2019年ジャパンC 回顧。消耗戦で底力を見せたスワ―ヴリチャード。


走破時計 2:25.9  1000m通過 60.3  上がり3F 37.2

馬場状態は8Rのオリエンタル賞までは不良馬場でしたが、10RのウェルカムSまでには重馬場まで回復しました。そのウェルカムSが1:48.3、勝ち馬の上り3F35.7でやや外目から、2着のプレミオテーラーは最内から伸びていました。ジャパンCも内の2頭がスルスル伸びていたので、やはり内から乾く傾向は変わっていないようですね。

上のグラフはラップタイムをグラフにしたものです、レース映像と見比べると面白いと思います。ラップタイムがマイナスになっているのはグラフ製作上の都合ですのでお気になさらずに。クリックで大きくなります。

石橋騎手が絶妙なペースで逃げていますね、1000m付近で11.7に上げていますが、この地点は下り坂から上り坂に入る部分なので、勢いを付けたのかもしれません。見事な消耗戦のラップになている割に、中段からの差しが不発だった馬が多かった感じを受けました。馬場の影響もあったと思うので、道悪適性がモロに出た感じですね。マカヒキが最後に大外から伸びてきましたが、不良馬場だった2017年天皇賞(秋)でも5着に伸びていたので、道悪適性が高いのでしょう。

このラップを見ていて思うのは、勝ったスワ―ヴリチャードとカレンブーケドールの持続力の高さですね、直線でもあまり落としていませんから心肺機能の高さを見せていますね。特にカレンブーケドールは先行しているので、この粘りは驚異的ですしパワーにやや不安があったのですが、この感じならパワー不足も解消していますね。

ダイワキャグニーが0.7差6着だったのには驚きました、淡々としたペースを刻んでいますがややハイペースバランスなので、これで6着に粘ったのは重馬場適性なのでしょうか。キングカメハメハ産駒なので重馬場でも走る馬が多いし、2018年のメイSが平均バランスで勝ち切っているので、案外距離やペースの融通は利くのかもしれませんね。

逃げたのはダイワキャグニー、2番手にダンビュライト、ウィンテンダネスを挟んで最内にカレンブーケドール。外からエタリオウが上がりワグネリアン、最内でカレンブーケドールを見る位置に居たのがスワ―ヴリチャードでした。シュヴァルグラン、ムイトオブリガード、ジナンボー、レイデオロまでが中段。離れてユーキャンスマイルとルックトゥワイス、さらに離れてタイセイトレイルとマカヒキが最後方からという展開でした。

ダイワキャグニーは逃げ宣言をしていたんですね、他に逃げたい馬も居なかったのであっさり逃げ体勢を築きました、ダンビュライトも石橋騎手が変にスローペースに落とさなかった為か2番手で折り合いましたね。ウィンテンダネスがかなり押して前行きました、ここでワグネリアンは引いてしまいましたね、今週も川田騎手はリズムが悪いですね。エタリオウが押して出て行ったためにジナンボーが先行出来ずに中段の後ろからになってしまいました、この馬は外枠が祟りましたね。

スタート後にエタリオウに挟まれる形で下がってしまったタイセイトレイル、スタート自体が良くなかったマカヒキが大きく離れた後方から、その前にスタートが良かったにもかかわらず下げてしまったユーキャンスマイルとスタートイマイチののルックトゥワイスが居ました。ユーキャンスマイルのスタートは五分に出ていたので、あそこまで下げる必要があったのか疑問に思います。

カレンブーケドールはいつも通りのスタートで最内を生かしてすんなり2列目で先行、スワ―ヴリチャードはスタート五分でしたが二の足が遅く、ユーキャンスマイルよりも後ろになってしまいましたが、内が空いているのを見てすかさず最内に入れてカレンブーケドールの直後を取ってしまいました。このマーフィー騎手の好判断が最大の勝因でしょうね。

4コーナーから直線入り口です、ウィンテンダネスが苦しくなって下がってしまうところで、ワグネリアンが一緒に下げてしまいました。ブレーキしながら1列下がったことで、進路も外に取らないといけなくなりました、1コーナーまでにウィンテンダネスを入れてしまったことがここで響きましたね。最近の川田君は前半が特に消極的ですね、こんな弱気な騎乗をする騎手ではないのですが…。

ダンビュライトの手応えが悪くなったことで、カレンブーケドールが内から抜けてきます、これを目標にスワ―ヴリチャードが続きました、この2頭はスムースに直線に入ってきましたね。エタリオウを交わしに行ったシュヴァルグランが外へ、ジナンボーも続こうとしますが脚色が良くなかったですね。

後方勢の4頭が3コーナーで最内を回して馬群に取り付きました、4コーナーでマカヒキは最内、ルックトゥワイス、タイセイトレイル、ユーキャンスマイルと外に進路を取りました。

直線L2標識付近です、ダイワキャグニーがまだ踏ん張っていて、カレンブーケドールがダイワキャグニーの外に出しました、これでマーフィー君はスワ―ヴリチャードを内に入れて追い出します。3列目にレイデオロ、ムイトオブリガード、下がってきたダンビュライト、その外にウィンテンダネスを交わしたワグネリアンが上がり始めます。シュヴァルグランが脚色一杯になっていましたから、内に締められることが無かったのでコースが取れましたが、かなり危ういコース取りでしたね。

ジナンボーの脚色が悪い事で、マカヒキはさらに外に出します、ユーキャンスマイルは外からスムースでした。ルックトゥワイスは中目に進路を取りましたが、4コーナーから手応えが悪かったために、前をマカヒキが通過して行く程でした。

直線L1標識付近です、ここでスワ―ヴリチャードが抜け出しカレンブーケドールが懸命に喰らい付きます。粘るダイワキャグニーをワグネリアンが捉えに行って、外からユーキャンスマイルとマカヒキが追い込んできます。ルックトゥワイスがようやくジワっと伸びますが、時すでに遅しで10着、L1でバテ差すような動きは見せたので、馬場が合わなかったのでしょう。

では1頭ずつ見て行きます。

1着はスワ―ヴリチャード、超高速馬場では前走の天皇賞(秋)でも苦戦しましたが、力の要るトップスピードの質を問われない馬場になったこと、最内の中段で前にカレンブーケドルを置けたこと、直線もコースが空いたことと全てが上手く噛み合いましたね。前走の天皇賞(秋)でもアーモンドアイから0.9秒差なので、これは再三書いた通り昨年のジャパンCと同じタイム差でした。なので力が落ちたわけではないんですよね、超高速馬場の2000mでは真価を発揮できなかっただけで、得意の舞台ではきっちりと結果を出してきました。距離延長のハーツクライ産駒ですし、道悪も苦にしない産駒が多いので勝つべくして勝ったという感じでしょうか。この馬個別の特性としては右回りを苦手としているので、東京コースは最高の舞台でしたね。

2着はカレンブーケドール、非常にそつなく乗って教科書通りにスムースに抜け出しましたが、運がなかったとしか言いようがないですね。津村騎手に運がないのかカレンブーケドールに運がないのか分かりませんが、またしてもGⅠで2着です。雨さえなければ勝っていたのはこの馬だったのではないでしょうか。スタートが良い馬ですしこの馬場、そしてこのペースを先行して差の無い2着ですから、心肺機能と持続力の高さを改めて見せましたね、もちろんトップスピードの質は新馬戦やスイトピーSで見せているので、適性の幅が広い馬です。どこかでGⅠを勝って欲しいですし、チャンスは十分ある馬なんですが今日のように目標にされやすいので、教科書通りの2番手先行ではなく4,5番手からの競馬をして長くいい脚を使って欲しいですね。脚質的にも重馬場を苦にしない部分も含めて安定感抜群なので、今後も軸には最適な馬でしょうね。

3着がワグネリアン、前半ですね~、ウィンテンダネスを前に入れてしまったことが全てだと思います。直線入り口のポジションを考えれば、良く伸びてきたと思うので道悪でも問題はない馬ですし、このペースで中段やや前に居たので、心肺機能や持続力の高さはさすがです。L2標識の手前でシュヴァルグランが外に寄れてくれなければ、追い出しがさらに遅れて3着も危なかったと思います。4コーナーから直線入り口がスムースなら2着争いまであったと思うので、こういう馬場でもワグネリアンは対応できますね。

4着がマカヒキ、スタートがね~、大きく後れて二の足も付かない感じでした。大きく離れた最後方からとなりましたが、3コーナーから最内を回して直線入り口では馬群に取り付いていました。L2で大きくサイドチェンジして外に出して追い込んできましたが4着まで、ユーキャンスマイルとを交わしたのは高評価でしょう。2017年天皇賞(秋)で不良馬場を好走していますから、道悪適性はお墨付きでしたし2017年のジャパンCでも直線詰まりながら4着と距離適正を見せていたので、今回もあと一歩でしたね。この馬はなぜかマイラーだマイラーと言われますが、綺麗で無駄のないフォームなので長距離は合うと思っていました、なので4着は驚く結果ではないです。来年の天皇賞(春)を目指して欲しいのですが。

5着はユーキャンスマイル、スタートが良かっただけに離れた後方集団を形成する位置まで下げてしまったのはなぜなんでしょうか。あのまま中段もしくは馬群の後ろでも良かったと思うのですが。3,4コーナーで馬群に取り付き直線は外からスムースの割には、マカヒキに交わされているので、道悪ではやや割り引いてもいいかもしれませんね。

馬券の方は3連複だけ的中でした、マカヒキが3着なら3連複でも10万超えだったので、残念ではありますがトリガミにならずに済んだので良しとします。