローはここからスティッフェリオの外に持ち出す時に、外にいたモズベッロと接触しています、横山典騎手が右ムチを使っていたこともあり制裁対象になり二日間の騎乗停止です。ベテランの横山典騎手なのでミッキースワロー自身も全く余裕がなかったのだと思います。 

直線L1標識付近です、エタリオウとスティッフェリオが並んでウインイクシードを交わしますが、エタリオウはこのあたりで力尽きて後退します。スティッフェリオの後ろからミッキースワローがモズベッロに体当たりをしながら伸びてきて1着、ミッキースワローと合わせるように伸びたモズベッロが2着でした。先に仕掛けたスティッフェリオがよく粘って3着を確保しました、スティッフェリオは一番強いレースをしたのではないでしょうか。

後方からではサンアップルトンとアイスバブルがバテ差しで4着5着に入りました、アイスバブルは昨年の目黒記念で見せたように周りが苦しくなった時に台頭するタイプなので、今回のレースペースは相当苦しかったはずです。サンアップルトンは後方でじっとしていたことが功を奏して、格上げ初戦の重賞で掲示板を確保しました。

では1頭ずつ見ていきます。

一着はミッキースワロー、中段から進めて前のペースに付き合わずにうまくバテ差しを決めました、丸山騎手が作り出してしまった不可解なペースを、横山典騎手が読み切って付き合わなかったことが大きな勝因だと思います。 この馬は昨年の七夕賞でもハイペースバランスを差し切っているように、意外に心肺機能の高いものを持っています、トップスピードの質はまあまあの部類ですが、長くいい脚を使える持続力の高さで、スムースならば前をまとめて交わしてしまうだけの力を持っています。直線ではモズベッロにやや迷惑をかけましたが、大きなアクシデントに繋がるようなコース取りではありませんので、個人的には許容範囲かなと思っています。今後は天皇賞(春)へ向かうようですが、厳しいペースになればなるほどこの馬は台頭してくると思います、逆にフィエールマンが勝つようなスローからの上がり勝負になってしまうと届かない懸念が出てきます。

2着はモズベッロでした、前走は格上げ挑戦の上に軽ハンデでの1着と能力を疑問視していましたが、2走続けてGⅡを好走した実力は本物と言って良いと思います。直線でミッキースワローに寄られた不利がなくてもミッキースワローを交わすことはできなかったと思うので、一線級との対戦ではまだ不安があります。中段の後ろでじっとしていたことで展開的には恵まれた感もありますが、それだけで2着に来られるわけではないので、心肺機能もまあまあのものを見せたし、持続力の高さは重賞でも通用することを証明しました。予報では道悪の可能性がありましたが、良馬場で行えたこともこの馬には良かったのでしょう。

3着はステイフーリッシュでした、 ミッキースワローのすぐ前から進めて、3コーナー過ぎからエタリオウと並ぶように早めに前を捕まえに行きました、このタイミングは賛否あると思いますが、トップスピードの質が高くないので悪いタイミングではなかったと思います。エタリオウに合わされてしまい1頭分外を回すことになったのは誤算でしたが、それでもL1でエタリオウが一杯になったのを尻目に3着を確保したのは高評価です。オールカマーでは逃げて1着でしたが、逃げなくても好走できるのは再三見せていたので、レースの幅という意味では広いものを持っています。 もちろんトップスピードの質は高くないので、心肺機能と持続力を生かす展開を自ら動いて作れる事が条件になります、疲れやすいステゴ産駒なので前走のように疲労が残った状態では簡単に凡走してしまう厄介な面もあります、なので意外と買い時が難しい馬だと思います。

4着がサンアップルトン、後方からレースを進めて前のペースには付き合わなかったことで足が溜まりました、格上げ初戦の重賞で4着に入れたのは高評価で、展開がハマったとはいえ今後の活躍が期待できます。心肺機能については後方からだったので評価できませんが、アイスバブルよりも先に仕掛けていたので持続力については評価した方が良いと思います。

5着がアイスバブルでした、後方から進めて前のペースに付き合わなかったことで、周りが苦しくなってバテ差しが効いた格好です、これは昨年目黒記念で2着に好走した時と同じ展開なので、これがこの馬の好走パターンなのだと思います。

軸に期待したレッドレオンは直線入り口で手応えが悪くなり7着でした、懸念材料だった関東への初輸送がこのような形で現れたのだと思います。中山金杯を2着しているウインイクシードは休み明けだったこと、前に行ってソウルスターリングの乱ペースに付き合った割には悪くない内容だったと思います、最後1ハロン粘れなかったのが休み明けの影響だとすれば、かなり強いレースをしたなという印象です。今回のレースで距離の目途は立っているので、トップスピードの問われない2400mくらいでも好走できるのではないでしょうか。

馬券の方は軸にしたレッドレオンが7着と外れてしまいました、天気予報が全くあてにならず馬場状態が想定とは違ってしまったのでかなり苦しい結果になってしまいました。