2020年エリザベス女王杯 回顧。いつものエリザベス女王杯でした。

走破時計2:10.3    上り1000m59.3  59.3-59.0平均バランス

良馬場  含水率 ゴール前 8.6%  4コーナー 8.9%(5:00)

クッション値 9.8 標準(7:30)

まずは馬場状態ですが良馬場でした。6Rの1勝クラス2000mで2:00.7、上がり最速はディアセオリ―が33.6。エリザベス女王杯も2分10秒台で、サラキアが上がり最速33.7なので高速馬場でしたね。馬場は内外フラットに変化していましたね、6Rのディアセオリーが中目から差し込んで2着、8Rのピッツィカートも中目から差し切りでした。一晩で自然にこうも変わりますかね~・・・。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。青は今回、赤は2019年エリザベス女王杯のグラフです。

昨年のグラフは4F戦ですが、これは逃げたクロコスミアのラップで、勝ったラッキーライラックは終始最内を回して2Fくらいを爆発的なスピードで勝ち切りました。今年もL2最速戦になっていて、このL2のラップはほぼラッキーライラックのものです。ラッキーライラックは昨年と同じレースをしているんですね。後で4コーナー手前の部分を図解しますが、このL2最速戦にしてしまったのは逃げたノームコアではなく、2番手からノームコアを追いかけたリアアメリア、と言うか川田騎手ですね。昨年も川田騎手はチグハグなレースをしていますし、リーディング2位なんですがGⅠになると上手く行きませんね。

どこかで動くかと思われたウラヌスチャームは、一番動いてはいけないところで動いてしまいましたね。斉藤騎手なので”動くべきところで動かず、動いてはいけないところで動く”これは十分に考えられました。3コーナーから上がって行けば当然距離ロスがあるので、レースラップよりもかなり速いラップを踏んでいるはずです、L4辺りで11秒台の半ばくらいではないでしょうか。ルメール騎手も全く併せることなく行かせているので、最悪のタイミングだったはずです。

逃げたのはノームコアで後続に0.7秒程の差を付けていたので、リアアメリアの位置でもスローバランスでした。ラッキーライラックの位置で1000m通過60.9くらいなので、ラッキーライラックはスローからのL2最速戦という得意パターンでしたね。

逃げたのはノームコア、離れた追走集団の前からリアアメリア、2番手にウインマリリン、3番手の内にサムシングジャスト。中段のやや前からエスポワール、ソフトフルート。中段からシャドウディーヴァ、ウインマイティ―、やや離れてリュヌルージュ。中段のやや後ろからミスニューヨーク、ラヴズオンリーユー、ロサグラウカ、ラッキーライラック。中段の後ろからサラキア、ウラヌスチャーム、センテリュオ。後方からサトノガーネット、カーロバンビーナという並びでした。

逃げたのはノームコアでした、2番人気でこのレースが出来るのは世界広しと言えども横山典騎手だけでしょうね。空気を読むとかそういうレベルではなく、この人には空気そのものが必要ないのでしょう。空気を必要としない、人間とは違う生き物のような感じがします、これは真面目な誉め言葉ですよ。外連味ない騎乗で詰まって凡走よりも、余程良い騎乗だと思います。実際シャドウディーヴァは4コーナーで詰まっていますからね。そのノームコアが刻んだラップは平均バランス、隊列が決まってからは12秒台の前半を淡々と刻みました、これでL1垂れてしまったので距離が1F長かった感じです。

離れた追走集団の先頭がリアアメリアで折り合いはついていました、この位置でもギリギリスローバランスなので、リアアメリアは心肺機能を問われていません。折り合いに苦労していたのがサムシングジャストで、この位置でもスローバランスですから、位置取りは悪くなかったと思います。前に馬を置けなかったのは痛恨でしたね。ソフトフルートは福永騎手らしく中段のやや前、その外にエスポワールでした。

中段やや後ろからラヴズオンリーユーで、これをマークする形だったのがラッキーライラックでした。ルメール騎手は慌てず騒がず自信満々、大外枠でも全く動じず不利にもなりませんでしたね。2200mのレースなので「どこかでチャンスが来る」という予感めいた物があったんでしょうね、その「どこか」を逃さず見つけて動く自信があるからこその騎乗に見えました。

サラキアとセンテリュオが中段の後ろからで予想通り、出遅れたウラヌスチャームも初手はこの位置で仕方ないでしょうね。誤算だったのはノームコアの横山典騎手がペースを落とし過ぎなかったこと、これでは向正面でも上がって行けませんね。結果的に3コーナーから無理やり上がって行きましたが、これは悪手でした。

4コーナーL3過ぎ近辺です、ノームコアが逃げていますが後続が接近します。ノームコア自身はスピードを落としていませんが、後続の方が追いかけているだけにスピードが上です。追いついた地点で”待って”しまったのが、リアアメリアの川田騎手でした。JRAのパトロールビデオが分かりやすいと思いますが、パトロールビデオの1:50の部分、サムシングジャストがブレーキしています、後ろのシャドウディーヴァも顔を外に振っているので、こちらも減速したはずです。ソフトフルートとセンテリュオも多少影響があったはずです。

逆にこの地点でラッキーライラックは外からスムースに2列目に並びかけてきます。先に行かせたウラヌスチャームに外から持ったまま並びかけています、この地点は下り坂なので促さずに惰性のまま走らせています。ルメール騎手の下り坂の使い方は本当に上手ですね。動き出しが遅れたのがラヴズオンリーユーですね、向正面ではラッキーライラックの前に居ましたが、3コーナーでラッキーライラックに先に行かれてしまいました。持続力で勝負したいラヴズオンリーユーにとっては、ここで仕掛けが遅れたのは致命的でしたね。ラヴズオンリユーとサラキアは前後で同じ位置、これでクビ差サラキアが差しているので、トップスピードの質ではサラキアに軍配が上がりましたね。

L2標識を過ぎて直線入り口です、この地点でもリアアメリアはノームコアを交わしていません、ローズSで見せた瞬発力を見せられなかったのは、右回りの弊害でしょうか?ここでリアアメリアにコースを塞がれていたのがウインマリリンですね、まぁまぁの瞬発力は持っていますが、さすがに直線入り口まで待たされてしまうと分が悪い。この地点ですでにラッキーライラックはほぼ先頭に並んでいます、当然ここからは瞬発力全開で出し抜きます。サラキアとラヴズオンリーユーは外からスムース。

直線L1標識付近です、ノームコアの内からウインマリリンが抜け出しますが、トップスピードの質で見劣りましたね。直線入り口で2,3馬身はリードが欲しかった。リアアメリアはジリジリまででノームコアを交わすのがやっとという感じで、垂れはしませんが外から一気に来られて7着でした。サムシングジャストは前半掛かったことが災いして伸びがイマイチ、シャドウディーヴァも4コーナーで詰まった挙句に、直線でも進路変更しているので伸びがイマイチでしたね。

ラッキーライラックはL2で勝負を決めています、L2は10.5くらいは出ているはずで、下り坂を利用したとはいえ瞬発力の高さを見せましたね。L1で差を詰めてきたのがラヴズオンリユーとサラキアで、この2頭は持続力の高さを見せました。最後にサラキアが差し切ったのはトップスピードの差で、ラヴズオンリユーの初手の位置取りが仇となりました。ソフトフルートがL1標識手前で外に出しましたが、伸びがイマイチで瞬発力の低さを見せました。センテリュオは良く伸びましたが、時すでに遅しという感じでした。

では1頭づつ見て行きます。

1着はラッキーライラック、まず展開ですが外から中段の後ろからでも動かず、自信満々の騎乗でしたね。結果的にL2最速戦ですが、3コーナーで下り坂を利用してポジションを上げています、ここでは全く足を使っていません。そしてL2で勝負を決める瞬発力を繰り出して押し切り、ゴール前詰め寄られましたが勝負は決まっていましたね。休み明けを不安視しましたが、結局ルメール騎手が乗る以上は万全に仕上げてくる、そういう事なんでしょうね。阪神は抜群の相性なのは、L4から下り坂で惰性を使えるので、足を使わず加速に追走できた上でL2で瞬発力を繰り出すからでしょうね。

2着はサラキア、前半は中段の後ろで脚を溜めて、L4から外をスムースに回して追い込んできました。これは前走の府中牝馬Sや小倉日経OPと一緒でしたね、北村友騎手はこの馬にベストの騎乗をしているので、これ以上は望めないでしょう。ラッキーライラックに展開が合いましたし、ルメール騎手に完璧に乗られたので、力負けですね。どうしても前半は足を溜めたいので、届かないリスクは付き纏うと思います。

3着はラヴズオンリーユー、トップスピードの質でサラキアに見劣ってしまったのは印象が悪いですね。持続力を生かせる展開でなかったので、ミルコのレース勘の悪さが敗因でしょう。もう少し前でレースをしていればサラキアに交わされることはなかったはず、この辺りを今後に生かして欲しいですね。

4着はウインマリリン、4コーナーで待たされてしまったことが痛かったですね。トップスピードの質で勝負する馬ではないですから、直線入り口では3,4馬身リードが欲しかった。こればかりはリアアメリアの後ろに入った時点で、川田君任せになってしまったので、仕方ないと思います。ただ体調万全ならこのクラスで通用することは見せたので、今後は期待できますね。

5着がセンテリュオ、勝負が決まってから伸びてきたので、トップスピードの質が高くないこの馬には展開合わず、前に行っても苦しかったと思うので、前走みたいにバテ差しの展開待ちでしょうね。

6着のソフトフルートは瞬発力の低さを見せてしまいました、スムースならもう少しやれそうなので、外回りの方が良さそうですね。7着はリアアメリア、4コーナーで”待って”しまった、川田君にしてみればローズSで鮮やかに抜け出したことを考慮してのことでしょうね、あまりにも鮮やかだった為に、固執してしまったのかも。右回りで手前を替えていなかったとのことですし、L1でも垂れているわけではないので、チグハグな競馬になってしまいましたね。右回り左回りについては仕方ないと思いますが、4コーナーで”待って”しまったことは、今の川田騎手がGⅠで苦戦している理由ではないでしょうか。大事に行き過ぎている感じがしますね。

馬券の方は軸馬が3,4着で外れでした。