2019年阪神JF 回顧。


走破時計 1:32.7  前半800m 45.5  上がり3F 35.2

まずは馬場状態ですが8R2勝クラスがマイル戦で1:34.7とかなりかかっていました、想定したよりも遅い馬場だったようで標準的な良馬場といった印象です。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回のレースラップ、赤は2019年NHKマイルCのレースラップです。

前半800mが45.5という非常に早いペースで逃げたレシステンシアがそのまま押し切ってしまいました。今年のNHKマイルCの前半800mが45.8、イベリス、クリノガウディー、ワイドファラオが逃げましたが3頭とも下位に沈んでいます。同じようなラップで進めて押し切ってしまったレシステンシア、来年が楽しみですね。今回は中緩みを作った上でL3最速11.2を踏んでいますが、この地点は下り坂なので瞬発力が高いかどうかはまだ分かりません。前半から非常に速いラップを踏み中緩みを作ったとはいえ、後半もしっかりと粘り込んだ心肺機能と持続力の高さは驚くべきものです。 

今日の馬場は決して高速馬場ではありません、今年のNHKマイルCは超高速馬場で当日は500万条件の1400m戦で1:20.5が出るほど馬場が軽い状態でした。それに比べて今日の馬場は8レースのマイル戦で1:34.7と標準的な良馬場なので、レコードタイムも含めレースの中身も非常に優秀です。安田記念になると中緩みを作らない超消耗戦になるので、そこまでの心肺機能と持続力があるかどうかは未知数ですが、現時点ではこの世代ナンバーワンの心肺機能と持続力を持っていることは間違いないでしょう。

逃げたのはレシステンシア、ロータスランドが外から二番手、3番手の内にウーマンズハート、マルターズディオサがその外にいて先行しました。中段の前からボンボヤージ、クリスティ、エレナアヴァンティ、ヤマカツマーメイドが中段まで下がりその後ろにカワキタアジン、オータムレッド、クラヴァシュドール、ジュラペッシュ、ルーチェデラヴィタが中段の後ろから。後方からリアアメリア、スイートメリナと言う隊列でした。

レシステンシアは2、3番手からではなくスタートが良かったことで迷いなく逃げの手に出ました、 それほど押している様にも見えず馬なりで非常に速いスピードの乗りを見せました。ウーマンズハートが内で包まれるのを嫌いビュイック騎手が出して行って3番手を確保しました、ビュイック騎手は2018年マイルCSでもステルヴィオを先行させ勝利に導いているので、ポジション取りについては非常によく考えて乗る騎手だと改めて思いました。 近2走スタートが良くなかったマルターズディオサが今回は五分に出て4番手で先行、 ヤマカツマーメイドはスタート直後のスピードに豊騎手が速いと判断して中段まで下げて行きました。

クリスティは中段の前からで予想通りの位置、エレナヴァンティは逃げを嫌がったようで中段のやや前外からになりました、クラヴァシュドールは予想通り中段から進めて折り合い重視、リアアメリアはスタート5分に出ましたが意識的に下げ馬群の後ろから、折り合いに不安がある馬なので前に馬を置いて落ち着かせる作戦だったのだと思います。

4コーナーから直線入り口です、レシステンシアが L 2標識付近で出し抜いているように見えますが、ラップタイムを見ると出し抜いているというよりはウーマンズハート以下が先に垂れてしまっています。レシステンシアが加速しているわけではなくウーマンズハートやロータスランドがスピードを維持できなくなっているというのが実際のところです。ここからは消耗戦になり外からマルターズディオサ、クリスティ、クラヴァシュドールが持続力を発揮して粘り込みます 。

後方にいたリアアメリアは4コーナーで大外を回して追い込み体勢に入ります、コース取りは非常にスムースで特に進路変更することもなく加速体勢に入りましたが、このあたりで既に手応えが怪しくなり伸びませんでした。 

直線 L1標識付近で、すでにレシステンシアが後続に5馬身ほどの差をつけこのまま粘って1着でゴール板を駆け抜けます 。最後は12.5までラップを落としていますが、阪神コースは L1が上り坂なのでそれを考慮すれば悪くない粘りだったと思います。 ウーマンズハートの外からヤマカツマーメイドが並びかけますが、捉えるまでには至らず。 さらに外からマルターズディオサとクラヴァシュドールが併せ馬のように上がってきます、最終的に首の上げ下げでマルターズディオサが2着に貼り込みました。

今回のレースはラップのグラフを見てもらえばわかるように、後ろから伸びるとか差すとかという競馬ではなく前に行った馬がどこまで粘り切れるかと言う、心肺機能と持続力の試されるレースになりました。ウーマンズハートはスローペースからの非常に速い上がりを使って勝ち上がってきた馬で、休み明けでもありこのハイペースを克服したことは今後に繋がると思います。

では1頭ずつ見て行きます。

1着はレシステンシア、スタートが非常に良く躊躇なく逃げに持ち込み、ハイペースバランスを圧勝してしまいました、心肺機能の高さと持続力の高さこの両方を存分に見せたレースで、前走のファンタジーステークスでも心肺機能の高さと持続力の高さは見せていました。この馬の良いところは自分でレースを作れるところで、心肺機能と持続力の高さを生かすために逃げてハイペースに持ち込んでしまう、自分の得意なレースを作ってしまうというところが最大の長所でしょう。北村友騎手がこのペースでレースを作ったことを非常に驚いていますが、 前走のファンタジーステークスの勝ち方が非常に強かったので相当自信を持って乗ったのだと思います。ダイワメジャーの産駒なのでマイルまでは守備範囲ですが、 オークスを目指すようであればやや不安が増します、NHKマイルCであれば圧勝までありそうです。

2着はマルターズディオサ、今回はスタートがよく4番手と先行できました 、デビュー戦では逃げてウーマンズハートに完敗していますが2着には粘っていたので、前で競馬をすることもできる自在性を持っている馬ですね。この馬の位置でもハイペースバランスになっているはずなので心肺機能と持続力の高さは持ち合わせていますし、 この馬の場合は後方で脚を溜めれば溜めるだけ爆発的な末脚を使えるので、レシステンシアよりも展開の幅を持っている馬だと言えるでしょう。今回はレシステンシアにレースを完全に支配されてしまったので2着もやむなしと言えますが、トップスピードの質を問われる展開になれば逆転は十分に可能だと思います。

3着はクラヴァシュドール、 この馬の位置でおそらく平均バランスぐらいで入っているはずなので、この馬も心肺機能と持続力の高さは持っています。もちろんレシステンシアには大きく見劣りますが、このペースで3着を確保できたことは今後を考えれば非常に大きな収穫です。マルターズディオサ同様能力の幅が広い馬と言えるでしょう。

4着がウーマンズハート、今回は休み明けでプラス14kgとやや太め感がありました、それでもビュイック騎手の好判断で先行させて4着を確保できたことは大きな収穫でしょう。この馬はダーレ―の生産なので外厩はノーザンFに比べて見劣ってしまうので今回の4着は高評価です。新潟での2戦はともにスローバランスからのトップスピード戦になっていたので、流れた時にトップスピードの質と持続力の高さを見せられるのかどうかが不安材料でしたが、4着に粘ったことである程度の心肺機能と持続力の高さを持っていることが証明されました。ビュイック騎手がスタートから出して言って3番手を確保したことが非常に大きな要因で、昨年のマイルCSでもステルヴィオを先行させ勝利に導いているように、積極的なポジショニングができる騎手だと改めて見せ付けられました。

5着がヤマカツマーメイド、スタートで速いと判断したようで中段まで下げましたが、そこから直線では持続力を発揮して5着まで粘りました。トップスピードの質では見劣る馬ですが改めて持続力の高さを見せてきたので、 今後さらに成長すれば重賞でも通用する能力の片鱗を見せました。

6着がリアアメリア、新馬戦、アルテミスSと掛かりっぱなしで自分の好きなように走れなかったことが、ここに来て馬のリズムを崩しているように感じました。アルテミスSの内容を考えればこの程度の馬ではないはずで、精神的に嫌がって全力を出さなかったと考えたくなるレースでした。無理に押さえ込んで差しに回るよりも行く気に任せて逃げや先行をさせてもいいと思うのですが・・・。

馬券の方は3連複だけ的中でした。