2019年秋華賞 回顧。道悪適性を見せたクロノジェネシス。


走破時計 1:59.9  前半1000m 58.3  上り3F 36.3

まず馬場状態ですが稍重まで回復していました、前日に100㎜以上降ったのに稍重まで回復するとはすごいですね、京都競馬場は暗渠管が全周に入っているのでその影響かもしれません。10R三年坂特別がマイルの2勝クラスで1:33.7、勝ったヴァンドギャルドの上がり3Fが34.3なのでかなり回復していました、良馬場に入るくらいと思いましたが直線だけはそうでもないんですよね。この辺りの感触がダノンファンタジーに合わなかったのかもしれません、レース後のコメントで川田騎手も馬場について言及していましたからね。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青が今回のレースラップです。

ビーチサンバがコントラチェック相手に突っ張ったので、前半はかなり速くなりましたね。これではコントラチェックが大敗するのも無理はありません。L4,L5と12秒台後半のラップを踏んで中緩みを作り、そこから再度12秒台前半に入れる3F戦に持ち込みました。こうなると心肺機能が低い馬はお手上げでしょうね。上位に入った馬の内後方に居たシゲルピンクダイヤを除くクロノジェネシス、カレンブーケドール、シャドウディーヴァ、ビーチサンバは高い心肺機能を持っていると思います。

このラップで好走したダイワメジャー産駒のシゲルピンクダイヤ、クロフネ産駒のビーチサンバ、母父クロフネのクロノジェネシスはちょっと意外な好走だったので、後半で詳しく。

逃げたのはビーチサンバでした、コントラチェックも譲らず馬体を並べて2番手、3番手にやや離れてダノンファンタジー、パッシングスルー、ブランノワール。中段からクロノジェネシス、レッドアネモス、カレンブーケドール、フェアリーポルカ、やや間が空いてシャドウディーヴァが中段の後ろから。後方からローズテソーロ、エスポワール、サトノダムゼル、シゲルピンクダイヤは最内。シングフォーユー、トゥーフラッシー、シェーングランツという並びででした。

まず抜群のスタートだったのがダノンファンタジーでそこから控えて3番手に。スタート五分だったビーチサンバがやや押しながらハナを主張しました、福永騎手の手の動きからはスタート前から決めていたような先手の取り方でしたね。前走も中盤から先頭に立って2着に好走していたので、何か掴んだのかもしれません。これで主導権を取れなかったのがコントラチェックで、馬体を並べて2番手からになりました。

カレンブーケドールは福永騎手の勢いを見て控えましたね、良い判断だったと思いますが、1コーナーの内外の関係でクロノジェネシスに前に行かれてしまいました、結果的にこのポジション争いが勝敗を決したので、大きな意味のある1コーナーだったことになります。シェーングランツは豊騎手が出して行かなかったので後方から、考えが有ってのことでしょうが結果的には凡走していますから、もう少し工夫して中段辺りを取って欲しかったですね。

4コーナーから直線入り口です、ここでダノンファンタジーが勝ちに行きましたね、コントラチェックの外に出してスパートしますが思うように伸びない。この動きがクロノジェネシスへの最高のアシストになり、クロノジェネシスはダノンファンタジーが作ってくれた道を上がって、外のパッシングスルーをどけながら直線に入りました。カレンブーケドールはここでコントラチェックを交わすのに待たされましたね、同じくシャドウディーヴァもここで待たされていました。

3着に入ったシゲルピンクダイヤが3コーナーまで最内を進めながら、4コーナーで外に進路を取ります、ここでサトノダムゼルに一発かまして進路を空けると前はクリアーでした。フェアリーポルカ、パッシングスルーはこの辺りで一杯になっていました、ハイペースバランスで心肺機能が足りなくなったように後退していきます。

直線L1標識付近です、ダノンファンタジーの伸びが鈍いこともあり、カレンブーケドールとクロノジェネシスの間が非常にタイトになりました。双方の騎手が体をぶつけあいながら進路を確保していたのは、外国人騎手が大挙して訪れる危機感でしょうかね~。クロノジェネシスがやや内に切れ込んだことでダノンファンタジーはブレーキ、もちろんダノンファンタジーの脚色が鈍っていたので、何も悪くないのですがまっすぐ走らせて欲しいですね。

ここでシゲルピンクダイヤが外から追い込んできます、上がり3F1番時計で35.6ですから、トップスピードの質は全く問われていませんね。このトップスピードの質が問われないということが、ダイワメジャー産駒やクロフネの血を持つ馬の好走に繋がったのかなと思います。

では1頭ずつ見て行きます。

1着はクロノジェネシスでした、世代トップクラスのポテンシャルを持っていると評していた馬で、やっとGⅠを取れましたね。バゴの産駒なので道悪は苦にしないと思っていましたが、ここまで突き抜けるとは・・・。1コーナーですんなり中段のやや前を取れましたし、4コーナーでダノンファンタジーに任せる余裕を持てたことが勝因でしょうね。良馬場でとなると2000mは長いという評価は変わりませんので、エリザベス女王杯は買いにくいかな~。

2着はカレンブーケドール、初輸送を克服しての2着は立派でしたね。もちろんL3からペースが上がったこと、前半がハイペースだったことで瞬発力を問われなかったことが大きいですね。トップスピードの質を武器にしている馬ですが、持続力も高いので今回は持続力で2着をもぎ取りましたね。心肺機能の高さも見せたので、今後のレース選択にも幅が出たと思います。

3着はシゲルピンクダイヤ、距離を考えて後方からになるだろうという予想は当たったんですが、まさか3着まで持ってくるとは思いませんでした。終始後方で足を溜められたこともありますが、それでもこの馬自身平均バランスからややハイペースバランスくらいでは入っているので、まぁまぁの心肺機能を見せていますね。ただ良馬場ではこの距離は難しいと思います。

4着はシャドウディーヴァ、4コーナーで待たされてしまいましたね、あの一瞬の躊躇というか追い出しの遅れが3,4着の差かな~。もう少しスムースに直線に入っていればね。栗東滞在でしっかり好走してきたので、能力の高さは見せましたね。距離不安はありませんがこの後は休み明け3走目になるので、疲労の不安が出てきます。

5着がビーチサンバ、意表を突かれた逃げでしたが、どうも福永騎手は最初から決めていたような感じでしたね。前走の感じからもトップスピードの質では勝負にならないと考えたのだとしたら、今後の福永騎手は評価を上げるべきです。クロフネ産駒なので持続力は非常に高いので、そこで勝負するというのはとてもいいアイデアですね。こういうレースをしておくことが今後の布石になるので、5着とはいえとてもいいレースだったと思います。

なぜ距離不安のダイワメジャー産駒シゲルピンクダイヤが3着に来たのか。

まずダイワメジャー産駒の適性距離は1600mまで、この考えは変えるつもりはありません。これに追加して稍重以上に馬場が悪化した今回のようなケースを考えて行きたいと思います。これはクロフネの血を持つクロノジェネシス、ビーチサンバも共通です。

今回のラップを見て大きな中緩みと、後半は12秒以上のラップを続けていることが大きな特徴だと思います。このラップから考えると心肺機能は高いが筋持久力が低いのではないかという事です。筋持久力とは文字通り筋肉が連続して仕事ができる時間です、当然大きな力を発揮すれば稼働時間は短くなります。1回しか上げられない重量を、半分にしたら上げられる回数は増えますよね、良馬場で11秒台を連発できるのはマイルや1800mまでだが、稍重などの道悪で11秒台を出したくても出せない馬場になってしまえば、2000m以上でも走れてしまうのではないかと思います。

最初に気持ちの悪い馬だな~っと思ったのが、ロードヴァンドールで3000mの阪神大賞典で3着しているんですよね、ダイワメジャー産駒で3000mを3着ってとても気味が悪かったです。でも考えてみればこの時の阪神大賞典は稍重で後半1度も11秒台に入らない流れでした、つまり高出力を長時間求められたわけではなく、心肺機能に依存したレースになっていたんだと思います。

みややの個人的評価として、ダイワメジャー、クロフネの血を持つ馬の評価は、<距離適正マイルまでで1800mはギリギリ。ただし稍重などの道悪になり速いラップを求められないようであれば、距離適正にこだわる必要はない>としておきます。

馬券の方は大外れ、シェーングランツはスタート直後に諦めましたが、ダノンファンタジーは4コーナーから直線入り口では何とかなるかと思いました、しかし川田君の言う通り馬場が合っていなかった感じですね。サンプルが少なく道悪適性を見抜けませんでした。