2020年天皇賞(春) 全頭評価。その1。

<エタリオウ>・心肺機能はやや低く、パワーはある、瞬発力は高くない。

・トップスピードの質はまぁまぁ、持続力は高い。・休み明けでも走る。

”菊花賞”ではスローバランスを出遅れ後方から中緩みで押し上げ、4コーナー外から早目に追い出して抜け出したがフィエールマンに瞬発力で見劣り2着。”神戸新聞杯”ではスローバランスを後方から、エンジンの掛かりが遅く2着まで、トップスピードと持続力は見せる。”2019年日経賞”ではスローバランスを中段から、向正面で押し上げて2番手へ上がり直線はそのまま。スローから勝ちに行く展開で価値のある2着、後半のロンスパには目途を立てた。”2019年天皇賞(春)”ではスローからのL2 最速戦、最後方から上がりの競馬になり出番なし。”2019年宝塚記念”ではスローバランスを後方から、4コーナーで外を回して距離ロスも大きく凡走。”2019年京都大賞典”では平均バランスを後方から、直線外から追い込んだが4着まで。”2019年ジャパンC”ではややハイペースバランスを中段の前から、直線外からスムースだったが伸びずに凡走。 ”2019年有馬記念”では離れた追走集団の中段やや前から、3,4コーナー内目を回して直線では伸びずに凡走。”2020年日経賞”ではスローバランスを中段やや前から、3,4コーナー中目を回して直線スムースだったがL1で失速。

「天皇賞(春)へ向けて」好材料:コース適性。 悪材料:近走の成績の悪さ。

2019年天皇賞(春)はミルコの失策だと思う、失策と言うかミルコの予想が外れたんだと思う。まぁ私もミルコと同じように消耗戦になると予想していたが、ミルコも消耗戦になると考えた節がある。この頃のミルコは何をやっても裏目裏目で本当にリズムが悪かった、だからこそ一か八かの後方待機策だったんだろう、結果的には大外れだった訳だけど。

2019年日経賞が好内容で、豊騎手のペースに嵌りながらも2着まで持ってきたのは、ミルコの判断とこの馬の持続力の高さだと思う。後方で溜めれば高いトップスピードを発揮できるし、持続力はどんなペースでも高い、なので前半のポジションが最大の問題。この時は休み明けで2着に好走したので、休み明けでもいきなり走る、ノーザンF生産馬なのでこの辺は不安なし。2019年京都大賞典では後方からになり直線だけの競馬で5着まで、休み明けでトップスピードの質を引き出せなかった感じで届かなかった。

まぁまぁのトップスピードの質と持続力はダービーや神戸新聞杯で見せていて、後方から溜めに溜めて爆発させてきた、ただこのポジションでは届かなかったので、やはり位置取りがネックになる。エンジンの掛かりが遅い感じも見せていて、いわゆる出し切ってしまいたいタイプなんだけど、仕掛け所がコーナーだと加速が鈍る感じがある。2019年ジャパンCでは先行したが7着凡走、重馬場でややハイペースバランスだったことで心肺機能が限界だった可能性がある。2019年有馬記念では離れた追走集団の中段やや前からで自身ややハイペースバランスくらい、3,4コーナーもロスなく回したが4コーナーからスピード負けした感じなので、12秒台前半のラップを問われてしまうと苦しくなるんだと思う。古馬になってからは高いトップスピードの質を見せられていないので、重馬場での激走に期待したい。2020年日経賞では中段やや前から、かなり厳しい消耗戦になりL1で失速した、すぐ後ろから3着になったのがスティッフェリオなので、このクラスでは苦しいと思う。

好材料はコース適性で昨年のこのレース4着、菊花賞でも2着しているので距離適性も高いはず。ただ昨年の天皇賞(春)では4着とは言え、上位2頭とは1秒の差があったのは印象が悪い。悪材料は近走の成績の悪さで、昨年の宝塚記念以降3着以内が無く、古馬になっての成長に疑問が出てきた。ノーザンFに友道厩舎なので育成に問題はないはずだが、ここまで成績が悪いと早熟の可能性も考えられる。

<オセアグレイト>・心肺機能は低い、パワーは有る、瞬発力はまぁまぁ。

・トップスピードの質はまぁまぁ、持続力は高い。

”2019年稲城特別”では不良馬場でスローバランスを追走集団の中段から、3,4コーナー中目を回して直線スムースに差し切り。”2019年信夫山特別”では平均バランスを離れた追走集団の前から、3,4コナー中目を回して差し切り圧勝。”セントライト記念”では重馬場で平均バランスを中段やや前から、3,4コーナー中目を回して直線入り口で一杯になり凡走。”2020年迎春S”ではスローバランスを中段の前から、3,4コーナー最内を回して直線スムースに抜け出し圧勝。”2020年ダイヤモンドS”では平均バランスを3,4番手先行、終始最内を回して直線スムースに抜け出したが3着。

「天皇賞(春)へ向けて」好材料:距離適性。 悪材料:クラス負けの危険。

野中騎手に替わって好走を続けている、ただセントライト記念でボロが出た。まず稲城特別では不良馬場で超スローバランスを先行して押し切り、信夫山特別では良馬場で平均バランスを先行して押し切った。この2レースは不良馬場と良馬場、スローバランスと平均バランスと違う展開になっているが、どちらも前半は遅い部分が共通点、信夫山特別では平均バランスだが前半1000m61.0とかなり遅い。

そして問題のセントライト記念、重馬場と言っても前年のセントライト記念(良馬場)よりも走破時計が速かったので、そこまで重くなかったはず。これで前半1000m59.8を先行してしまい、直線入り口で一杯になってしまった。前半ユッタリ入った方が良いはずだが、結局騎手がこの特性を理解していないことを露呈したんだと思う、もしくはペース認識が悪過ぎるのか?

意外な良さを見せたのが2020年迎春Sで、この時は前半1000m63.4と理想的な入り、これでL4から11秒台に入れて、驚いたのがL2で更に0.2の加速をして11.4に入れてきた。これにしっかりと対応してきたので、瞬発力とトップスピードの質はまぁまぁという評価をしないといけないし、L4から11秒台に入れてL1も11.8で纏めているので持続力の高さも見せた。

2020年ダイヤモンドSでは平均バランスで、最初の1000mが62.6、次の1000mが61.4、400m挟んで最後の1000mが62.8と速いラップが全くないレース。これで2着から5馬身差とは言え3着に粘ったことから分かるのは、いわゆるAT値(無酸素性作業閾値)があまり高くなく、一度この値を超えてしまうと一気に疲弊してしまうのだろう。この感じはセントライト記念で見せていて、前半が速過ぎて無酸素運動領域に入って、直線入り口で一杯になった。ダイヤモンドSでは速いラップを踏まなかったことで、ず~っと有酸素運動の領域だったのだと思う。ただやっぱり距離は長くて最後に足が上がってしまった、ステイゴールド産駒らしく苦しくなってから踏ん張れたが、最後にもう一足使えるギヤは持っていない感じ。

好材料はダイヤモンドSで3着している距離適性で、変にハイペースの逃げ馬を追いかけない限り、このレースは前半で速いラップを踏むことはないはず。もちろんスタートが良いので出たなりで前を追ってしまう可能性は0ではない、セントライト記念が酷かったので騎手不安はある。迎春SでL4から11秒台を連発する持続力の高さを見せたし、例年の天皇賞(春)の展開なら噛み合う可能性は十分ある。悪材料はクラス負けの危険で、トップスピードの質、瞬発力、持続力ともにトップクラスで闘えるほどの武器は出はない。ダイヤモンドSで5馬身離されたし、キセキが逃げられるようなら後半5F目辺りから11秒台に入る可能性があるし、キセキが出後れれば恐らくL2最速戦になりトップスピードの質と瞬発力で見劣るはず。これを自力で展開を作って克服できるほど騎手に期待が出来ない、”長距離は騎手で買え”という格言もある通り、他力本願では苦しいはず。

<キセキ>・心肺機能とパワーの両立型で瞬発力は低い。

・トップスピードの質はまぁまぁ、持続力は化け物レベル。

・休み明けはやや良くなく、使い減りしない。

”2018年毎日王冠”ではスローバランスを先行、L3最速戦を粘るも3着、この時が休み明け。”2018年天皇賞秋”ではスローバランスを逃げてL3最速戦で3着。”2018年ジャパンC”ではスローバランスを逃げてL3最速戦、中緩みを作らない厳しいペースにして2着、1着はアーモンドアイ、3着以下は圧倒している、この時が休み明け3走目。”2018年有馬記念”では平均バランスを逃げて5着、休み明け4走目になり出脚が悪く逃げ体勢を築くのに手間取っていた。”2019年大阪杯”ではスローバランスを2番手先行、直線で大きく外に寄れた分ロスになり2着まで、この時が休み明け。”2019年宝塚記念”ではスローバランスを逃げて2着、1着のリスグラシューにマークされてL1で明確に垂れてしまった、この時が3カ月の休み明け。”2019年有馬記念”では離れた追走集団の後方から、3,4コーナー外目を回して5着まで、この時は海外帰りで2か月半の間隔空け。”2020年阪神大賞典”では超々ロンスパ戦を大きく出遅れ、直線息切れして凡走。

「天皇賞(春)へ向けて」好材料:距離適性。 悪材料:スタート悪化、蓄積疲労の不安。

2019年宝塚記念が3カ月弱の休み明けで2着、2019年大阪杯も休み明けで2着、2018年毎日王冠も3カ月の休み明けで3着とイマイチピリッとしない。2019年大阪杯で直線で大きく外に寄れたのが休み明けの影響なのか、それ以外の影響なのかははっきりしないが、2018年天皇賞(秋)や2018年ジャパンCでは見られなかったことなので、休み明けの可能性が高いと思う。この馬はノーザンF生産馬ではないので、外厩はどうしても弱い。なので、休み明けは良くないと思う。2019年大阪杯で体調万全なら負けないはずのアルアインに負けてしまったのは休み明けの影響でしょうね、次の2019年宝塚記念ではキセキも休み明けでしたが、アルアインも休み明けで今度はアルアインに先着しています。

この馬のいい面は持続力の異常さでこれはアーモンドアイを凌ぐほど、トップスピードも低くはないので、2018年天皇賞(秋)でアルアインを圧倒したのはこのため。2018年ジャパンCでもアーモンドアイには完敗したが、スワ―ヴリチャード以下はには完勝して持続力の高さを見せつけたし、トップスピードも十分の高さを見せた。高速馬場適正も見せているし、先行してしまえば持続力を発揮して安定した成績を残す。川田君もこの馬の特徴を完全に掴んでいるので、川田騎手で逃げ・先行なら不安はない馬ですね。2019年有馬記念では離れた追走集団の後方からで自身平均バランスくらい、出遅れてしまい中段の後ろまでリカバリーしたのはムーア騎手らしいポジション取り、3コーナーで外目を回して早目に仕掛けた分苦しくなった、この時が海外帰りの2か月半の間隔開けで本調子ではなかった可能性が高い。

2020年阪神大賞典でもスタートで大きく出遅れ、そこから1周目スタンド前で先頭付近まで上がって行き一気にペースアップさせた、これで後半の2000mを自身1:58.9で走っているので、化け物じみた持続力の高さは見せた、問題は出遅れ癖がどんどん悪化していることで今後に向けて大きな不安を残した。

好材料は菊花賞を勝っている距離適性で、お兄ちゃんのファントムグレイも条件戦だが2600mを勝っているので、血統的にも長距離に不安はない。今回は豊騎手へ乗り替わり、もちろん悪材料ではなく長距離戦を考えれば心強い騎手だと思う。悪材料は前走でも見せたスタートの悪さで、昨年の有馬記念も出遅れている。その前も宝塚記念でも良くなかったし徐々に悪化している印象。前走の出遅れから調教再審査を受け、上手くクリアできたらしいので改善に期待したい。この馬はルーラーシップの産駒で蓄積疲労の懸念は消えていない、前走の出遅れも蓄積疲労の可能性もあるが、道中のラップを見ると1頭だけ別次元のレースをしていて、着順は悪かったが力落ちの印象はなかった。ルーラーもロードカナロアの産駒も、未だ産駒が6歳までしかいないので、蓄積疲労に関してははっきりした結論は出せない。