2020年ジャパンC 回顧。2018年の再現。


走破時計2:23.0    前半1000m57.9  69.4-73.6ハイペースバランス

良馬場  含水率 ゴール前 14.8%  4コーナー 14.6%(5:00)

クッション値 9.3 標準(7:00)

まずは馬場状態ですが良馬場でした。11RのウェルカムSが3勝クラス2000mで2:00.7、上り3F最速は33.2、1着ヒシイグアスの上り3Fは33.5でした。高速馬場までは入っていなかったと思います、標準やや高速というくらいですね。クッション値を公表するようになって、馬場を柔らかく作っているのは間違いないはず。この弊害で乾燥しにくくなっている感じがしますし、雨が降った時は一気に馬場が悪化してしまう感じ。来年以降もこの傾向は続きそうですね。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回、赤は2020年メイン集団の推定ラップ、緑は2018年ジャパンCのグラフです。メイン集団のラップは目視手動計測なので、全体で0.1秒の誤差が出ています、ご了承ください。

        前半1000m 後半1000m

2018年(全体)   59.9     57.2

2020年(全体)   57.9     61.8

2020年(メイン)  60.4     57.7

まずはアーモンドアイですが、グラフと前後半を見て分かるように2018年と同じレースをしたという事ですね。特にL2から11.6を2連発した持続力は圧巻でした。心肺機能、瞬発力、トップスピードの質、持続力、この4つが最高レベルと評価していましたが、5歳になって瞬発力とトップスピードの質が若干下がったかなと見ていました。今回はトップスピードの質と瞬発力が問われない流れで、心肺機能と持続力がフルに発揮されました。

強い、間違いなく歴代でもトップクラスに入る名馬です、それも単純な能力だけでなく今回のように苦手な展開にならない、ここは持って生まれた運だと思います。ルメール騎手が通年免許を取得して日本で乗っていたことも、アーモンドアイにとって幸運でした。やはりこのレベルの名馬になると、単純に能力が高いというだけでなく持って生まれた強運、これが不可欠なんでしょうね。

グローリーヴェイズは5着でした、L1標識まではアーモンドアイに食い下がっていましたが、ここから垂れてしまいましたね。アーモンドアイとの上り3Fの差は0.3秒、L1で引き離された分が0.3秒ですからトップスピードの質と持続力両方で見劣ってしまいました。ただし4コーナーからはこの馬がメイン集団の先頭に居ましたから、風圧の影響もあったはず、前に信頼できる風除けを置けなかったことも、アーモンドアイに運で負けた部分ですね。

逃げたのはキセキ、離れた追走集団の先頭からトーラスジェミニ、ヨシオ、中段の前からグローリーヴェイズ、中段やや前からアーモンドアイとクレッシェンドラブ。中段からデアリングタクト、カレンブーケドール。中段やや後ろからコントレイル、ワールドプレミア、中段の後ろからパフォーマプロミス、ミッキースワロー。後方からマカヒキ、ユーキャンスマイル、ウェイトゥパリスという並びでした。

逃げたのはキセキでした、それもかなりのハイペースで2018年に逃げた時以上のペースでした。さすがに速過ぎで前半1000m57.9ですからね~、馬場を考えると暴走と言われても仕方ないかも。L2では13.2までラップを落としていますが、L1過ぎまで先頭で頑張ったので前半2秒抑えていたら、復活もあったかも…。この辺りは浜中騎手が馬の行く気に任せたのでしょうが、スプリント戦ではないのでペースは騎手がコントロールすべきでしょう。でもキセキが枯れていないことは見せましたね。

アーモンドアイは内外の違いはありますが、天皇賞(秋)と同じような感じでしたね、メイン集団の中段やや前でグローリーヴェイズを風除けに、折り合いも付いていましたね。デアリングタクトも良い位置取りでした、アーモンドアイをマークする位置取りで、折り合いも付いていました。意外だったのがコントレイルで、中段のやや後ろからを選択。アーモンドアイを苦しめる位置取りをしてくると思いましたが、福永騎手はスムースな競馬を選びましたね。自信なのかそれとも弱気になったのか、勝ちに行ったということを感じられない位置取りでした。

意外な位置取りをした馬は他にもいました、まずカレンブーケドールですね、国枝ラインでアーモンドアイの前に入ると思いましたが、選択したのは逆の位置取りでした。スタートは五分に出ていますがアーモンドアイの方が良かったために、一歩下がってアーモンドアイを入れました。この部分は津村騎手が気を使った感じですね。ただこの位置取りは悪いどころか実は最高の位置取りだと思います、仕掛のタイミングが悪い津村騎手ですから、ルメール騎手の後ろに居れば仕掛け遅れはないですからね。

クレッシェンドラブは中段やや前、前走の凡走を考えれば同じ位置取りをしてくるとは思いませんでした。この辺り内田騎手が何をしたかったのか、よく分からない位置取りでした。そしてパフォーマプロミス、スタートは五分に出ていますが全くポジションを取りに行かずに、外からクレッシェンドラブに行かれて中段の後ろから、岩田望騎手も何がしたかったのか分からないポジションでした。

4コーナーです、トーラスジェミニが馬場の中目を通して、その内からグローリーヴェイズ、アーモンドアイが抜けてきます。カレンブーケドールはクレッシェンドラブの外、中目に出してしまい距離ロスがありましたね。ここでアーモンドアイの後ろに居れば、3着は確保できたのではないでしょうか。ワールドプレミアは最内、その外に中目からデアリングタクト、更のに外からコントレイルがスムースに直線に入ってきます。

後方からはマカヒキが内から、ミッキースワローも内目でした。下がっていくヨシオを外から交わしたのがパフォーマプロミス、その外にユーキャンスマイルでした。ウェイトゥパリスは内目を狙ってきました。

直線L2標識付近です、グローリーヴェイズとアーモンドアイはスムース。問題はデアリングタクトですね、ここで松山君の不安が出てしまいました。松山騎手は逃げ・先行では非常に良いレースをしますが、差・追込に回ると不安が出てくる。コントレイルに外から来られてしまいコースが無くなりました。まず前に居た馬がトーラスジェミニとクレッシェンドラブで信用できないんですよね、こういう信用できない馬が前に居る時は、早目に進路を確保しないと詰まる、まさに今回これが命取りになりました。デアリングタクトはメイン集団が5F戦になったことで、自慢の瞬発力を発揮できませんでした。オークスの展開ならばコントレイルに来られる前に、カレンブーケドールの外に進路を確保できたはずです。ここがデアリングタクトの弱点ですね、3F戦ならここで瞬時に動けたはずが、L5から11秒台に入ったことで瞬発力が削がれたはず。

直線L1標識付近です、キセキがまだ先頭で頑張っていますが、L2ですでに13.2迄落ちてしまいここから一気に減速。替わってグローリーヴェイズとアーモンドアイが先頭に立ちます。アーモンドアイは5Fのロンスパを、心肺機能の高さで押し切った感じ、AT値(無酸素性作業閾値)が高いんですよね。だからL2から11.6を連発できるんだと思います。デアリングタクトはコントレイルにコースを塞がれ、カレンブーケドールの内へ行きました。大きく進路変更しているので、かなりロスがありましたね。それでも有酸素運動の持続力が高いことは見せたので、スムースだったらコントレイルとの着順は替わっていたかも。お父さんエピファネイアが勝ったジャパンCは後半ロンスパ、これを先行して押し切っているので、この馬もロンスパに対応できる心肺機能と持続力は持っていますね。

カレンブーケドールはロンスパになったことで好走できました、今まで再三津村騎手が追い出しが遅くて取りこぼしていましたから、やっとこの馬の得意パターンに持ち込めました。4コーナー出口でロスがありましたから、その分デアリングタクトに交わされましたが、これで正解だと思います。

では1頭づつ見て行きます。

1着はアーモンドアイ、心肺機能と持続力を存分に発揮して押し切り、この能力では結構高いものを見せていたグローリーヴェイズをあっさり交わしていますし、能力の高さを見せつけましたね。これが最終レースです、無事に引退できて本当に良かったです。それも最強のまま引退という最高の引き際ですね。

2着はコントレイル、体調万全でアーモンドアイをベタマークしていたら、そう思わずにはいられない展開でしたね。この馬は周りが苦しくなった時に台頭するタイプですね、低レベルなトライアルでもトップスピードの質で圧倒してしまいますが、本質的にはAT値の高さを生かしたいタイプですね。今回は大事に行き過ぎた感じでした。

3着はデアリングタクト、L2手前でコースが無くなってしまったのが痛恨でした、今回は懸念していた持続力勝負になってしまい、自慢の瞬発力を生かせない展開。それでも有酸素運動内での持続力の高さを見せたので、今後の脚質転換もスムースに行きそうですね。

4着はカレンブーケドール、アーモンドアイの後ろという位置取りは想定外だと思いますが、仕掛け所に不安のある津村騎手を考えると、ルメール騎手にタイミングをゆだねることが出来る最高の位置取りでした。惜しむべくは4コーナーで外からトーラスジェミニを交わしに行ってしまったことです、この事は勝ちに行ったと考えれば悪くはないのですが、アーモンドアイの後ろをトレースしていれば、最短距離で直線に入れたはずで3着は確保できたかも。この辺りの勝負勘の悪さも津村騎手らしさですね。

5着はグローリーヴェイズ、トップスピードを持続する部分で若干見劣り僅差の5着でした、馬場がもう少し重ければ1着の可能性もあったはず。トップスピードの質は良馬場の府中では足りませんね、その上で持続力は持っていますが、スピード負けしたというのが今回。この感じだと有馬記念は面白そうですが。

6着のワールドプレミアは屈腱炎明けを感じさせない走りでした、馬場の悪い内を通しましたし、今回は豊騎手もおっかなびっくりという感じだったはずで、次走に期待が持てる内容でした。9着のマカヒキも内を通した割に頑張ったなという印象で、トップスピードの質が問われない展開ならまだまだやれそう。

馬券の方は馬連だけで当然トリガミ、最近は堅い決着が多く、そろそろ荒れて欲しいのですが・・・。